須藤 優
2010.07.01
「面白い人を拡張する」
須藤 優 - Junk Stage / 代表理事
形式は違えど、JunkStageというのは、ET Luv.Lab.の良い見本なのだと思うんです。56名のライターを抱え、コラムサイトを運営しつつ、フリーペーパーを出したり、イベントをしたり、新しいサービスも始まるようです。
先日、花見に呼んでいただき、桜を眺めながら酒を飲みつつ語らって、改めて面白い人たちだなあと思いましたので、仲良くしてくださってる代表の須藤優さんに取材をお願いしました。立ち上げて、3年半。スモールメディアの軌跡と今とこれからをうかがいます。
JunkStageとは
【加藤】 最初はJunkStageの説明をうかがいたいんですが、JunkStageって色々なことやっているじゃないですか。初対面の方とかにはどういう説明の仕方をしているんですか?
【須藤】WEBマガジンですという話はしています。ちょっと面白い一芸ライターみたいな人を集めて、WEBサイトをやったり、フリーペーパーを作ったり、イベントやったりしてます、ということを言ってますね。
【加藤】 割と人を集めてます、という言い方ですね。
【須藤】そうですね、色々な人がいます。
【加藤】 そもそもはどうやって集めたというか、どうやって始めたんですか?
【須藤】そもそもは今スタッフをやっている人間がライターだったという形です。私がアルバイトでコミュニティサイトの仕事をしていた時に、周囲にちょっと一癖ある人がいて、こういうの集めたら面白いなと。
【須藤】ちょうどその頃ブログが盛り上がってた時で、2006年くらいだったと思うんですけど、ブログって埋もれちゃうじゃないですか。だからそれが勿体ないから、ブログに今日何食べたと書く、というようなことではなくて、専門性を持って面白い人たちに書いて欲しいなあと。それで人を集めて、でも最初は10人もいなかったですね。
【加藤】 最初は手近なところからやらないかという話を持っていった感じですね。
【須藤】手近でも面白い人がいた。今残られている方だと、バスケのフィルコさんとか、コントラバスの鷲見さんとか、そういう方々がいたので、書いてもらったら面白いかなと思って。
【加藤】 今ライターさん何人くらいおられるんでしたっけ?
【須藤】今は56人かな。
【加藤】 すっかりコミュニティじゃないですか。
【須藤】最近は会社組織に見られることも多くって。
【加藤】 外から見たらすごい巨大な組織に見えるし、僕初めてお会いした時、JunkStageが須藤さんの本業なのかと思いましたもの。JunkStageって何年目でしたっけ?
【須藤】2007年の頭にサイトを作ったので、3年半くらいですかね。
【加藤】 ライターさんはどういうモチベーションで書いてるんですかね。
【須藤】人それぞれですね。プロモーションのお手伝いをしたりもするので、アマチュアだけど自分を売り込みたいというようなケースでプロモーションの場に使ったりとか、後は単純に自分の生きていく軌跡じゃないですけど、その分野がすごい大好きだから、クラシックとかバスケの方なんかは、ジャンルとして底上げしたい、色々な人にコンサートに行って欲しい、色々な人にバスケを見て欲しい、そういうモチベーションで取り組んでいるライターも多いですね。
【加藤】 そうすると、最初の人たちがうまくやらないと、後の人たちなかなか続いていけないですよね。
【須藤】クオリティ管理が結構大変です。どうしてもバラついてきてしまうので。でも、皆どうせ書くなら色々な人に読んで欲しいとか、響くものを書きたい、という意識は強いです。半年でクールを区切っているんですけど、そのクールでこういうテーマを書いてくださいとスタッフから送ったりもしますね。
【加藤】 なるほど、やらせっぱなしではないということですね。
【加藤】 今、須藤さんの役割は、代表なんだと思うんですけど、どんな感じなんでしょうか。
【須藤】そうです。ただ今年から代表理事制にして3人並列で代表なんですよ。私が渉外周りをやって、もう一人が対ライターのコンテンツ担当をしていて、もう一人がWEB担当という感じで。
【加藤】 じゃあ営業・マネージメント・技術屋という感じですね。いよいよ組織になってきましたね。
【須藤】うん、7月から広告が入るんです。グラムメディアというアドネットワークのグループに加えていただいて、あえてマスを狙ってないために、パイの小さいサイトを集めてきて垂直統合したアドネットワークとして機能します、というところなんですけど。ただの広告は絶対やらないと決めてたんですが、コンテンツを大事にしてくれる、サイトはコンテンツを作ることに注力して、マネタイズはグラムメディアがしますという姿勢だったので、すごくなんか共感したんですよね。
【加藤】 それはJunkStageに馴染むかも知れませんね。営利目的じゃないにしても運営費とかかかりますものね。
【須藤】微々たるものですけどね。フリーペーパーとか作ったりするから出ていくんで。WEBだけだったらコストは安いんですけどね。
【加藤】 運営の方も専門性がある人が手伝ってくれてるんですか?
【須藤】そうですね。でもうちのWEB担当も仕事でWEBを触っているわけではないので、趣味みたいな範囲でやってくれてます。
やりたいことをやる
【加藤】 今会社勤めして、アフターシックスでJunkStageをやっている感じですか。
【須藤】そうですね、アフターエイトくらいで。
【加藤】 どうなんでしょう。サイドビジネスではないけど、課外活動というか。
【須藤】前の会社を辞めた時に、一回フリーで独立しようかと思ったんですよ。そうしたら、切り分けができないというか、性格の問題なんですけど、好きなもので儲けようとすると、違う方にいっちゃう気がして。なので、仕事は仕事で、やりたいことはやりたいことで、下手に儲けようとかあまり考えずにやった方がいいかなと。と思って、また会社勤め始めたんですけど。独立しろってよく言われますけどね。嫌ですって言ってます。
【加藤】 では全然苦じゃないですか、両立は。
【須藤】両立してるって感じがしないです。仕事の方が割り切っちゃってる感じです。これはこれ、頑張らないわけではないですけど。
【加藤】 それは仕事ができる人の発言ですねw。
【須藤】逆に仕事で楽しいことやろうとか力まない。やりたきゃ外でやればいいや。というスタンスですね。
【加藤】 やりたいことっていうのは、例えば学生の頃とかから、何となくあったんですか。
【須藤】もともと私物書きになりたくて文芸行ってるんですけど、大学時代にライターで食べていけるのはほんの一握りの方達ということを初めて知りました。大学時代もフリーペーパーのサークルやったりしてたんです。色々アポ取って、芸能人に取材とか行って、仕事もその延長ですよね、結局広告行っちゃったんで。
【加藤】 なるほど。JunkStageもその延長ですよね。今JunkStageってアウトプットいっぱいあるじゃないですか。それは意図してやっている感じなんですか?
【須藤】割とドットコムは成熟期に来たかなと思っていて、今年2つ企画が立ち上がるんです。グローバルサービスのJunkStage Earth、あともうオープンしているんですけど、Ustream放送を使ったJunkStage Radio。
【加藤】 いわゆるブログサイトというところから拡張したイメージですかね。
【須藤】Earthは来月アルファ版がリリースされます。誰でも写真を投稿できるサイトで、例えばお題を出す。「500円であなたにできることを写真撮ってきてください」という時に、アメリカだったらハンバーガーしか買えないけど、どこかの国に行ったら車とか、そういうのが一覧できたら面白いかなと。結構企画を温め続けて、ようやくリリースというところです。
【加藤】 日本のメディアでグローバルに活躍しているものってほとんど知らないですものね。
【須藤】JunkStageってコラムサイトじゃないですか。だから、日本語読めないとどうしょうもないので、それを打ち破りたくて。個人的にもこの1、2年は世界に行くのか行かないのかということを迫られている年だなあという感じがしています。
【加藤】 言語の壁を超えるには写真は早いですよね。Ustreamの方はどんな感じなんですか。
【須藤】Ustreamの方は完全にJunkStageのライターを招いて語ってもらう感じです。まだできたばかりなので、1年くらい試運転して、いけそうだったら、JunkStage以外の面白い人に出てもらって、というようなことも考えていきたいです。
【須藤】世の中の流れに応じて、Radioがソーシャルメディア、Earthがグローバルメディアみたいなイメージに、結果としてなっているんですかね。
【加藤】 僕最近、スモールメディアが面白い、と思っているんですが、実際運営してて、メディアということを意識してます?マスとの対比で自分たちを考えているとか。
【須藤】数をあまり追わないというのもそうなんですけど、もうポータルサイトの時代じゃないじゃないですか。どんどん、人もマスというよりトライバル的な方面に向かっている。「族」的な。小さなトライバルで成功するということの方が、今後伸びていくんだろうなあ、という感じがしています。うちとか電子書籍もいいかなあという気がしています。
【加藤】 僕、出版しましたよ。
【須藤】それ考えてるんです。
【加藤】 メディア的なことをやっている中で、逆にイベントの位置づけというのはどうなんですかね。
【須藤】文章じゃ伝わらないよね、という人が結構いて、そこを伝えるのがうちの仕事ではあるので、矛盾してるんですけど、読者の人たちが実際に会っていただける場というのを作ってみようかということからやってます。今年は9月にギャラリーを借りて、展示をメインに考えてます。2年パフォーマンスを中心にしてやってきたので、去年好評だった展示の方に今年は重点を置いてみようかと。
【加藤】 毎年トライアルしてるんですね。最終的に色々な方策があるにしても、JunkStageが飽きられなければいいわけですよね。
JunkStageのこれから
【加藤】 JunkStageこれからどうしましょう?
【須藤】毎年ちゃんと決めたほうがいいよねと言っていることがいくつかあって、今後どうするんだというのと、JunkStageってなんなんだということ。それを問い続けて3年、みたいなところがあって、あんまり縛らないでいったほうが、後から見て良かったかなと。
【須藤】JunkStageはWEBマガジンです。これをWEBサイトとしてサービスとして確立します、と決めちゃうと、フリーペーパーも作らなかったろうし、EarthやRadioもやらなかったと思うんです。緩く面白い人の集合体、ところでやっていければいいのかなというところです。
【加藤】 会社経営における人は財産みたいな話ですよね。枠が決まっているとね。
【須藤】人間が生きているだけでコンテンツみたいな人を集めているので。
【加藤】 スローガン決めないで、ひたすら回すのって、現場の人の労力はすごいかかりますよね。モチベーションとかクオリティとか。
【須藤】ライターにも聞かれますよ、JunkStageは今後どうなるのか?とか。わかりません!
【加藤】 1st Phaseが3年で一段落して、次のPhaseがグローバルとソーシャルと。
【須藤】そこまで戦略的に考えて始めたわけじゃないんですけどね。なりゆきでやれちゃう、から。
【加藤】 EarthもRadioも楽しみですね!また僕も呼んでください!
【須藤】是非是非来てください!

須藤 優(Yuu Sudo)。1983年8月6日生まれ。JunkStage代表理事、JunkStage Earth設立メンバー。
デジタル領域に軸足を置いたコミュニケーションプランナーとして、広告代理店を中心に勤務。大学在学中、キューバ・ハバナ大学およびナルシソ・メディナ舞踊団へ留学。その後も僻地を中心に旅を続けており、旅行記は自サイトJunkStageでも公開中。
JunkStage
http://www.junkstage.com/
JunkStage Earth(2010年夏α公開)
http://www.junkstage.com/earth/