黒田 和宏
2012.04.14
「企業と個人を結ぶもの」
黒田 和宏 - 某IT企業にて、若手社員の育成ならびにソーシャルメディアを活用した新卒採用を担当
まだ僕が学生時代にデザイン会社の仕事をパートタイムのスタッフとして手伝っていた頃のこと(別に出社とかなかったけど)。その僕を手伝ってくれていたのが同じSFCに在籍していた1年下の黒田和宏君でした。そこでの仕事が終わって、もう10年ほど経ちますか。今でも年に数回は酒を飲みながら、近況報告したり、他愛もない思い出話に花を咲かせられるのは、あの頃相当お互いやったからだと思っていて、独立以降、ずっとフリーランスの僕に取って、今のところ人生で唯一人の「仕事の後輩」なんだと思います。そういう関係性が今でもあるのは本当にありがたい。
そんな黒田君が人事部で仕事をしているという話を聞きました。そう言えば、ET Luv.Lab.で「就活」というようなことを話す機会はなかったですし、後輩に「就活」の話をされるのは、結構僕も苦手というか鬼門の意識あり。就活の現状を把握しつつ、最近流行りのソーシャルリクルーティングみたいな話題も触れつつ、改めて黒田君の仕事ぶりを聞かせてもらえたらなあという、ちょっと贅沢な取材になりました。同年代は元より、学生さんにも是非読んで欲しいなあ。
景気の善し悪しだけではない、就活事情
【加藤】就職の相談をたまに受けることがあるんだけど、僕が就活してから10年近く経ってるじゃない?もうなんか時代も変わったし、後輩に何も言えることがないというか、「全力でやれ」くらいしか言えない感じがしていて。まず、会社、大企業にいる立場として今の就職事情というのをどういう風に見ているのかなあと。
【黒田】なかなか難しい質問から来ましたね。正直無茶苦茶厳しくなっていると思います。今だったら私は今の会社の採用を通っていたかわからない、と感じます。たとえば、外国人の数もこのグローバルのご時世のため増えてきている現状があるのですが、韓国でSamsungに落ちてしまった方でも、日本に来た時にバイタリティレベルとか全然日本人と比べものにならない、という状況があります。今の私たちですらかなわないというか。。。
【加藤】ある意味、先方に取ってみれば予備というか滑り止めというか、そういうことだよね。
【黒田】彼らが一次志望じゃない状態で日本に来ても、日本人を採用しているよりも良い人が揃っているというか。
【加藤】その感覚ってなかったかも知れないね。
【黒田】巷で言われている危機感というのを肌で感じるようになってきたというのはありますね。
【加藤】単純に就職口が狭くなっているという話だけじゃなくて。
【黒田】その席のパイの取り合いすらもグローバルになって来ているという。
【加藤】そうすると景気が悪いから就職口が少ないっていうだけの話じゃないということだよね。
【黒田】だけの話じゃないですね。完全に人材市場もグローバルになって来ている状況なので、最初は単純にうちの会社をグローバルにしていかなければいけないということもあり、海外での採用が増えてきている感はあるんですけれど、いざ採用して話をしてみると、やはり意識とか能力とかの面で圧倒的に違っていて、そちらばかり取っても良いのではないかと個人的には思ってしまいます。
【黒田】とは言え私達は日本人なわけなので、どうすれば日本人元気になって頑張れるのだろう、ということを大学と企業がもっと一緒に考えていく必要があるような気がしていますね。
【加藤】そうすると、もう、就職活動のテクニックみたいな話ではないよね。
【黒田】そうですね。単純に小手先のテクニックは、全部の企業がそうなのかわからないですけど、企業側も見抜こうとはしているので、経験値として自分の言葉でちゃんと話しているかどうかということとか、何かを生み出すとか、そういうことが大事なんだと個人的には思います。
【加藤】それは文系、理系にかかわらず?
【黒田】そうですね。そこは職種がありますから、どの職種に応募しているかにもよりますし、営業には営業に求められるスキル、たとえばバイタリティとかタフさとか、むしろ狡猾さみたいな話もあるかも知れないですけれども、逆にエンジニアや企画屋さんという話の時には、何かを生み出す動きをしてきたかとか、実際に手に職があるのか、みたいなところを気にしていると思います。
【黒田】ただ、そういうスキルの話は置いておいて、やはり熱意とかやりたいことをどれだけ持っているのか、というのは僕個人としては一番重要かなあと思っています。
【加藤】準備できるものとして、一つはスペック的なところがあって、もう一つはモチベーション的なところだと思うんだけど「就活です、はいモチベーションあげましょう!」っていうのは多分無理だって話だよね。
【黒田】そういう時代ではないと思います。
【加藤】そうすると僕らの時代の構造とはやはり大分違って来ているよね。
【黒田】違って来ていますね。企業が変わってきていることに対して、大学生の皆さんの意識がついてきているのかが私もまだわかっていないですが、やれている人はしっかりやれてる感じはありますが、そうでない人は相当追いついてない感がありますね。大学入った最初から危機感持って自分のキャリアをどう描いていくかみたいなことを考えられている人はやはり飛び抜けている気がします。
【加藤】優秀な子はいるだろうしね。多分、危機感の作り方というか、景気が悪くなると雇用が厳しくなって、景気が良くなると雇用が良くなるという、勿論そういう部分もあると思うのだけど、それだけじゃなくなってるじゃん。今、黒田が言ってくれた話も多分そういうことだし、そういうことに対して準備していかないと本質的な力は身につかないよね。
【黒田】そうですね、個人的なところにはなりますけど、多分、アクションが一番大事だと思っています。「やるぞ」って思っているだけでは不十分で、失敗していたり、身についていなかったりしているかも知れないけど、それに向けて「行動していること」がすごく重要。企画書を作って誰かに見せて全然ダメだと言われていたとしても、「企画書を作って誰かに見せる」というアクションを実際にしているのだとしたら、それはすごくイイコトだなと思います。
【加藤】エビデンスがあれば評価の対象になるということだよね。
【黒田】勿論、それだけで決まるわけでもないとは思いますけど、少なくとも、思っているだけ言っているだけ口だけの人よりかは、アクションに移っている人の方が良いし、アクションに移っている人が、更に何かが身についていたり、実体験というか成功体験になっている人の方が良いですね。昔のようにバイトでリーダーでしたとか、サークルでリーダーでした、だけでは厳しい気がしていて、そこにやりたいことと経験がどう結びついているかとかが重要になってくると思います。
【加藤】結構、おそろしくてさ、僕らの成功体験をそのまま今の10年下の後輩に話すことが、必ずしもプラスに働かないんじゃないか、っていう気がするんだよね。勿論、本質的なところは変わらないにしても、こうやったらいいよとかこういう方法論がいいよ、というのは適切ではない気がしていて。
【黒田】少なくとも就職活動についてはそうだと思います。就職活動のWhatとかHowの部分についての「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」は小手先なんだったらあまり変わらない気がしています。何を言えば良いっていう世界ではなく、どのように行動するかとか、そもそもあなたはどういう目的で生きているんですか、というところに結局なると思います。
【加藤】カウンセリングじゃないけど引き出してあげる話の付き合い方はできるにしても、ということだよね。多分、俺、次後輩に会う時にも「全力でやれ」としか言えないな。
【黒田】確かに、結局は「人間力を高める」、という話にしかならないのかもしれません。
ソーシャルリクルーティングの行く先
【加藤】一方で、それに比べたら割と浮いた話になってしまうのかも知れないけど、ソーシャルリクルーティングとかスマートフォン就活みたいな話もあるわけじゃない。それは一つは、競争が激化してきた中で、便利なツールはできるだけ活用しようということだと思うのだけれど、実際どうなのかね?
【黒田】どうだったんでしょう。。。自分もそこに関わってはいましたが、模索している最中に試行錯誤しながらやっていた感じでした。ただ、私たちの会社はあまり流行には乗らなかったんですよ。Facebookを使うって事自体はしたんですけど、いわゆる診断ツールを出したりはせず、それよりも情報発信に努めていました。途中から、実はFacebookだけではなく、Ustreamも合わせて利用したりもしました。
【黒田】他社はどうだったんでしょうね。言うほどFacebookやって良かったという話にはなってないんじゃないか、というのが正直な感想です。
【加藤】いやあ、すごいなあと思って感心してたんだけど、僕が学生の頃からしたって採用のWEBサイトって大手の会社ってすごくて。ゲームじたてになっているとか、色々な工夫はしてたと思うんだよね。それの実効性みたいなものが問われるタイミングというのが実はあって、例えばそういうリッチなものを流したら適切な学生を取れるかというと、パイが集まるとむしろ大変だったりもするわけでしょう、このご時世。
【黒田】採用活動って、マーケティングなんだ、とやってみて感じたところがあります。自分がサービス開発した後に、どういう風に人に広めていくか、ということに非常に近かったです。
【加藤】ああ方法論としてね。
【黒田】Facebookって媒体の特性としては「待ち」だなあと感じました。Facebookで「いいね!」をしてもらうことって「待ち」なのかな、と。Facebookは僕らが来て欲しいと思っている皆さんがいる場所なのかなあと思っていたんですが、Facebookはやはり「待ち」のメディアであり、自分たちで出て行かないといけないなという時に、Ustreamの方が良いんじゃないかと考えてそちらも使い始めた感じです。
【加藤】PULLとPUSHで言うと、もっとPUSHに注力した方がいいんじゃないかということだよね。
【黒田】勿論、「いいね!」の数自体が増えていくことには喜びを感じていたのですが、そこばかりを気にするよりかは、誰が「いいね!」してくれているんだろう、ということを気にしながやっているところはありました。
【加藤】それは結局採用の分野に限った話じゃない気がするよね。
【黒田】逆にとんがっている会社なんかはそういうことをやってない気がしています。Facebookページを作って情報発信、じゃなくて、むしろ、この人のTwitterのログとか、この人のブログの記事とかを見て、その人に向かって一点集中採用というか、「君、来ない?」ってDM打つとか。
【加藤】それはヘッドハンティングに近い形だよね。
【黒田】そういうことの方が、ソーシャルリクルーティングという言葉にはむしろ近いなあという気がします。
【加藤】それはもしかすると流れとしては、今Facebookでマーケティング的に行われていることというよりは、むしろLinkedInで欧米で行われている世界に近いのかも知れないね。自分のポートフォリオを作って、アプローチをするなりアプローチが来るなりするという。そうするとどうなのかね。とりあえずのところで、日本の新卒の就活はいわゆるポートフォリオ型になっていくかな。
【黒田】どうでしょう?今年がFacebookを使った採用活動元年だった気がするんですけど、来年同じかというとそんなような気もしなくて、元年であり、Facebookをやっているということ自体がまだギリギリマイノリティというか、感度が高いと見える感がありましたが、来年の今頃はそんなことない気がしています。場合によってはLinkedIn元年に切り替わっているかも知れませんね。その辺は読めないのですが、一つ言えることは媒体の性質をちゃんと見極めてそれに合ったやり方をするとか、風潮にあまり踊らされすぎないのが大事だと思います。
【加藤】面白いと思うのが、僕らが面接のコツだと言われて覚えたこととか、まあ僕は割と無視していましたが、結局、一次情報でやっている世界の間はコミュニケーション能力なわけじゃない。だけど、二次情報でコミュニケーションをしようという段階になると、エビデンスを作る力というか、ビジュアライゼーションの力というか、自分のスペックをいかに可視化できるかみたいなことが大事になってくる気がして、そういう観点で今のソーシャルメディア全体を見ていくと、もうちょっと変わってくるのかなという気もする。
その仕事、後輩に薦められますか?
【加藤】ちょっとまた話題を変えてみたいんだけど、昔よく話していたのが、「後輩に薦められる仕事をしてない」ということで、ようはフリーランスは楽しいし素晴らしい仕事のやり方だけど、後輩に薦められる仕事ではない、という話をしていて、昨日今日の話だとSharpがSonyがという話もあるから、もしかしたら、今一部上場企業にいることが全ての担保になる時代じゃなくなって来ているので、僕が4、5年前に考えることを余儀なくされていた「後輩に薦められる仕事かどうか」ということを、他の人達もちょろちょろ考えださないといけないタイミングに来ているのかなあ、と思うんだよね。
【黒田】そうなっていると思いますし、そういう動きをしている人はいますね。大きな船といえど、沈む可能性が出てきている時代です。個人の地力を上げておかないと、この船は沈まないかもしれないけれど、沈む可能性は否定できない。私にも家族がいますから、いざというときに飛び降りて泳いで自分たちが沈まないためにも、そして、そもそもそんなことにならないように会社がいい方向に変わるように動くためにも、社内においても社外に対しても個人としての地力とプレゼンスを上げておく必要は絶対にあると思います。そこはすごく気にしています。
【加藤】そうすると例えば今学生の子に、大企業に勤める意味を話すとしたらどうなるかな?
【黒田】一番言いたいことは、「自分のやりたいことはなんですか?」ということを、少し臭い言葉になりますけど、自分の魂に真摯に聞いて欲しいですね。
【加藤】良い言葉だね。
【黒田】次に自分にはCanの力があるかどうか。それは今既に一人でできるのか、それとも人を集めてできるのか、ベンチャーでもできるのか、という時に、できるのであれば自分で、もしくは、ベンチャーというのはあると思います。また、どれぐらいの規模を求めているのか、そのフィールドはどこにあるのか?というところも大事だと思います。そういうときに、大企業たるところはあって、予算の大きさとか、動くとなった時の人の多さとか、そこで一気にでかくなる仕事のダイナミクス、というのは薦められるかなと思います。
【黒田】また、育成面がしっかりしているのは、やはり大企業って良いよねというポイントだと思います。そういう話は自画自賛と言うことではなく、ベンチャーの社長の方とか、ベンチャーに勤める方から言っていただけました。
【加藤】僕は基本的にレガシーな会社というか昔からある会社に勤めあげることを全く否定はしていなくて、そういう立場でもないんだけれども、企業と個人の付き合い方が変わっている感じがするんだよね。
【黒田】おっしゃる通りだと思います。僕も途中から考え方を変えたんですけど、黒田和宏という会社があって、サラリーマン事業は一事業でしかないと。月額で安定収入がもらえる事業なわけですが、それだけで良いんだっけ?というのが先程の個人の地力を上げる話だと思っています。黒田和宏という会社を筋肉質にするための事業というか活動を儲かる儲からないにかかわらず、もう一つ持っておく必要がある気がするんです。それが多分、サラリーマン事業の方にも役に立つし、そっちはそっちでやっておくことが黒田和宏そのものの力を高めておくことに繋がり、社内においても社外に対してもプレゼンスを上げるということになると思います。それを本気で続けていきたいと思っていますし、過去やっていたからこそ今の仕事の場所に辿りつけた気がしています。
【加藤】僕の仲間も、大きな会社に勤めている人もいるけど、大きな会社に行くと自分の人生を捧げる代わりに60歳まで面倒みてくれて、フリーランスだと自由だけど全部自分の面倒みないといけないという話ではない気がしていて、自分の人生捧げますか?自由になりますか?みたいな論法が今インターネットである気がするでしょう?なんだけど、できる人はできるんだよ。黒田が言ってたみたいにやりたいことというのがまずあって、やりたいことに対してストイックに組織の中でできる人もいるだろうしし、そうじゃなかったら日本なんかとっくの昔に沈没していたはずで、やれる人がやって来たから今の日本があるわけだろうし、フリーランスでもそういうことをやれる人が増えてきたから、就職大事なんだけど、就職うまくいくいかないで人生決まるっていう話じゃないよね。
【黒田】そこはそうだと思いますね。ただその言葉が就活がうまくいかなかった人に届くかというのはちょっと不安だったりします。うまくいかなかったとしても、その人自身を否定をしているわけではない、と言うのは届くといいなあ、と感じています。今回採用活動に初めて絡んでみてわかったことなんですが、誰を採用して誰を採用しないかというのは、別にその人の能力だけを見ているわけではなくて、この人がうちの会社で笑っていられる姿を想像できるか、ということを企業側は真摯に考えてる、という面です。
【加藤】優秀でもフィットしないと思うよという人には、そういう話をする、ってことだよね。
【黒田】しますね。あ、あと、もう一つ大企業の良いところを思い出しましたので、言わせていただくと、良い意味で自分の希望してない仕事につけることというか、色々な仕事ができるのは良いことだと思っています。自分もサービス開発をやりたい人間で、ずっとやりたいやりたい言っているわけですけど、人事部というところにひょんなことでやってきて、やりたいことしかやっていなかったら、人事のことはきっとやってなかったし、やはりやってみて学びというかすごいストレッチされた感じはあります。
【加藤】発見もあるだろうしね。知らない知識を発見するだけじゃなくて、自分の感覚を見つけるというか。
【黒田】ソーシャルリクルーティングの話で呼んでいただいたのかも知れないですが、実は自分のメインミッションは若手の育成でして、先週も新人社員の研修をやっていて、どうしてもかっこつけるわけですが、かっこつけマンでいるっていうことがまたストレッチだったりするんですよね。自分も研修とか講義で寝てる側の人間だったりするんですが、そこを棚にあげておいて(笑)、今後彼らが職場に出て困らないためには、何をどう言えばどう伝わるのかなあ、みたいなことをずっと考える一週間でした。頭ごなしに叱られるのは自分も大嫌いなので、どう言えば納得して自分ごととして捉えてもらえるのかなあ、ということを考えられる良い経験だったなと思います。
【加藤】すごい大きな話をすると企業が若手を採用することの社会的正義って何かと言えば、若手の育成なんだよね。
【黒田】今の日本としてはそうですね。大企業は教育機関を兼ねてる気はしますよね。そこに携われるのはある意味、とても貴重な経験であるとともに責任重大だと感じています。
頂を目指すアプローチの多様性
【加藤】良くも悪くも僕とかは手取り足取りマンツーマンで教えてもらったこともあって今食えてるわけだけど、手取り足取り全員に教えられることはごくごく稀で、それは陶芸家のお弟子さんだってそうだし、それを一番スケールさせられるのが大企業ってことだと思うんだよね。雇用を支えるということだけじゃなく。日本人の22歳以降の学びをサポートするというか。
【黒田】若干、最初の話に戻るんですけど、その前提が崩れているのが海外採用の話だったりします。ビジネススキルを学ぶのは会社に入ってからで良いのですけど、それ以外の部分はすでに身につけておいてほしいと感じることが多いです。今までだったら入社5年でプロというか1人前になればよかったというスパンが本当に短くなっていて、5年が3年になり3年が2年になり。
【加藤】昔は10年勤め上げて1人前とか言ってたものね。
【黒田】そうですよね。そして、2年が1年になっていくような、そういう流れがあると思います。すでにある程度、大学で身につけていることを求めていると思います。それを象徴する例として、若手メンバーから話を聞いていて若干気になるのが、サービス開発をやりたいので、この部署に行って学んでからサービス開発をやろうと思います、という発言がちらちら出ることです。ただ、その部署に行ってから学ぶのではもう遅い訳です。やりたい気持ちが本当にあるならば、今自分で身につけておいて欲しくて、独学でも間違っててもいいから、学んでやれるようになりましたとか、やるための行動をしていますという行動をやはりしておいてほしいなあ、と思います。会社は確かに育成はするけれど、学校と勘違いされている感は否めないです。
【加藤】試験に受かれば椅子を用意されるのが就職、というのが前時代的な感覚なんだろうね。
【黒田】できるからやらせろ、ではなく、やりたいからそこで学ばせてもらってからやらせてくれ、ということが多いのに違和感を感じていて、自分はそういう感覚はなかったので、愕然としました。ショックというか。いつも言うのは、自分の成長の責任は自分にしかないので、自分の牙をとにかく研ぐ努力をしてくれ、というのは常日頃対面する若手には言ってます、偉そうで言ってて嫌になってきますが(苦笑)。
【加藤】それを言うのが仕事だからな。
【黒田】そうですね。先ほど色々な仕事ができるという話をしましたが、裏を返すと自分のやりたいこととアンマッチを起こすことはあります。今の私もそうだったりします(笑)ただ、それは会社側が成長するか活躍するかという観点でちゃんと見ていて、会社側でしっかり考えた上でやっていることなので、自分的にやりたいこととマッチしてなくても成長という観点ではマッチしていたりするので、そこで腐らずに、学ぶことはしっかり学んでほしいな、と思ってます。その上で、やりたいことに対して本当にあきらめられない程の情熱があるなら、その牙を研ぐことを同時並行で進めておいてほしいと思ってます。逆にそれがやれることが大企業の良いところだとも思うんですよね。自分のやりたくないことをやりながらその部分の弱点強化をしつつ、やりたいことは逆に今個人でもやれる世の中ですから、やっておけば自分の武器を持って弱点を埋めれている人材になるので、そういう人っていうのは強いし、私はすごく好きですね。
【黒田】自分も多分、そういう風に成長してきました。総務的な仕事をしながら、ビジネスモデルコンテストにプライベートで応募する、みたいなことはまさにそういうことでした。
【加藤】ちょっと先輩風を吹かすと、いくら会社だ、合理的なシステムだと言っても、黒田が作った育成プログラムで新しい何かを発見できたという人が何人か出てくるんだと思うんだよね。だから黒田がこれまで経験してきた感覚で、それをスケールする形でプログラムに落としていければ、何が正しいかというのはその人の立場によっても価値観によっても違うから。我々は若い人達を育てないと色々まずいので。
【黒田】そうですね。そういう意味では良い仕事につけさせてもらえたなと思います。
【加藤】良い年齢で良い仕事に回ったかも知れないね。
【黒田】本当にそう思います。元々、サービス開発やりたいやりたいって言ってるんですけど、その目的ってなんだろうと改めて考えると、結局多くの人を幸せにするというか、多くの人を良い歯車の方向に回したい、というのが根幹にあって、それを受けて自分が大学院を卒業した時の一番のCanはWEBとかインターネットの世界でサービスを出すことでした。なので、その思いを達成するのが一番良い方法はサービス開発だと思っていたんです。それもあり、最初に人事に異動になった時は、サービス開発じゃなくてもう嫌だなあ嫌だなあ、と悩んでたんですけど、WhyがずれてなければHow、Whatは人事のやり方で色々やれるなと気付きました。採用のソーシャルリクルーティングの活動を通して、私がやっていたことってUstreamによってゲストいうメディアを介しての啓蒙活動だった気がしていて、少しでも多くの人に良い影響を与えられたらいいなという活動だったと思います。今の新入社員200〜300人に対しても、彼らへのアプローチということも、少しでも多くの人を良い方向にするという意味では基本ぶれてないなということに気づけて、モチベーションがぐぐっとあがった、というのが正直なところです。そういう意味で、仕事が変わったとしても、「多くの人を良い歯車の方向に回したい」という山の頂は変わらずに登り続けられているかな、と最近感じながら仕事をしています。
【加藤】多分、山の頂を目指すのに、そこに何かがあったら、アプローチを変える、計画してたアプローチを変える、というのは全然あるべき姿で、それが隊列において旗を振っている役目なのか最後尾で殿をする役目なのかはわからないけど、やっぱり目指すべき頂がぶれてなければ、山を登り切れば良い人が育つというのは証明されているので。多分それが、採用活動、人材育成だけじゃなくて、僕らの仕事もそうだから、色々ぶれて良いと思うんだけど、頂と目定める部分だけはきちんと見据えて引き続き頑張ってください。本日はありがとうございました。
【黒田】こちらこそありがとうございました!
