浜本 階生
2012.03.26
「ソーシャルグラフとアルゴリズムが導く行方」
浜本 階生 - ソフトウェアエンジニア / 株式会社Rmake取締役
Blogopolisを知っていますか。10人に見せると10人が「スゲー!」という、僕の経験の中でも類まれなサービスです。それを作っている個人と知り合える!と聞いて、お邪魔した用賀エンジニア焼肉会が浜本さんとの出会いでした。実は今回の取材、録り直しです。というのも、最初にお話をうかがったのは、実はソーシャルニュースリーダー、Crowsnestの構想が生まれつつある、その前夜だったからなんです。
そういうわけで、Crowsnestを引っさげて、SXSWで海外にも進出を始めた天才エンジニア、かいせいさんにCrowsnestのことを中心に今後の展望についてめいいっぱい語っていただきました。かいせいさんが描く近未来、ちょっと覗いてみませんか。
SXSWという祭典
【加藤】SXSWからはいつ帰って来たんですか?
【浜本】3月17日です。土曜日です。
【加藤】ついこの間ですね。
【浜本】先週ですね。
【加藤】どうでした?
【浜本】もう桁が違うイベントだと思いましたね。
【加藤】桁が違うというのは?
【浜本】テクノロジーだけじゃなくて、ミュージック、フィルムというクリエイティブな各分野の展示があって、日程がわざと混ぜてあるんです。なので昼はテクノロジーの展示会がある場所で、夜になって来ると、路上に人が溢れて、バンドの生演奏があったりだとか。
【加藤】じゃあ東京でやっているテクノロジー系のイベントと違って、本当にお祭りというか、キャンプというか。
【浜本】カオスみたいな。
【加藤】カオスなんですか!
【浜本】同時並行で街中の色々な場所でライブとかセッションとかが並行して行われていて、プログラムを読んでも、全く状況を把握できないんです。
【加藤】なるほどね。むこうに結構日本人の人来てました?
【浜本】そうですね。多分、200人くらいは行ってると思うんですけど。
【加藤】それ全員、出展されている方ですか?
【浜本】出展されている方とその関係者の方で200人くらいいて、多分それ以外にも音楽の方で出している方もいたと思います。そこは僕はわからないですけど。
【加藤】Crowsnest自体はブース出したんですか?
【浜本】ブース出しました。
【加藤】どうでした、むこうでのウケは。
【浜本】アメリカ人ってすごく親切で、話は聞いてくれるし、すごく褒めてくれるんですよ。いいねって。ただそこだけで終わってしまうと勿体ないので、なるべく実際に動いているものを見せて反応を観察したりとか、普段どういうスマートホンの使い方をしているのかとか、どういうアプリを使っているのかということをなるべく聞くようにしました。
【加藤】そうすると自分の使っているアプリとの兼ね合いで、相対的にCrowsnestの話とかも聞かせてもらえそうですよね。
【浜本】そうですね。Crowsnestは今ニュースリーダーというコンセプトでやっているので、普段どんなニュースアプリ使ってますか?というような聞き方をすると、大抵、Flipboardとか、後はCNNみたいなメディア系のアプリ、みたいな答えが返って来て、Flipboard使っている人にはどの辺が気に入っているの?という形で会話をして、海外の人の様子を掴むというか。
【加藤】作ったもの、海外に出したのは初めてですよね?
【浜本】初めてです。
【加藤】じゃあ、結構色々調べて、こうやっていった方がいいだろうとか、考えていったんですか?
【浜本】正直、準備が大変忙しくて、間に合わないところが多かったですね。最優先していたのはCrowsnestのiPhoneアプリをイベントまでに間に合わせることだったんで、その開発に時間を取られてしまったので、あまり出展そのものへの準備が間に合わなかったですね。それは反省点です。
【加藤】まあでも一回勝負じゃないですからね。これからずっと続いていくことだし。
ソーシャルニュースリーダー、Crowsnest
【加藤】多分、前に取材させてくださいと言ってお話をうかがった時は、Crowsnestの構想が頭の中にあって、でもあまり喋れなくて、っていう状態だったんですよね。
【浜本】そうでしたね。たしかに。それくらい前になりますよね。
【加藤】結構、僕、Crowsnest使っていて、さっきも喫茶店でニュースチェックしてたんですけど、日本のユーザからはどういう感じですか。リアクションというか。特にUIのリニューアルとかしましたよね。
【浜本】リアクションは地味に便利という。今って日本のユーザからは確実に毎日使う便利なツールだという評価を受けつつも、感動というか、ものすごくこれは良い!っていうよりは、地味に便利と。
【加藤】日々食べる米、みたいな話ですよね。
【浜本】そうそう、そういう感じですよね。
【加藤】でもなんか、かいせいさんがスタートアップというか新しいサービスを始めようとしてソーシャルニュースリーダーというジャンルに着目したのって、そもそもすごく新しいUXを提供するというよりは、日々の暮らしの不都合をいかに便利にするかみたいなところなんじゃないですか。
【浜本】そうですね。元々、僕はネットサービスで言ったら、はてなブックマークにとても興味を持っていた経緯があって。
【加藤】TopHatenarとか。
【浜本】そうです。これまで作って来たサービスというのもそれに基づいてというか、そのデータを元に作っていたものが多くて、その中の何に興味を持っているんだろうと考えた時に、やはり僕達が日々の情報に接する、接した上で何らかの刺激を受けて、それをまた他の人とかに還元する、というのが人を豊かにしていくんじゃないかという直感を持っていたんです。それをとてもよく体現しているのがはてなブックマークでした。であれば、それを更に自分が良くする、というか、もっと今の時代に合わせて良いものにしていくことはできないか、というのが出発点になってます。
【浜本】じゃあ今の時代ってなんだろうというと、ソーシャルメディアというのがインフラのように、当たり前のものとして使われるようになっていて、これを利用しない手はないのですけど、単にソーシャル連携してますよというサービスはいくらでもあるので、そういうレベルではなくて、そこに洪水のように溢れている情報の中で何が一体自分にとって必要なのかというフィルタリングをしなければいけない。そのためには、単なる連携というレベルよりはもう少し進んで、今はTwitterでCrowsnestはやっていますけれども、Twitterに流れている情報を全て集積した上で、何らかの分析作業を行って、結果をユーザに見せてあげるような少し大きめの仕組みを作らないといけないと考えたんです。
【加藤】古い話ですけど、梅田望夫さんが「インターネットは玉石混交だ」っておっしゃって、その後、佐々木俊尚さんとかが「キュレーションだ」とおっしゃって、あの辺って結構属人性の高いフィルタリングだったじゃないですか。Twitterで佐々木さんをフォローするとか。でもそこの上のレイヤーでアルゴリズムで情報のフィルタリングができると良いんですよね。
【浜本】そうなんですよ。佐々木さんのような主張をする方達というのは、とても正しいことを言っていると思うんですけど、じゃあ佐々木さんをフォローした、そこまでは良いとして、そういう良質なキュレーションをしてくれる人が100人いた時に100人全員をフォローしたらどうなってしまうか、ということを考えれば、当然そこで情報が溢れていってしまいますよね。結局、整理する仕組みというのは絶対に必要になるんですね。こういうのってWebの進化と共に必ず起きてくる、どんな分野にも起きることだと思っていて、それこそインターネットの初期の頃はリンク集でしたよね。良質なリンクを人が辿っていたというか。それで十分間に合っていたけど、それが段々手に負えなくなってきたからYahoo!のようなディレクトリ型サービスが出てき、それでも手に負えなくなってきたので、今度はGoogleが出てくるという歴史があるじゃないですか。それにTwitterそのものだって6年前とかのできた頃は本当にシンプルで、そこのタイムラインで流れるスピードというのは全然読める、許容範囲ものであって、ただそれをタイムラインというとてもシンプルな仕組みだけが100%ワークするような状態。でも、今その時のユーザもおそらく100倍とか、更にソーシャルグラフの複雑さも100倍もしくはそれ以上になってますよね。
【加藤】今のお話だとGoogleからソーシャルに行った時に、一人一人の発信する情報への振り戻しがあったと思うんですよね。
【浜本】ありましたね。
【加藤】あれ結構極端な振り戻しだったから、便利という方を埋めようとしているのがCrowsnestですよね。
【浜本】そうなんですよ。ただ、なかなかこういうアプローチ、つまり機械的なアプローチをソーシャルに持ち込むというのは、直感的に受け入れやすいものかというと、そうでもないところがあります。去年、TechCrunch Tokyoに出て、Crowsnestについてプレゼンをした時にニコニコ生放送でも同時に中継していたんですね。その中継の録画を後で観たんですよ。そうすると、コメントが結構批判的で、皆こんなものを使ったら馬鹿になる、と書いているんですね。つまり、自分は人を自分の目で選んでフォローしているんだから、自分の目で既にフィルタリングをしているのだから、それでいいじゃないか、ということなんですよね。
【加藤】なんでここに来てアルゴリズムを介在させないといけないのかということですよね。
【浜本】余計なお世話をするなということなんですよ。全部見るから、と。これだけ情報が爆発しているにも関わらず、まだそういう思っている方のほうが多いんですよね。この辺がなかなかCrowsnestを広げていくに当たって超えないといけない壁なのかな、と思いますね。
【加藤】個人としてそれをすごい痛感したのは、実は1年前の震災の時で、僕がフォローしているんだけど普段あまり更新されてなかったアカウントも含めてすごいTwitterに書き込んでいたりしていたじゃないですか。色々な情報が錯綜してというところで、あの時、Twitterのタイムライン見るのに疲れてしまったんですよね。あの時、Twitterでフォローする人、1000人くらいいたのを200人くらいに減らして。ようやく見れるようになったな、と思っていたんですけど、でもそれだけだとTwitterがメディアとして活かしきれてないなあという感じがして、じゃあどうするかという時にCrowsnestの有用性がうまくマッチングしたんですよね。例えば、1週間必ずCrowsnestを使わなければいけない条件をその人に与えられたら、あれは結構中毒性があるというか、必要なものになると思うんですよね。でも、朝飯1週間、米食だった人をパン食に変えるくらいの転換だったりするので、そこはもしかするとマーケティングとかの力も必要になってくるかも知れないですね。
【浜本】あと思っているのが、リーダーという位置付けだけだと駄目だと思うんですよ。サービスというのはインプットがあってアウトプットがありますけど、今のCrowsnestはインプットが大変比重が高くて、アウトプットは何ができるかというと、自分で再拡散、情報をツイートできるという程度なんです。本当に強いサービスというのはアウトプットのところがインプットにループしていて、ユーザが増え、アクティビティが高くなればなるほど、それがどんどんサービス自体の価値に変わる、還元される、成長していくという仕組みになってるんですよね。
【加藤】それすごい安直ですけど、Pinterestとかそうですよね。
【浜本】そうですね。どうして最初からそういう設計にしなかったのかというと、それはそれで理由があって、コールドスタート問題というのがどんなWebサービスにもあるんですよね。つまり、最初の10人、最初の100人のユーザ規模の時に、使っていて面白いかどうかという問題。SNSとかっていうのは、本当にそういう問題のある典型で、鶏が先か卵が先かという話なんですけど、人が増えないとコンテンツが溜まらない、コンテンツが増えないと人は来てくれない、という大変苦しい問題があるんですよ。ほとんどのサービスはそこを超えられずにつぶれてしまうんですけど、Crowsnestの戦略というのは、最初せっかく既存のソーシャルグラフの上に情報が溢れるほど流れているのだから、そこはそのまま使わせてもらおう。そして最初の10人100人のユーザが有用なツールとして使えるようにしようということだったんですよね。
【加藤】まさにそうですよね。
【浜本】なので、まずはそこに特化したんですね。あえて、リーダーというキャッチコピーをつけました。今、おかげさまでユーザも増えてきましたし、確実に利便性は提供しているなという自信も出てきましたので、これからはいよいよツールの殻を破って、コミュニティのレベルに高めていけるんじゃないかと思っています。
【加藤】ネクストステップですね。それはすごいまた楽しみですね。だけど僕まだどういう風になるのかな、というイメージ湧いてないんで。
【浜本】ただこれは結構単純で、Crowsnest自体の中にソーシャルグラフを持たせ、かつその中に独自の情報の再流通の仕組みを入れるというだけの話なんですね、基本的には。PinterstとかTumblrとかと全く同じですね。
【加藤】「キモチ(Crowsnestでは、記事に対する感想を「ナイス」「ふむふむ」などの感情アイコンで表現できる)」とかあるじゃないですか。ああいうものが共有されること自体がサービスの意味に繋がってくるみたいなイメージですかね。
【浜本】はい、そうですね。今、PathとかLINEとか、ああいうアプリを見ていて、独自のソーシャルグラフを作ることって、以前に比べてすごく簡単になっているなと思います。電話帳の中で既にそのアプリを使っている人をディスカバリする機能が当たり前のように入ってますよね。もちろんプライバシーの問題には十分な配慮が必要ですけど、それを使えば誰々もこのアプリ使ってるんだ、この人も追加しておこう、ということがとてもやりやすくなっていて、そうやっていくと、情報ネットワークとしてTwitterをより純化させるような方向に、Crowsnest独自のソーシャルグラフを作れると思ってますし、その場合、価値がとても高くなると思いますね。何と言っても、今Crowsnestの課題は、情報のノイズ性がやや高いというか、どうしてもTwitterの全ストリームを対象にして、かつ自分のフォローしている人全員を対象にして情報を集めてくるので、その中にはどうしても自分の興味とかけ離れたものというのも混ざってきてしまいます。それがセレンディピティということで良い面もあるのですが、やはり基本的には自分の興味というものによりしっかりマッチした情報だけが流れてくるようなものが有用なはずで、そのためにはソーシャルグラフをもう少し洗練させる必要があると思います。
【加藤】うかがってて思ったんですけど、今の話ってパーソナライゼーションだと思うんですけど、サービスの中のエコシステムで今かいせいさんがおっしゃったみたいに、ユーザがCrowsnest内でもう少し能動的なアクションを取っていくと、そのアクションで何をするかによって、さっきおっしゃってた情報の精度とかソーシャルグラフの洗練度って高められるのかなあと。
【浜本】まさにそうだと思います。Twitterで特定の人をフォローしているというのは、これはこれで一つのシグナルで、ユーザの興味を示すものではあるんですけど、ややゆるい、ですよね。フォロー返しをしている人もいますし、その場合、興味と関係なくフォローしてくれた人にはお返しをする。そういう使い方をしている人も多いし、それはそれで楽しいじゃないですか。そういう部分もシグナルとして一応の考慮はしつつ、本来というか王道的には独自のソーシャルグラフにより強い重みを与えて、ハイブリッド型と言いますか、少しノイジーだけどたくさん情報があって面白そうなネタも見つかるという世界と、よりもっと純化された自分の興味に合致する面白いコンテンツを見れる世界と、両方が見れる仕組みというのを作りたいなと思いますよね。
次なる世界へ
【加藤】せっかくなんで最初の話に戻るんですけど、かいせいさん、いつくらいから世界に向けて勝負かけていこうと思ったんですか?最初から?
【浜本】これは会社作った時、更にその前、会社作ろうと思った時だから、前にお話しした時くらいに遡ると思います。
【加藤】その前のBlogopolisとかも含めて、日本ドメインのサービスだったじゃないですか。今回、Crowsnestというサービスは世界照準で作っていきたい育てていきたいサービスということですよね。
【浜本】そうですね。Twitterをベースにして情報を集めているのに、日本のコンテンツにしか対応しないというのは勿体ないですし。
【加藤】それって今まで日本でかいせいさん大きな賞とかも受賞されてますけど、あの辺で気を付けていた感覚と、今回、外に攻めてくぞ、外も攻めてくぞ、みたいな時の感覚って違ったりしますか?勘所は一緒?
【浜本】違いますねえ。
【加藤】どの辺、違いますかね。
【浜本】コンテストに応募していた時というのは、本当に一発ネタとしての意味合いが強いですよね。こういうアルゴリズムがあって面白そうだから、それを実装してみたというレベルのことであって、思いついて、その日のうちに作って、公開した、というレベルのものなので、設計を考えるみたいなフェイズが入ってなかったんですよね。全部そうなんです。TopHatenarもそうだったし、Blogopolisもそうですし。
【加藤】そういう意味じゃ今回全然違いますね。
【浜本】今は考える時間というのがとても長くなっていて、それはそれで自分にとってはストレスなんですけど。
【加藤】ああそうなんだ。
【浜本】やっぱりコード書いているのが一番楽だから。
【加藤】自分が作りたいものを作るというのもあると思うんですけど、社会からの要請を受けて自分が作るべきだと思うものを作った感じですよね、今回。
【浜本】社会の要請ですか!そっかあ。
【加藤】だって、先程のリンク集から始まって、ディレクトリ型になって、検索が出てきて、ソーシャルメディアになって、結構ズン止まりというか、そこにある問題意識ってすごい大事なことで、さっきかいせいさんが言ってた、溢れる情報の中から求める情報をフィルタリングして抽出することができなくなってるんですよ、というのは結構社会の問題なんじゃないですかね。
【浜本】確かに、そうかも知れないですね。実はCrowsnestを他の人から評価していただく時に、ビジネス的な意味でTechCrunch Tokyoのような形で評価をされる時に、よく言われるのが、このサービスは切実なユーザの問題を解決しているのかしていないのかというところで、切実な問題であればあるほど、その解決策というのは、ビジネスとしての可能性高くなるわけじゃないですか。でも、贅沢な悩みというか、別に困ってないんだけど、あればいいよねというレベルの問題解決もあって、どっちなんだろうというのはとても悩むんですよね。
【加藤】どっちだと思っているんですか?
【浜本】今はまだ切実な問題という部分までは切り込めてないですね。高級な悩みなんですよ。情報をフィルタリングしたいというのは。
【加藤】正しい具体事例かわからないですけど、今の文脈で行くと、対処療法と予防療法ってあると思うんです。西洋医学と東洋医学。多分、未来にすごく大きな問題になってしまう分野だと思うんですよ。このまま人間が情報を扱っていったら。だから、そういう未来に生じるであろう問題に対して早めに布石を打ち始めているってことなんじゃないかなと僕は思ってるんですけどね。
【浜本】僕もそう信じたいところです。
【加藤】後は今日も話出てましたけど、使ってもらうとか、使ってもらったことを周りに広めてもらうとか、習慣にするとか、その辺ですよね。多分、そういうのが今日かいせいさんが聞かせてくださった新しいサービス像になっていく過程でついてくるものかも知れないですね。なんか神妙な顔になっちゃいましたけど、楽しく作ってるんじゃないんですか。
【浜本】楽しい時もあります、けど、やはり悩みの方が多いですね。
【加藤】そうですよね。例えば自動車という発明品を発明したらそれで発明家としての人生終わり、みたいな話じゃないですものね。作ってからが大変という。
【浜本】今はやはりスマホの中で勝負しないといけないというのは特に思いますね。
【加藤】アプリも作りましたものね。
【浜本】スマホとPCで何が違うのかと言った時に、情報の集約、再流通みたいな分野において、特に問題になる、スマホ特有の問題というのがありまして、スマホというのはWebブラウザが完全にクローズドな状態に置かれているんですよ。つまりブラウザ自体にプラグインのようなものを組み込むことはできない、今後もできないと思って良いと考えています。iOSのSDKを見ても、あまりSafariとの連携をできないように意図的に作ってある節があります。Reader機能(Webページの本文だけを抽出して表示する機能)はとても便利ですけど、外部のデベロッパはアクセスできません。これは完全にSafariにロックインされている機能です。あとリーディングリスト。これもアクセスする方法はないんです。こういうのが一例なんですけど、とても重要なポイントだと思っていて、はてなブックマークのような仕組みというのはPCブラウザのアドオンに依存している部分が大きいと思うんですね。そういったことをスマホのブラウザでも実現しようと思うと、強いて言えばブックマークレット。ただこれはとても敷居が高い、普通のユーザが理解できるようなものではないですよね。
【浜本】つまりWebブラウザを前提にして、そう言った情報のネットワークが機能しない世界がiOSです。じゃあどうするかというと、Webブラウザではなくアプリ独自の世界で、情報のインプットに相当する部分もできるようにしないといけない。Webの閲覧をSafariではなくて、アプリの中で完結できるような状態に持って行き、その中でアプリ独自のアクティビティをユーザに促して、どんどんコンテンツを豊かにしていかなくてはいけないと考えています。
【加藤】それすごい面白い話だと思うんですけど、一時結構、HTML 5でWebアプリが当たり前になるから、iOSがアプリの呪縛から解き放たれるみたいな記事がネット系のメディアにも掲載されていたと思うんですけど、それだとかいせいさんが作ろうとしているエコシステム作れなさそうですよね。
【浜本】そうですね。この種のサービスというのは、あらゆるURLが対象になっているサービスですから、そういう自由度を与えようとすると、逆に大変厳しい制限がかかるという、ちょっと皮肉な状態ですよね。
【加藤】そう考えるとやはり、というか、それがCrowsnestアプリを出した必然性なんだ。
【浜本】そうです。
【加藤】じゃあある意味、CrowsnestがウェブでもiOSでも見れて、という状態になった時に、あえてアプリ版が出てくるというのは、さっきおしゃってた、かいせいさんの考える次のステップへの最初の布石になるんですね。
【浜本】そうです。
【加藤】大丈夫ですか、こんな喋っちゃって。
【浜本】ははは。どうしようかなあ。
【加藤】ははは。Crowsnestのアプリ版ってもう使えるんでしたっけ?
【浜本】今はSXSWのために日本以外の国で先行公開した状態になっていて、日本でいつ公開するかは検討中です。
【加藤】公開されないわけじゃないですよね。
【浜本】はい、したいです、なるべく早く。
【加藤】では僕、それ使うの楽しみにしています!

浜本 階生。ソフトウェアエンジニア。株式会社Rmake取締役。
Webに流れる情報の整理や可視化に興味を持ち、TopHatenar、Blogopolisなどの個人サービスを開発する傍ら、技術書籍の共訳、雑誌連載などの活動を行う。現在は、ソーシャル・ニュースリーダー「Crowsnest」に注力。ソーシャルWebにおける情報ネットワークの構築を目指して開発を続けている。
Twitter: @kaiseh
Crowsnest