小野 梨奈
2012.11.18
「働き方の未来予想図」
小野 梨奈 - Webプロデューサー / リズムーン主宰
ナンパされたシリーズ。今年に入って、Twitterで仕事のお声がけいただいたのが、フリーランス、Webプロデューサーの小野梨奈さん。とは言え、何となく僕も存じ上げていて、お話したところ、共通の友人の話にもなり、行けそうだなあと。今、僕の他の仲間とチームを組んで一つのプロジェクトにあたっているところです。
そんな小野さんは子育て中のお母さん。勿論、世の中に働く女性も、子育てしながら働く女性もいるんですが、どうやらちょっと違うらしい。打ち合わせしてても、お子さんのお迎えがあったりで、あまりプロジェクト以外の長話したこともなかったんですが、ようやくようやく取材の体を取って、ゆっくりお話しする機会が作れました。フリーランスであり、ワーキングマザーでもある、だけれども、それ以前に自分の働き方を自分で作ろうとして来た、そういう同時代人なんだなあと。そんな話。
フリーランスとワーキング・マザー
【加藤】小野さんとは独立ほぼ同期ですよね。
【小野】そうですね。2006年です。ただ独立というか成り行きなんですけど。それまでは、元々大好きだったサイトを運営している会社で働いてました。新卒で入った会社を一年で辞めて、アルバイトで入りました。手書きでお手紙を送ったんですよ。
【加藤】すごいですね。
【小野】そこでの仕事自体は、憧れの職場でしたし、すごい楽しかったですし、それこそ社会人としてのイロハを教えてもらったんですけど、収入的なこととか会社の人事制度とかで、そこでずっと続けていけるイメージがし辛くなって来て。
【加藤】続けていけるイメージって大事ですよね。
【小野】そうですよね。そういう時に、とりあえず、今の仕事は辞めよう、というところまで決めたんです。そもそもそのサイトが大好きだったから選んだ職場だったので、転職活動するにも他のメディアとか興味がわきづらい部分もありましたし、ただ、辞めることだけを決めて。
【加藤】それ一大決心ですよね。で、割とすぐお母さんにもなることになった。
【小野】そうです。退職の2日後に妊娠していたことがわかったんです。正直、どうしようかなあと。会社を離れる前には、周囲に退職することも、これからフリーランスとして働いていこうということも話していて、お仕事あれば宜しくお願いしますということも言っていて、本当にどうしようかなあという気持ちがまずあって。独立早々、「フリーランスになったけど、育休入ります」となったら、今後お仕事もらえなくなるかしらと思いましたし。で、働こうと決めて。
【加藤】どれくらい仕事されてたんですか。
【小野】出産前は臨月に入るまで仕事していました。体調もよく、あまりおなかも目立たなかったので、6ヶ月くらいまでは黙っていたような。っていうか、言えなかったという方があってるかなw。その後、子供が産まれて、1年くらいはお休みしようかとも思ったんですけど、せっかく自分で決めたことだし、まずは在宅でできるお仕事から始めて、8ヶ月ほど経ったら子供を保育園に預けることができたので、外に出る仕事もするようになりました。去年2人目を産んだんですが、そのときは、産後のくらしがなんとなくわかっていることもあって、産後1ヶ月くらいからはボチボチ家でできる仕事は始めてましたね。
【加藤】すごいですね。そんな話聞いたことないですもん。まあでも、子供を産む、ということと、独立してフリーランスになるということと、ある意味、一緒に来たからこそのモチベーション、みたいなのがあったのかも知れないですね。
【小野】そうかも知れないですね。
【加藤】あと小野さんのお仕事が割とポータブルなスキルと、ヒューマンスキルみたいなものと両方あったのが良かったかも知れないですね。お客さんに会いに行く仕事も、そうじゃない仕事もあった。
【小野】そうですね。元々、取材に行って記事を書いたり、キャンペーンなんかの1ページものの制作のお仕事が最初は多かったんですけど、徐々に仕事の内容も変わってきて。サイト運営の業務委託なんかもやりましたし、今はWebサイト全体のプロデュースが多いですね。割とそういう意味ではメインの業務は状況に応じて変わってきていると思います。あと中には、やっぱり子育てと両立がし辛いタイプのお仕事とかもありますよね。そういうお仕事は自然となくなっていったかも。
【加藤】そういう状況に応じた変化みたいなの大事ですよね。常に新しいことを勉強していかなきゃいけなということもありますが。
【小野】そうですね。でも新しいことには常に挑戦していきたいと思っているんです。自分の付加価値を作っていかないといけないと思うんですよね。専門を深めるのも大事だけれども、Webプロデュースということだけをずっと深掘りしていくだけじゃなくて、新しいことを覚えて、自分の得意分野を徐々に広げていくような。
【加藤】そうすると、仕事との接点も増えますよね。私はこれ専門ですというより。
【小野】そうですね。昔は、なにかに特化しなければと焦っていた頃もありましたが、最近はあまりそう思わなくなりました。前に10年20年フリーランスを続けてらっしゃる方と話ししたんですけど、ずっと同じことをやっているとやっぱり飽きてくるんですって。私もやっぱりずっと同じことをやり続けるのは、性格的にもできなそうなのでw、新しい挑戦をどんどんしていきたいと思っています。
フリーランスで働く女性のためのサイト、リズムーン
【加藤】そういう意味ではリズムーンは自分でメディアを立ち上げるという意味でも、新しい大きな挑戦だったはずですよね。独立して何年目に立ち上げたんでしたっけ。
【小野】2009年だから独立して3年目です。それから続いているので、リズムーン自体が3年目です。
【加藤】やっぱり自分でメディアを立ち上げるって大変ですよね。自分でブログやるというのとも違う。あ、でもやはり最初は独りでやっておられたんですか。
【小野】そうですね。最初はインタビューのみのサイトで、一人で記事を書いていました。1ヶ月に1人、とも思っていたんですが、100人インタビューするには10年かかっちゃうなとw。それじゃのんびりし過ぎだから、月に2人にインタビューして、その頃から月のリズムを意識して生活していたので、満月と新月を更新日にしようと。だから、サイトの名前も「リズムーン」ていうんです。毎週インタビューがあって、記事起こしがあってって感じでした。
【加藤】ET Luv.Lab.、10年で100人が目標なんですよねw。僕のんびりなので。でもすごいですよね、そういうことをやりながら通常の業務もやりながら。
【小野】最初は読まれているかどうか不安だったんです。だけど、半年くらい経ってからメールが届き始めて。
【加藤】読者からのお便りというやつですね。
【小野】そうですそうです。それで色々交流が始まったり。オフ会をしたり。先週もオフ会があったんですよ。
【加藤】ああ、大阪行かれてましたよね。
【小野】そうなんです。関西方面で活動されているフリーランサーで面識ある方がいなくて。何人かと連絡を取り合ったことはあったんですが。だからちょっとびくびくしながら、でもなんだか勢いで企画しちゃって、行って来ました。ただ少し話始めるとすぐに盛り上がってしまって。
【加藤】そういうところに来られる方は、フリーランスの方が多いんですか?それとも、会社で働かれていて、これからフリーランスを目指そうとされている方?
【小野】フリーランスの方が多いです。ただ、そういうことに興味がある方や、検討されてる方も来られます。楽しいんですよ、オフ会。
【加藤】だってオフ会の話始まってから楽しそうですもん。
【小野】そうですかw。
【加藤】なんかやっぱり問題意識を共有できると、それがフックになって仲間意識じゃないけれど、打ち解けるきっかけになりそうですよね、良いことも悪いことも含めて。
【小野】そうなんですよ。やっぱりフリーランスって良いことだけじゃないじゃないですか。色々不便なこともある。だけれども、そういうことも含めて、リズムーンではきちんと伝えていきたいなと思っています。
【加藤】リズムーン自体はやはり独立した頃に誰か相談相手になるフリーランスが周囲に見当たらなかったっていう話が発端だったんですかね。
【小野】元の職場でフリーランスの方とのお付き合いはたくさんあったんです。ライターさん、カメラマンさん、デザイナーさんなどなど。ただ、身近に仕事のこともプライベートのことも含めてご相談できる相手がいなかったというのは確かで。
【小野】それから本当恥ずかしい話ですが、請求書の書き方とか、それこそ仕事の報酬のお振込みが翌々月末、なんてことも初めて知って。
【加藤】聞いてないよ、ってやつですよね。
【小野】そうだったんです。だからそういう横の繋がりでお互いに相談できる関係性ができると良いな、というのはリズムーンが目指すところの一つです。
【加藤】すごくコンテンツにもバラエティありますよね。
【小野】保険のこととか税金のこととか、これからフリーランスを目指す方向けのコンテンツなど、なるべくフリーランスという働き方の魅力や、デメリットをみなさんがどう工夫して乗り越えているのかといったことが伝わりやすいように、って思ってます。
【加藤】インタビューもすごいですよね。なんか僕、情熱大陸とかプロフェッショナルとか良いし、すごいと思うんだけど、じゃあ仕事楽しんでる人がそういうすごい人達だけかって言うと、決してそんなことはないと思っていて、だから、仕事を楽しんでいる人をきちんとパッケージしてあげれば、もっと仕事ってものを身近に感じながら読んでもらえるんじゃないかなと思います。
【小野】そうですね。リズムーンでは、著名な方に取材を依頼してというよりは、もっと身近な存在で「ちょっと頑張ったら私もできるかも」と思ってもらえるような、自分らしい仕事のイメージを持ってもらえるような方にインタビューしたいと思っています。だから、メディアに出ている方、というよりは、自分流の働き方をつくりだされている女性で、知人やインタビューした方に紹介いだいて、という感じで続いてきてます。
【加藤】ET Luv.Lab.そういう意味ではわかりやすくて、小野さん主婦だし違いますけど、基本は僕の飲み仲間ですw。
【小野】ははは。それは是非飲みましょう。私もお酒好きなので。
【加藤】是非是非。
働くことのこれから
【加藤】ところで少し大きな話になると、フリーランスとワーキングマザーのこれからってどうなって行ったら良いと思いますか。僕自身、それこそFacebookで高校や大学の同級生とかが子供産んで仕事に戻って、みたいなのを見ていると、少なからず思うことあって。
【小野】フリーランスは働き方の選択肢の一つでしかなくて、決して万人におすすめしたいというわけではないのですが、フレキシビリティが高い働き方なので、ライフイベントの影響を受けやすい女性とすごく相性のよい働き方だと思っています。そういう意味では、フリーランスという働き方をもっと積極的に選べる制度とか社会になれば良いなと思いますし、働き方の選択肢の中にしっかりフリーランスというのが入って来るようになってくれば良いと思っています。私自身、元々女性が社会に出て働くことに興味がありましたし、結婚して、子供を産んで、でも仕事をしたいという女性がもっと増えて良いと思っています。そういった女性の働き方の選択肢を広げたり、フリーランスとして働くことのイメージを持ちやすくできればよいなと、そういうことを、大きなことは言えないけれども、リズムーンを通しても少しずつ実現していけたらいいなと思っています。
【加藤】昔よく友達と話していたんですけど、後輩に薦められない仕事をしている、ということを言っていて、勿論フリーランスは楽しいと思っているし、良いんだけど、それを学校を卒業した後輩に第一候補として僕が薦められるかというと、できないね、と話していたんです。僕としても、20代はそれでも良かったんですけど、30歳超えて、そうも言ってられなくなって来たなという感じがしています。
【小野】そうですね。今の社会制度では、会社員とフリーランスを比較したら、圧倒的に会社員の方が待遇がいいですもん。とくに私は、二人目の保育園入園のタイミングでとても悔しい思いをしました。話すと長くなるので割愛しますけど…。立場によって待遇が違うというのがなくならないと、心の底から「フリーランス、っていいですよ」っておすすめできない部分はありますよね。そういう社会のインフラ整備へのアクションもリズムーンをとおしてやっていきたいと思ってます。
【加藤】ところで小野さん、自分の後進を育てることについてはどう思ってますか。
【小野】うーん、正直あまりイメージできないというか。もちろん、そういう機会があるのであれば、そういうこともやっていきたいと思っていますけど、今はまだという気持ちもあります。逆に、リズムーンでは、プロの方もセミプロの方にもお手伝いいただいているんですが、リズムーンでの活動を、その方の実績としてどんどん使っていただきたいと思っています。品質にはこだわっているので、なかなか簡単にはいかないですけど。部下を持って、みたいなイメージはあまり。
【加藤】小野さんずっとプレイヤーやりたそうですよね。
【小野】うん、そうですね。勿論、私チームで仕事するのが大好きなので、皆さんにどういう風にお仕事していただくかみたいなことは大事にしたいと思っていますけど、マネージャーというよりは、そういうチーム作りをしたいですね。
【小野】逆に加藤さんはどう思ってらっしゃるんですか?
【加藤】僕は育てなくて良いと思っています。というか楽しいことを一緒にやれば良いと思っていて、僕のクローンみたいな人を育てることにあまり意味はないと思うし、逆に僕の一つ一つの職能を取ったら、もっとちゃんと専門家がいますし。ただ仕事の作り方とか進め方とかは経験して学んでもらえば良いと思っていて、なかなかクライアントワークをいきなりというのは難しいですけど。今そういうことも少しずつ試しています。
【小野】内部プロジェクトみたいな。
【加藤】ないし、超外部プロジェクトですねw。
【小野】もう一つ、加藤さんに聞きたいことがあって、フリーランスになる前に一度就職するべきかどうかって話なんですけど、加藤さんは就職されなかったっておっしゃってたじゃないですか。
【加藤】うん、就職するかどうかは別として、本気で仕事をする前に、仕事は経験しておいた方が良いです。最初から生活全てがかかった状態で、初めての仕事で、フリーランスはきついと思っていて、もしそうしたいんだったら、例えば親に食べさせてもらっている学生の間に、一般社会人が経験するレベルでの仕事というものを経験する機会を、無理にでも作った方が良い。
【小野】加藤さんの場合それが学生時代の仕事ということですね。
【加藤】そうですね。
【小野】元々加藤さんにTwitterでお声がけしたのも、Webサイトの実績とかも勿論見ましたけど、むしろTwitterとか普段書いてらっしゃることとか読んで、この人と一度仕事してみたいなと思ったからなんです。
【加藤】ありがとうございます。多分、小野さんとは働き方に関することとか、仕事に関することとか、勿論、立場も経緯も違うんだけれども、同じ未来図を描いている気がしていて、だからこれからも長くお仕事できると良いなと思っています。
【小野】そうですね。宜しくお願いします。
【加藤】そのためにもまずは今抱えているプロジェクトしっかりローンチして、皆でお疲れ様会しないとですね。
【小野】そうですね、皆で飲みましょう。
【加藤】楽しんでいきたいですね。今後とも宜しくお願いします。

小野 梨奈(オノリナ)
1977年、北海道函館市生まれ。働く女性のためのWebメディア「cafeglobe.com」を経て、2006年に独立。Webプロモーションまでを含めたWebサイト・Webコンテンツの企画・制作を中心に行っている。最も関心のある活動テーマは、一人一人が望む多様な働き方、生き方を平等に選び、実現できる世の中にするために必要なことは何かを考え、行動していくこと。その活動のひとつとして、2009年に「Rhythmoon」を立ち上げ、フリーランスという働き方に関する情報を女性目線で発信している。プライベートでは、夫、子2人の4人家族。現在、国内外に限らず、どこにいても仕事ができるワークスタイルを目指して自らも模索中。