古山 隆幸
2013.04.01
「復興のカリキュラム」
古山 隆幸 - 石巻2.0理事 イトナブ代表
古山隆幸さんとは年次がほぼ一緒で、学生時代からWEBの仕事をしていたことも共通で、昨夏、石巻2.0の小泉瑛一君に紹介してもらって以来、UX X Talkというハングアウトイベントを石巻工業高校の生徒さん向けに企画したり、ETの制作の仕事のアウトソース先としてご助力いただいたり、あと普通に「楽しいですねー」と言いながら遊んでもらったり、僕が石巻に行ったり、石巻で何かするにあたって、もっともお世話になっている人の一人です。
2月の頭の石巻行きで、インタビューさせていただくお願いをして、幸運なことに3月末、東北に行く仕事があったので、僕は石巻に留まって、古山さんにイトナブで(やはりイトナブでインタビューしたいじゃないですか)お話をうかがうことができました。古山さんがイトナブで見据えるマイルストン、そして、その更に先にあるもの、僕の周囲にもきちんと伝えておきたいプロジェクトです。
第2回 ISHINOMAKI IT BOOT CAMP
【加藤】せっかくなので、昨日の話からうかがいたいんですけど、第2回 ISHINOMAKI IT BOOT CAMPということだったんですが、あれは元々どういう経緯で始められたんですか?
【古山】第1回のIT BOOT CAMPは去年の夏、3日間行ったんですよ。一番最初の話をすると、石巻ハッカソンというハッカソンイベントをしたいという時に、自分の繋がりで色々話をしてたんですね。そうしたら、それもいいけど、石巻工業高校に行くのであれば、高校生たちにアプリ開発、ハッカソンイベントとは別に、教えるような講習会をしたら面白いんじゃないという話になって。でも、アプリ開発でJavaを教えるの3日間じゃできないよね、というところで、ちょうど良い開発キットがある。Corona SDKという開発キットがある、というのを聞いたんですよ。サンフランシスコのベンチャー企業が作ったSDKなんですけど、それを日本で流行らせようとしているエヴァンジェリストの山本さんという方がいて、その人を紹介してもらったというか、連れてきてもらったんです。Coronaがあるから、それを3日間でやろうというのがきっかけで、学生たちに3日間のIT BOOT CAMPを去年の夏に開催しました。
【古山】IT BOOT CAMPがきっかけで、学生たちって本格的にアプリ開発を始めて、Corona SDKって素晴らしすぎると。1日ないし数時間でアプリを実機転送までできて、サンプルのアプリでも「おお、俺が作ったアプリだ、音が出る!」というのを体験できる。太鼓アプリを作ったりとか、Angry Birdみたいなものもできちゃんですね。そういう自分達が作ったものを、実機で動かせるのがすごい!、というのがスタートでそこから学生たちが独自で自分達で学習して開発が始まっていったんですよ。
【加藤】最初のエンジンに着火するところというか、きっかけ作りというところで、IT BOOT CAMPが始まったんですね。ちなみに、BOOT CAMPというと朝から夜までぶっ続けに近い感じですか?
【古山】そうですね、朝は9時から、夕方18時まで。
【加藤】なんか子供の頃の塾の夏期講習みたいな。
【古山】うんうん、そんな感じです。
【加藤】でも、お休み中にやるわけですよね、BOOT CAMP自体は。
【古山】はい。ちょうど春休みだったんで、その期間中にやってました。第一回目にCorona SDKのエヴァンジェリストの山本さんだったり、Googleの及川さんとか、セカイカメラをやっておられた高橋さん、後は小野さんという同じCoronaの回の方がいたりだとか、後は佐々木さんという会津のG Crewの会社さんや仙台の原さんなど、錚々たるメンバーがいらしてくださいました。そんなメンバーが学生達に教える、開発者の中でも先を行って、面白いことをやっている人達が、しっかり学生たちに教えるという場作りが大切で、ちょっとできるからその人が教える、ではなくて。
【加藤】トップランナーというか。
【古山】そうなんですよ。そういう人に子供達が触発されちゃう。それで一回目が終わって、その間にもJavaの開発イベントやったりしてたのですけど、そろそろもう一回Coronaでやりたいね、という話から、先日の3月25日、26日、石巻工業高校を借りて、第二回を行いました。去年は10人の参加でしたけど、今年は18人ですからね。増えました。あと中学生も3人参加しました。今度、石巻工業高校に進学する子と、偶然自分が出会って、もしやるんだったら来ないかい、という軽いアプローチをしたら、是非行きますということになって3人来てくれたんです。
【加藤】本当にモチベーションが高いですよね。勿論、人によりけりなんだと思うけど、モチベーションが高い子たちが、ちゃんと受けれるプログラムがあるとか、場があるとかってすごい大事ですよね。
【古山】本当そうですよね。多分、何かを欲してるんですよ、若者は。良くも悪くも石巻はそんなに遊ぶ場所が少なくて、都内だったらいっぱい面白いことあるじゃないですか。なのに、こちらだと遊ぶものとか少ない中で、Coronaとかアプリ開発はおもちゃの一つなのかなと。ちょっと難しいかも知れないですけど、それができれば、だって、自分がおもちゃを作るとこもできるおもちゃ、ですからね。
【加藤】そうですよね。
【古山】だからこそ、その子たち、一回のめり込むとどっぷり浸かる、というのがあるのかなあと思います。
【加藤】前に聞いた話で、子供向けに作ったものは子供は楽しくない、っていう話があって、大人向けに作ったもので子供も使えるよね、という辺りが一番楽しい。それこそ赤ちゃんにiPad渡すのとかもそうだと思うんですけど。
イトナブの仕事の作り方
【加藤】知り合いに「高校生がスマホのアプリ開発をしている」というと、実はまだそこが東京や神奈川の人に言っても驚かれるところで、イトナブって都心に行けばあるものが石巻にもある、って話ではないと思っていて、改めてイトナブの説明をしていただきたいんですけど。
【古山】そうですね。イトナブは一番最初立ち上げのきっかけとしては、この被災地、石巻という街に震災後もそうですけど、震災前から産業が少ない街というところがあって、自分自身も石巻高校の時に、本当にこのまま就職しても良いのか、この仕事がしたい、というのがなかったんですね。でも、大体の人はそれで就職してしまうじゃないですか。自分の場合はもやもやしていたところがあって、親のすねをかじってもう4年間、大学に行こうとなったのがきっかけで、WEB系の会社を作って、去年の6月までやっていました。やはり震災前から、震災後もそうなんですけど、ISHINOMAKI 2.0で活動してて、どんどんどんどん街を新しくしていこうという時に、産業を作っていかないと、新しい街の中に産業ないと、人はやっぱり流出していく。
【加藤】回せる仕事がある、ってことですよね。
【古山】特に若い子が残れるような産業を作ることが大切だと考えた時に、自分のやってるITというのはそこに近いことなのかなと。大げさな話、自分も大学で会社作ってやっていたくらいなので、仕事のあるなしに関わらず、どこでも仕事ができる。だから石巻に根付くこともできるんだな、というところでイトナブという、石巻に開発拠点を立ち上げようというのが始まりです。
【古山】最初の目論見として、東京などの受託案件、まずは受託でどんどんどんどん仕事を持って来て、それで雇用促進しながら仕事を回していこうという話で進めていたんです。ただ思いの外、石巻にはデザイナーやエンジニアが少なくて。これはイトナブの事務所を石巻に置いたとしても、結局自分が作業するだけで終わっちゃうなみたいな。それだとただ事務所を置いて一人の人間が仕事するだけで、これって街のためというか、ためになっているのかわからなくなってる時に、じゃあ教育をしていって、石巻に自分が仕事を持って来なくても、他から誰かが持って来た仕事を受ける。そういうようなスキームを作っていくと、面白いんじゃないかと思った時に、教育をするのであれば、大人や自分たちと同じ年代だったら、すぐ仕事になって、2〜3年後にはそういう人達が自立できるかも知れないなと思ったんですけど、若者に教えるという方法が良いのかなと・ITを仕事という観点ではなくて、遊びという観点から教えたいなと思ったんですよ。仕事って面白いから伸びると思うんです。やらなければいけないから伸びる。そういうのを学生のうちから今回のアプリ開発はおもちゃ、遊びとして学んでもらって、面白いから続けていきたい、という流れになれば、石巻に事務所を置いて、若者たちが世界に発信できるようなサービス、コンテンツを生み出していければ、若者が自ずと残るようになるかなと思うんです。
【加藤】やはり唐突に結論を出さないといけない状況になってしまうと、皆じゃあ安牌というか、保守的なところに選択肢が行くと思うんですけど、早い段階から助走距離を取って、その間に、インターンじゃないですけど、助走を取って準備していられれば、もうちょっと幅広く選択肢持てるから、結果、石巻に自分の仕事を作るという選択肢のウエイトも大きくなるかも知れないですよね。
【古山】アプリ開発をメインで教えているんですけど、それって教えていて皆にアプリ開発者になってもらいたいわけじゃなくて、例えばそれが合わない子もいると思うんですよ。じゃあその子には違うきっかけの「種」を渡して、それを育ててもらう。だからこそ、自分はアプリとかITとか、正直なところITにこだわってもないんです。学生たち、若者が、もっと色々なことができる。石巻でも色々なことができるんだ、ということをどんどん紹介していきたいんですよね。街づくりとか、石巻の復興とか言ったら変なんですけど、次の街を作っていくのは、自分たちじゃなくて若者だと思うんです。自分たちはそのための土台を作る、自分たちは目立たなくて良いと思うんです。自分たちは土台で、土とか、石ころでよくて、種を育てるのは若者たち。その若者たちが大人になっていくと、それが土になって、今度はその上にまた木が育ってって続いていくと、良い階層になると思うんです。そういうような気持ちでいつもやってもらいたいというか、教わると教えたくなるんですよね。
【加藤】わかります。わかります。
【古山】よく東京の会社の人とかがセミナーとか行くじゃないですか。セミナーで学んだことを、自分の仕事にしようとして行くじゃないですか。そうじゃなくて、純粋に面白いことを教えてもらったから、「これ面白いから友達に教えよう」、そこなんですよね。
【加藤】そうですよね。それが本当にソーシャルメディアとかで情報に関して行われていることだし、古山さんにも経験してもらいましたけど、ヘンプ編むのとか簡単だから、人にちょっと材料あったら教えようかなあとか。でも、そのテンションなんだと思うんですよ、今の話って。
【古山】そうなんですよ。めっちゃそうですよね、本当に。最近思うのは、イトナブで学生たちにIT教育をしてるとかじゃなくて、実際実は自分は学生たちから教えてもらっていることが実に多くて、かっこよく言うと、忘れてたもの、純粋さとか、さっきも冗談みたいなアプリ見せましたけど、良い意味で馬鹿なんですよ。それを純粋にできちゃう。
【加藤】そうですよね。それを楽しんでいるということですよね。
【古山】そうなんです、それを楽しんでいる。その気持ちって多分自分たちにも昔あったんですよ。それをやっぱり年を重ねるごとに、関係構築だったりとか、周囲の目だったりとかいうところで忘れかけてた。素直にこれが欲しい、やりたい、と思うと走るんですよね。自分たちはこれが欲しいけど、これがあるから、これがあるから、って余計なこと考えちゃいますけど、だから学生たちと触れ合って忘れないようにしていたい、というのがあるのかなって最近思います。学生たちと触れ合っててリアルにそこが素晴らしいなと。
【加藤】なんかやっぱり教育ってそうなのかも知れなくて、人を育てるのとか難しいし、一人の人が一人の人を育てるのとか無理があるけど、なんか中立な立場の人間が、「機会」を作ることはできるじゃないですか。その過程で人が育っていくと良いんだろうし、イトナブの場合は、BOOT CAMPやった後に、例えば東北テック道場みたいに、継続的に通ってフォローして場を作っていくということが機能しているので、そっちも面白いと思いますよね。
【古山】イトナブとしては教育は商売にしたくなくて、正直なところ、本当にコアなメンバーだけ参加してくれれば良いんです。その子達に1年間か2年間、ガッツりやってもらって、すごいエンジニア、面白いエンジニアになれば良いと思うんです。皆にITってこんなもんですよ、と教えて、皆が走れるかというと、多分走らないと思います。だからこそ絞った子たちを、1年間なら1年間、10人をどっぷり教えちゃう、教えちゃうというのでもなくて、一緒に活動する。その子たちの中でも3人か4人、本気でやっていこうという子達が、次に違う子達を集めてやっていくと、最終的に良い広がりになると思うんですよ。自分が常に言ってるのは、10年後、よく10年後なんか待ってられないよ、とかって言いますけど、10年後のIT産業を作る。産業を作るって簡単ではないですし、2〜3年じゃできないと思うんです。だから学生達に自分達が紹介した種を育ててもらう。そういうようなところで、最終的にその子達が戻って来てくれて、そのためには自分は惜しみなく色々なコンテンツ、こんなのもあるこんなのもあるこんなのあると紹介して、好きじゃなかったらいいけど、好きだったらどっぷり来てもらう。色々な種を紹介した中から、自分が選んだ種を育てってもらいたい、という感じですかね。
【加藤】産業ということだと、ちょっと古い時代だと、地方に産業というと、工業誘致して、東京の企業を持って来て、だったと思うんですけど、やっぱり今古山さんがしている話っていうのは、産業をどこかから持って来て石巻の人に働いてもらうというよりも、ここから産業を作っていくという話だと思うので、それは大事なことなんだろうし、時間がかかるんだろうし、という感じはしますよね。
【古山】そうですね。でも、加藤さんもわかると思うんですけど、ITってすごい可能性があるじゃないですか。
【加藤】ありますよね。
【古山】ですよね。なんかこう、パッとしたヒラメキを、すぐサービスにしてみて、この間もFacebookでつぶやいてたんですけど、地方の人が東京に出る。もうそんな時代じゃないと思うんですよ。東京に出てどうするんだよ、海外に出ろと。もし出るんだったら。だから、よく石巻でも一度は東京に行かなきゃというんですけど、東京に行っても変わらない。東京に行くんだったら、もっと大きい世界を見て、挫折して戻って来ても良いですし、成功して戻って来ても良いですし、多分、世界でチャレンジした事ってすごい大きいと思うんですよ。それで戻って来て、また新しい、そこで培った技術を持って、石巻に根ざしてやるとか、世界でこんなことできるなら、石巻でだってできるじゃんと思えて欲しい。場所って「日本」だと思うんですよね。自分達は「石巻」にいるんじゃなくて「日本」にいる。自分も英語もできないですし、IT業界でもまだまだ若いですけど、地球規模でクライアントがいるしターゲットがいるものなので、場所を問わずサービスを作っていける、そういう可能性は本当に秘めていて、地方都市でもできる。地方都市だからこそやっていった方がいいんじゃないかなと思っていて。
【加藤】僕思ったんですけど、仕事を楽しめるようにするとか、仕事を楽しめるようになる、という時に、それは東京でも地方でも変わらないと思うんですけど、同じ場所にいると身が重くなって動きが悪くなるというか。多分人が身軽でいるためには、自分が今持っている仕事が楽しいという状態を常に維持してないと、ずーっと同じ場所に紐づいちゃんですよね。都会に紐づいていればそれで良いか、ということでもないし、地方に紐づいてればそれで良いか、というわけでもないから、もっとどんどん、仕事を楽しみながら身軽にどこでも動き回れるようになれば良いですよね。地理的なことだけじゃなく。
【古山】そうですよね。昨日も山本さんと飲んで話していて。ベンチャー企業を作ろうと。学生のうちに作るからこそリスクがないと。
【加藤】なるほどね。潰しが効くというかね。
【古山】会社を作ることが目的ではないですけど、そういうようなサービスを作っていこう。大げさな話、高校ベンチャーを石巻に、なんで石巻には高校ベンチャー3つもあるのみたいにしたいです。今、構想としては学校ごとに1ベンチャーみたいにして、ITじゃなくても良いのですけど、自分の構想ではアプリ開発の会社が石巻の色々な高校にできて、年に一回は石巻アプリコンテストをするみたいな。
【加藤】いいですね。
【古山】「なんで石巻って学生のアプリ開発者こんなにいるの?」というようなことになっていくと面白くなるかなと思っていて。
イトナ部という部活
【加藤】こないだ島根の方とお話をしたんですけど、島根ってRubyが生まれた場所ってことになってるじゃないですか。島根にITが根付くかということをやっておられた方が、やっぱり一番難しいのは、教育のところに、どうやって落としていくかって部分だとおっしゃってたんですけど、古山さんやってるように、教育の方から最初に始めて行かないと、いくら落とそうと思っても落とせるもんじゃないのかなという感じがしました。
【古山】ああ、そうかも知れないですね。今ちょうど良い感じで、石巻工業高校と一緒にできた、というのがイトナブの大きな起爆剤になったというか、イトナブが工業高校生とうまくできていなかったら、もっとちまちまちまちまやってたと思います。今も鈍行の電車を後ろから頑張って押している感じではあるんですけど。その出会い、阿部先生とか啓先生が柔軟に対応してくれたのもそうですし、圭先生は今年4月からアンデックスさんという会社に1年間研修に行くんです。
【加藤】ああ、そうなんですか!
【古山】そうなんですよ。「もっとやっぱり学ばないと、学生に教えられない」と。今後はやっぱり自分が毎回行くことはできるんですけど、学校の先生がいて、そこで教えられる人がいないと、学生も伸びが悪いだろう、というところで啓先生から良い会社ないですかと相談があって、アンデックスさんという仙台でアプリやWEB系の開発している会社、仙台市とかとも面白いことをやっている会社にうまく話が繋げられて、4月から1年間開発の修行に行きます。そうやって色々な人のサポートを受けてるというのは本当にありがたいですね。
【加藤】僕個人としても古山さんと知り合ってから、なんか具体的に石巻に対してできるかなと頭を使えるようになったというか、多分イトナブのやっていることが一番手伝いやすい気がしたんですね、僕の分野では。勿論、ISHINOMAKI 2.0として色々やっておられますけど。その辺も面白かったし、先々月来た時も、迫田大地さんも児玉哲彦さんも高校生に会えたから、手応えを感じていたみたいだし、ああいうのも逆に言うと、高校生にとっては今までデザインの話をあまり聞いていなかったから、UI / UXの話を聞く良い機会だったんだろうし、迫田さん児玉さんに取っては、石巻に来るってこと自体も機会だったと思うし、後はやっぱり高校生に自分達がUI / UXを教えることの手応えを感じる機会だったと思っていて、なんか機会作りまくればいいんじゃないですかねw。
【古山】そうですよね。本当にそうなんですよね。高校生が色々な大人と出会う、というのが楽しいんですよね。大人も大人で、色々楽しかったし、勉強になったと言ってもらえると嬉しくて、本当に今、「教えるんだ!」「俺が教えてやる!」みたいな人は来ないんですよ。教えに来たんですけど、色々なものを一緒におみやげでもらえた、って言ってくれるとすごい嬉しくて。もっともっと、学生と大人を繋ぎあわせて、高校生にとっては色々な人と出会って、それが最終的にこの人と何かやりたいなとなったら、Facebookっていう良いものがあるじゃないですか。なかなかやっぱりまだ内気というか、自分はよく迫田さんにもちょくちょく連絡取ってる?取れ!取れ!取れ!って言ってるんですけど。
【加藤】ははは!そうかそうか。
【古山】いいんだよ、がめつく行け、みたいな。出会ったが最後だー、って。
【加藤】いや、それ大事ですよね。こないだご飯食べた時も、最初の方、気恥ずかしそうにしてたけど、実際にエンジニアリングとかデザインの話になると、食いつきがすごい良いじゃないですか。やっぱり、自分の好きなことに関しては、ちゃんと情報もらいたいし、まあザッカーバーグとかいますけど、ある種、昔よりロールモデルがわかりにくくなっているというか、業界のヒーローみたいなのって高校生がそんなにたくさん知ってると思えないんですけど、でも実際にはトップデザイナーとかトップエンジニアとか、トップって世の中的に騒がれてなくても、できる人達って世の中にいっぱいいて、そういう人がこういうところに来て、高校生たちが「この人すげえや」って思ったら、その人がロールモデルになりますよね。そういう仕組みがここで作れていけば良いですよね。
【古山】良いですよね。本当に良いですよね。自分も学生とかに頼られると嬉しいじゃないですか。絶対、だからこそがめつく行けとか、出会ったら最後じゃないですけど、食らいついていけ、と言ってます。遠慮してたら進まないし、嫌だったら嫌で離れていくから、楽しんで行けと。
【加藤】その話が古山さんと僕で通じるのって、運動やってたからだと思うんですよ。
【古山】ははは。ああ、そうかも知れないですね。
【加藤】僕が中学生の時に、当時、大学から来ていたバスケ部のコーチがいて、付属の中学だったんで、大学の選手が自分はコーチの方をやるということで、教えてくれるんですけど、「上から受けた恩は上に返せると思うな、下に返せ」って話をされて、それは今でも僕の仕事の基本的なスタンスなんですけど、別に上の人の面倒は全然見ませんとかじゃないですけど、上にはやっぱりがめつく行って、そのかわり、自分の年下というか、後から来る人たちのためにはきちんとしたことをやろうと思うし、もらいっぱなしじゃ逆に高校生だって気持ちが悪いと思うけど、自分達に続く後輩達に続けていければ良いですね。
【古山】そうですね。そうかそうか、そうかも知れないです。すごい今、運動部というキーワードが。
【加藤】イトナ部だしね。
【古山】ああそうだー!そうですね!イトナ部だ!これあの、イトナブの名前の由来の一つにしておきます、後付けでw。
【加藤】足しておいてください!w
【古山】部活動的な勢いです、という。いいなあ今の。すごい共感できる、それ。
新しい年度を迎える
【加藤】良かった良かった。でもあの、古山さんのインタビューなんでw、イトナブの話に戻ると、ここから先どういう風に持って行こうと計画されてますか。特に今、年度の切り替え時期じゃないですか。
【古山】今年は、今年度は石巻工業高校と活動したという年間の事例ができたので、たかだか夏から本格的にやって8ヶ月くらいで、皆がこんなに成長して開発できるようになったんだという感動は覚えていて、だったら4月から、来季ですね、もっとスケジューリングして、そこでどう教えるか。もっと細かくIT BOOT CAMPみたいに講師を呼んで、2ヶ月に1回やっていこうと話していたんですけど、それをどんどん細かくやりながら、石巻工業高校もそうですが、今年はもう一校増やしたいなと。石巻高校であったりとか、石巻商業高校であったりとか、学生の幅というか、学生を教える場所を今年はもう少し広げたいなと思ってます。さっきも言った目論見としては、来年の3月か2月に石巻のアプリコンテストができるくらい、他の学校と連携ができるくらい、今年持って行きたいなと思ってますね。
【古山】そこが根付くと、石巻工業高校だけでも良いんですけど、今使っているCorona SDKというのは、学生達でも教えられるようになるので、こないだのIT BOOT CAMPも講師は中塩君という高校生が講師なんですよ。サポートでエヴァンジェリストの山本さんがいるという形。ちょっと本当にわからないというところだけ、山本さんがやって、基本的に中潮がここはこうだよ、と教えたりとか。それで良いんですよ。
【加藤】それこそ先輩が後輩に教えているという図式ですよね。
【古山】そうなんですよ。1年間やって、それができるということがわかったので、次は最初からCoronaで教えていって、石巻では高校生がほぼほぼアプリ作れるみたいな、というのがどんどん植えついて、そうしたら高校に入り前に覚えたいなという中学生が出てくると思うんですね。そうしたら中学校に教えに行ったりとか。自分は大人に教える気はないというか、大人は自分で学べと。
【加藤】大人用はプログラムもあるしね。
【古山】パソコンもあるし、ネットもあるし、Google先生もいるから、自分で学べと。高校生にはその辺をきちんとサポートしてあげる。やっぱり、環境がなかったりするじゃないですか。親がパソコン買ってくれない、とか。そこは全面的にイトナブがサポートしたい。そうやって進んでいって、色々な人にきっかけの種を渡してあげたい、っていう活動を来年度はやっていこうというところですね。
【加藤】最終的には地方でそういうことができてないところって色々あるんだろうし、それはISHINOMAKI 2.0がやってること全てに関してそうだと思うんですけど、多分、石巻でうまくできなかったら、地方のこれからのプログラムって、綺麗なことを言えても、実効力を発揮していけない、と僕は思っていて、帯びている使命はすごい大きい気がするんで。
【古山】そうですね。でも楽しく。
【加藤】そうです!本当そうしないと続いていきませんから。
【古山】基本、楽しくじゃないと。
【加藤】そうっすそうっす。じゃないと、なんで俺が石巻来てるんだ、って話だし。
【古山】楽しいからですよね。
【加藤】そうそう。それ以上のことないですからね。なので、こっちでも東京でもこれからもお世話になると思いますけど。
【古山】逆にこちらが色々お世話になりっぱなしで。
【加藤】今後とも宜しくお願いします。
【古山】今後とも宜しくお願いします。

1981年5月11日生まれ。石巻2.0理事。イトナブ代表。石巻市出身。 東京の自身のIT系WEB制作会社で活動するかたわら、3.11以降は東京と石巻を行き来する日々を続けながら、母校である石巻工業校においてソフトウェア開発の授業を受け持ち、同時に石巻の誰でもが気軽にITについて学べるイトナブを立ち上げる。