岡崎 研太郎

2013.12.24

「アートがもたらす医療現場へのエンパワーメント」

岡崎 研太郎 - 名古屋大学大学院医学系研究科 地域総合ヘルスケアシステム開発寄附講座 講師

あれは今から数年前のこと。クライアントのご親族にお医者様がおられて、僕に仕事の相談があるとおっしゃる。お医者様からの仕事というので、病院か、学会か、と思いきや、ご相談されたのは「糖尿病劇場」という何ともユニークなプロジェクトのことでした。

それから数年、ET Luv.Lab.で医療をやりたい、と思った時に、思い浮かんだのが「糖尿病劇場」のこと。それは医療でありながら、教育でもあり、広報でもあり、僕の守備範囲と重なる部分もあるんじゃないかと思っていたのです。名古屋の病院にお勤めの岡崎さんが、東京に講演でいらっしゃる時にお時間をいただいて、信濃町の大学の病院の一室で、講演前に「糖尿病劇場とは何なのか」。その正体を、こっそり教えてもらって来ちゃいました。糖尿病、誰しも関係ないとは言い切れない病気だと思います。その現場の話です。

糖尿病劇場とは?

糖尿病劇場

【加藤】岡崎さんにインタビューする、という時に最初にうかがっておきたかったお話が、何で「糖尿病劇場」を始めようと思ったかということなんですが。

【岡崎】そうですね。まずは糖尿病の医者になって皆気付くことは、患者さんにああしろこうしろ、と言っても、そうはならないってことなんですよ。患者さんに例えば大福好きな人がいて、「大福餅はこの世にないと思ってください」とか言っても通じないですよね。そういうドクターもいますけど。ないと思え、と精神論を言われても。反対にそう思え、じゃなくて、大福餅はもう食べないでください、と言っても、食べなくて済む人は多くて2割くらい。残りの8割というのは、わかっちゃいるけど、やめられない。私が大学を出て、奈良県の天理よろづという病院で働いていたとき、上司に内分泌内科の当時副部長だった石井均という先生がおられました。その先生から聞いた話ですが、京都大学で甲状腺ホルモンの研究で博士号を取って、天理にスタッフとして大学院が終わってから来たところ、糖尿病の方が甲状腺より病気としては圧倒的に多いので、かったそうです糖尿病の人が9割、甲状腺の人が1割という状況。ある日の外来で、患者さんの方から「私、おやつ食べないことにします、おやつを食べるから糖尿が悪くなる、血糖が上がるということ、私わかったんで」と言われたそうです。、ああそうですかと思って忙しい午前中の外来が終わって職員食堂にご飯を食べに向かう途中に、ふと横を見ると、さっき「おやつやめます」って言ってた患者さんが売店でアイスクリーム食べてたそうなんです。これはなんだ、と思いますよね。さっき患者さんから言ったじゃないか、と。自分は別に強制もしてないし、それでもやっぱりできないんだなということに気付くわけです。これは根本的に糖尿病診療に対する考え方を変えないとうまくいかないんじゃないかということで、石井先生が色々調べたわけです。、ハーバード大学の関連施設でボストンにあるジョスリン糖尿病センターというところでは、心理士さんや教育学の人が一緒に関わって、患者さんの心理や行動に介入をしている、という話を知ってそこに勉強に行かれたんですが、その話が僕にとっても大変面白くて。そのことに興味を持って、医者になって6年目に、そちらの方向に進むことにしました。天理の病院に7年半勤めた後に、アメリカのミシガン大学に行って、健康行動や健康教育を学びました。それで帰国してから、どうやったら患者さんの行動が変わるかとか、どうやったら患者さんをサポートできるかという時に、北風政策でああしろこうしろと言っても駄目で、やはり太陽じゃないと。ただし、太陽にもやり方があるので、具体的にどういう診療をやればいいのか、そういうことを医療者にうまく伝えていきたいと思っていました。ただ、なかなか日本の医療者の中に広まっていかないとも感じていました。ゆっくりしか広まらないし、特に医師の間にはなかなか広まらない。むしろ看護師さんとか栄養士さんとか、もっと患者さんの本音を聞く機会の多い人の中に理解者が増えていくわけですね。

【加藤】なるほど現場に近い。

【岡崎】こうして医療者教育に関わっているうち、何か限界があるぞと感じ始めました。講義形式で、こういうことが大切ですよね、患者さんの気持ちを聞き出すのが大事だし、健康行動にはいろいろな段階があるので、段階に応じた関わりが大切なんですよ、と言うと、一応理解はしてもらえる。けれども、わかっているけど、医療者もうまく実践できない。現場でうまくできない理由はいっぱいあるわけで、では医療者教育をどうしたらいいんだろうと考えました。ロールプレイなどもやってはみたんですが、なかなかもう一つ僕達が、少なくとも私が、これだ、という感じにならなかった。ある時、同じような志を持った仲間と話していて、たまたま次の研修会はどうしようかと話していて、そのとき私は眠りかかっていたらしいんですが、急に起き出して「劇でやりましょう、劇!」って言ったらしくて。というのが糖尿病劇場の始まりだったんです。なぜ劇に至ったかというと、ミシガン大学の公衆衛生大学院の授業の中で大学生のボランティアが高校を回って健康行動の話をするというプログラムがあったのですが、向こうの高校生ですから、普通に話なんか聞かないんです。やれセーフセックスとかコンドームを使いましょうとかデートレイプはだめだよとか、そんな話普通にしても「Huh?」という感じですよね。そこで彼らは劇をやっていたんです。、男の子と女の子が出て来て、良い感じで話が進んでいくんですが、場面が真っ暗に暗転して明るくなったら、女の子はシクシク泣いてて、男の子は「ケッ」という感じで立っている。それぞれには本音を語る「シャドウ」という役がついていて、劇を観ていた人から「わかってるの?あんたのやってたことは犯罪なのよ!」とか声がかかるんです。でも男の子は「俺悪くないし、デートに来たのアイツだし」、女の子へも「あんたも何か訴えなさいよ!泣いてるだけじゃなくて」というように進行していました。そういうアメリカでの演劇を使った教育を見て、どこか心のなかに引っかかっていたんでしょうね、それを帰って来て、2年くらいしてからふと思い出して、糖尿病の医療者教育にも使えるんじゃないかと思ったのが、糖尿病劇場の始まりです。

【加藤】当時は医療者さん専門?

【岡崎】そうですね、今もどちらかと言うと主体は医療者です。

【加藤】やはり自己学習を促す、みたいなことって、なかなか動機付けできないじゃないですか。わかっちゃいるけどというところに対して。その辺って自分のこととして関与させないと難しいと思うんですよね、さっきおっしゃってた行動学という話になってくると。そういう時に、お芝居から実際の患者さんまで導線というか、医療者さんを教育するところから、今度は患者さんのところに落とし込むまで、どういう風にやっておられますか。

【岡崎】なるほど。私たちがやっていたのは、診療風景の中で、こうしちゃだめですよとか、饅頭はないと思ってくださいとか言うわけですが、出てくる医療者はみんな善意に基づいているわけですね。そんな意地悪しようという人は登場しなくて、みな良かれと思ってやっている。大福たべちゃ駄目よと言う人にしても。最初の頃のシナリオでは、「私、焼肉好きなんです。カルビが好きなんです。」「カルビはやめてササミにしたらどうですか?こんなにカロリー少なくなるし」「そんなの焼肉じゃなくて焼き鳥だよ」とかね。「コロッケの衣を剥がして食べたらカロリー半分以下になるんですよ」「衣を剥がしたら、それマッシュポテトじゃないか」とか。そういうのに患者さんははい、はい、ってうなずくんだけど、影の役はそういう悪態をつぶやきます。こうすることで全体の診療風景を客観的に見ることができると思っています。

【加藤】ある意味、自分が真面目にやっていることが、冷静に客観的に見ると笑えてくる、ということですよね。

【岡崎】今まで皆あまりそういうこと考えたことがなかったんでしょうね、きっと。一つには、他の人の患者さんへの関わりを見る機会というのが、医療職は非常に少ないんです。昔であれば外来もカーテン一枚しか仕切りがなくて、大変な話はしづらいというか、話しが待合室まで筒抜けだったりしたんですが、そういう頃は隣で上の先生がなんて言っているかとか、聞けたりしたわけです。でも今はプライバシー重視で、完全個室になって、それは良いことなんですが、逆に言うと、他の先輩や同僚がどんな指導をしているのかわからないんです。心理士さんなんかは研修の過程で、マジックミラーの部屋があってスーパーバイザーの監督を受けたり、自分が患者さんと今日こんな面談をしたというのを全部思い出して書き出して、それをスーパーバイザーに見てもらってディスカッションをする、リフレクションをするような機会があると聞いていますけれども、我々にはなかなかそういう機会はありません。「栄養士さんに食事のことで相談に行きませんか」、と患者さんに言って1回行きますね。もう1回という時に「はい、喜んで行きます」という人と「二度と行きたくない。絶対嫌だ」という人がいて、「なんでですか?」と聞いても「とにかく絶対嫌だ、行きたくない」となった時に、栄養指導も個室で行われているので、その栄養士さんがどんな話をして、患者さんがどうしてもう行きたくないということになったのか、わからないんですよね。栄養士さん同士もなかなかわからなかったりするし。栄養指導はある意味、密室で行われているわけですが、その中身を明らかにして、皆で考えたらどうだろう、職種の中で、自分だけで考えても、なかなか解決するのは難しいんだけれども、それを皆で考えたらどうなるか、というのが糖尿病劇場です。後付の理論ですけどね。

【加藤】それすごいわかるというか、医療の現場では僕わからないですけど、今のインターネット使って仕事していく世界って、チームワークなんだけど皆それぞれのブツ切りというか、そうするとやっぱり平衡感覚を保つ機会って絶対必要で、そういう風に機能してるんですね。

【岡崎】そういう機能もありますね。もう一つは、このあいだ学会発表したときにも言われたのですけど、糖尿病劇場をフォーマットにしてしまって、どんどん全国にばら蒔いたら普及が早いんじゃないですか、シナリオ集作って、このシナリオのポイントはこういう所です、ディスカッションはこんなふうに進めたらどうですか、という風にしたらどうか、というアドバイスをよくもらうんです。

【加藤】テンプレート化ということですよね。

【岡崎】ただ、あんまり面白くないんですよね。

【加藤】面白いか面白くないかっていうの、すごい大事。

【岡崎】先ほどの天理の石井先生に何か話を持って行った時に、「おまえ、おもしろいやないか」って言われたら、大変な褒め言葉で、イケイケということで。「おもろないなあ」って言われたら、その企画は駄目なんだということで。おもろいかおもろくないかというのが彼の価値判断の基準で、面白くないことってやっぱりやりたくないんですよね。色々なところで、うちでも糖尿病劇場をやりたいという話をいただくんですが、そういう時には大抵、事前に1回か2回足を運んで、我々が目指しているところはこういうところですという説明をして、その人達が実際の療養指導で感じている問題を挙げてもらって、自分たちが実際の現場で困っていることを、栄養士さんでも検査技師さんでも薬剤師さんでも良いですが、それならこういうことがネタとして使えるんじゃないかとか、集めて、話を作ります。それが非常に面白い。上から降ってきた題目をやるのではなくて、自分たちが考えてやるというワークがとても面白いみたいですね。その病院、あるいは地域のチームビルディングというか、チーム医療を改善させるような副次的な効果も生んでいるようです。同じ病院で働いていても、薬剤師さんが何をしているのかわからなかったけど、こんなことをしていて、こんなことに困っていたんだなあということがわかったとか、他の患者さんのことを相談しに行くのもすごく垣根が低くなったとか、そういう効果もあるみたいです。

【加藤】よく仕事の世界というか、フリーランスの世界とかでも、サードプレイスみたいなものがあって、自分の仕事と、チームとの仕事と、もう一つ、普段所属してないんだけど、集まれる場所があって、多分、お医者さんの世界でも普段患者さんと接する診療、学会とかアカデミズムとしての発表の場があって、それとも違う第三のコミュニティがあるということですよね。

【岡崎】趣味的な感じですけども。皆が皆、興味を示すかどうかはわからない。しかし、僕らに取っては大変面白い。

医療と教育

【加藤】元々、ミシガンにおられた時に、医療と教育をやっておられたということで、そうすると実践する場がどうしても必要になりますよね。

【岡崎】大切ですね。

【加藤】そういう風な意味で、糖尿病劇場が機能していると。

【岡崎】かも知れないですね。

【加藤】元々、医療の中でも、教育に自分が突っ込んでいこうと思ったことって、なんか理由があったんですか。

【岡崎】天理で最初の二年間、医者としてのイロハを叩き込まれて、その後、皆は、耳鼻科に行ったり、眼科に行ったり、内科の中でも消化器内科とか、心臓内科とか。そんなふうに普通は専門科に三年目から行くひとが多いのですが、僕はちょっと回り道なコースを選んで、3、4、5年目を同じ天理病院の中で、内科を半年ごとに回るというコースに行ったものですから、色々なことがわかったことが良くて。その頃は教育に関わるとは全く考えていなかったのですが。当時、1、2年目とかの僕の同僚は、「なんとか先生、教育でやっていくらしいぜ(ため息)」と陰で言っていたくらいで、医者としては王道では全く無いんです。たとえば大学での医者の仕事は、教育、研究、診療とあるんですが、おそらく最も評価されないのは教育ですよね。研究がどれくらいできているか、論文がどれくらい出ているかが、出世などの一番のファクターになって、次がちゃんと患者さんを診ているのかという診療が来て、最後が教育になるので、これまで最も評価されにくかった。今でもまだ評価が低い分野で、そういうところに自分が間接的にせよ関わるというのは、あまり考えたことがなかったですね。糖尿病の患者さんと関わることを選んだ時点で、患者さんのQOLであったり、心理社会的な問題にどう対応するかということに、上司の影響で面白いと思って踏み込んだ時点で、病院の中にある糖尿病教室で患者さん教育にかかわるようになって、次に糖尿病劇場を通じて患者さんに教育している医師をどう教育するか、こうやった方がもっと患者さんもあなたたちも面白いんじゃない?という方向にだんだんシフトしていった感じですかね。

【加藤】教育ってやっぱり続けていくことを絶対おそろかにできないというか、新しい方法論があってもその人だけで終わっちゃうと、次の世代に引き継いでいけないじゃないですか。そういう意味では、それが循環していくことと、広まっていくことと、やはり両方必要で、特にその糖尿病という病気が、教育ということと逆に親和性があったのかな、と思いました。

【岡崎】それは大変素晴らしい着眼点ですね、英語で言うと「That’s a good question!」だと思います。例えば高血圧やコレステロールが高い患者さんも大勢いるわけですけど、コレステロールは一つ薬を飲めばほとんどコントロールできてしまう、良い薬があるんですね。焼肉食べようが、牛丼を毎日食べようが。血圧も人によって違いますけど、せいぜい2種類か3種類、血圧を下げる薬を飲めば大体良いところにおさまるんです。ただ、糖尿病だけはどんなにたくさん薬を飲んでも、インスリンを注射しても、食事と運動がうまくできないと、全然うまくいかないんですね。ですから、「俺、注射でもなんでもするから、先生の良いと思ったことはなんでもするから、その代わり毎日甘い缶コーヒー5本飲ませてくれ」、ということでは、なかなかうまくいかないんです。それこそが糖尿病の独特なところで、それが嫌な人にとっては、もう糖尿病の患者さん診たくない、めんどくさいし、時間かかるし、治療法もたくさんあって、しかも食事のことも運動のことも言わないといけないし、病気が進むと目が悪くなったり、腎臓がいたんだり、足が腐ってきて、そういう合併症のケアもしなきゃいけないし、やることがたくさんあり過ぎて嫌だな、心臓の患者さん診てる方が楽だなとか、腰が痛い患者さん診てる方がよっぽどいいやとか、糖尿病が嫌だという人はそう言うのがあまり合わないんでしょうね。僕らは何か惹かれてしまったというか、それを選んでしまったというか、糖尿病の患者さんに関わっていくのが面白いなと。

【加藤】たまたま昔、鍼灸の専門学校とお付き合いがあって、そこの方とお話ししている時に、横文字だとホリスティック・アプローチ、みたいなことをおっしゃってたんですけど、そういうことを見れないとということですかね。

【岡崎】ホリスティックという言葉は、多分、医療では緩和ケアなどでよく使われる言葉かなと思います。あとCAM(Complementary and Alternative Medicine)という代替補完医療、鍼灸だったり、ハーブ、漢方、アロマ、そういうところで非常によく言われている言葉だと思います。糖尿病を診る人は病気だけ見ていてもうまくいかないですよね。例えば糖を下げるには膵臓からインスリンというホルモンが出て、そのホルモンが足りなくなって糖が上がっちゃう人がいるんですが、極端な人はある日突然、膵臓がプツッと全くインスリンを出さなくなってしまう、1型糖尿病というのがあって、その人はもうどんな食事や運動をしようが、一生、インスリンを注射しないと、膵臓移植する以外は難しい。iPS細胞を使った治療法なんかができれば話は別なんでしょうが。阪神タイガースの岩田投手だとか、昔、巨人にいたガリクソン選手だとかは1型糖尿病で、1日3、4回注射をしながらプレイしてたわけです。注射をうまくすることができれば、プロ野球選手にもなれるし、オリンピックでメダルを取ったりもできる。そういうタイプの人と、インスリンはしっかり出てるんだけど、段々太って来ると、インスリンの効き目を邪魔するようなホルモンが出るんですけれど、そういう理由でうまくいってない人とがいて、そういう病態ごとに、こういう薬を使った方がいいよとか、もっともっと運動頑張ったほうがいいよとか、あるわけです。ただ、じゃあどうやったら体重減らせるんだろうという時には、患者さんの生活のことに踏み込んでいかざるを得ない。

【加藤】すごいありきたりな言葉ですけど、ケースバイケースなのかな、ということですよね。

【岡崎】僕がなぜミシガンに行ったかというと、Bob Andersonという教育学の先生がいて、その先生が私のアメリカのメンターなんですけれども、糖尿病エンパワーメントという言葉を提唱していて、「いいか研太郎、糖尿病治療の99%は患者さんがしてるんだぞ」「いや、俺、薬処方するし、どの薬が良いか考えるし、インスリンも出すし」と言ったら「馬鹿だなあ、診察室を一歩出たら、その人が今日昼マクドナルドでビッグマック食べるか食べないか、無糖のコーヒー飲むかマックシェイク飲むか、おまえ全然関与できないだろ」と言うんですね。今日、新宿御苑の周りを二周走るのか、しないのか、お前受け持ち患者さん何百人も回って監督できないだろ、ということなんです。もっと言うと、薬出してて飲んでると思ってるけど、本当に飲んでるのか、注射も本当に打ってるのか、それすら本当にはわからないでしょ。だから、それも含めて99%、患者さんが治すんだから、医療者は患者をどううまくサポートできるか、ということに考えを変えたほうがいい。糖尿病教育にはパラダイム・シフトが必要だ、ということを言われたんです。

【加藤】トップダウンとボトムアップの違い、みたいな感じですかね。

【岡崎】ああ、近いですね。もっと患者さんに権限を移譲しよう、ということです。例えば、お腹が痛くて病院に運ばれて盲腸です、と言われたら、手術してもらうしかないわけです。心筋梗塞になった時に、「あなた今心臓に3本ある血管の右の一本が詰まっていて、風船で膨らませる治療と、バイパスで…」などと長々と治療の説明をしている暇はないので、緊急でカテーテル検査をして医者がベストと思う治療をします、とやっていくしかない。医学生の時から、あるいは就職して新任の研修医だった頃から、そういう急性の病気、命に関わるような病気を絶対見逃すなと叩き込まれるのですね。一方で、糖尿病のように慢性の病気で、ゆっくり進む病気で、すぐに生き死にに関係しないのがほとんどの場合に、どう患者さんと接したらいいのかというトレーニングは受けていないんです。だから自信がなくて、他の病気と同じように、ああしろこうしろと言ってみたり、この患者さんは病識がないというレッテルを貼ったり、言うこと聞かない自分勝手な患者だからと、うまく行かなかった時にどうしても相手のせいにする方が気が楽なんですね。それってなんかお互い不幸だよね、と思うんです。

【加藤】お互い、というのすごい大事で、逆に患者さん側も心構えというか、スタンスというか、糖尿病ってそういう病気だからということで、普通の病気になった時とは違うメンタリティが必要そうですよね。

【岡崎】そうですね。エンパワーメントと言っても患者さんは100%ハッピーなわけじゃなくて、コインの裏表のように、自由と責任があるよねということなんです。患者さんが治療方針を医者と相談して最終的に決めたり、目標を相談した結果自分で決めたりという権利はあるけども、逆に、「私はこういう生活をしています、平日はこんな感じで、土日はこうで、食べるものはどんなものが好きです、こんなことだったらできます、これはちょっと難しい、自分は人生でこんなことに価値を見出しています」とか、そういう情報を提供してくれないと、私達もプロとしてアドバイスのしようがないんです。座るなり「先生の思うようにしてくれ」と言われても、あなたが、どんな人で、どんなことがやりたくて、どんな風に人生を送りたいと思っているのか、私にもわからないと。

【加藤】QOLですね。

【岡崎】そうですね。美食が好きで、フランス料理を月に1回くらい食べたくて、という人なのか、食事は我慢できるけれども、薬はどうしても嫌だ、という人なのか、色々なこと、好みを言ってもらわないと、こちらも腕のふるいようがないんです。「あんた医者なんだからわかるだろ」と言われても、「いや、わかりませんが」というのが糖尿病なんです。心臓の音を聞いたり、診察をして血糖値がわかるんだったら良いのですけど、糖尿病がうまくいってるのかどうかすら、採血をしたり話を聞いたりしないとわからないわけですし、なんでうまくいってないのかということを探っていくには、どうしてもそういうプライベートなところに入っていかないといけないという点で、病気の中でもユニークなというか、難しいところかなと思いますね。

演劇に学んだ中身と仕組み

【加藤】今、うかがってて、今日いただいた書類の中でちょっと面白いというか、気になったところが、携帯で糖尿病劇場の最中にレスポンスを返せるというのがありましたよね。

【岡崎】糖尿病劇場をやり出して、医療者教育のところに入っていくと、劇を見て、見た人がどう考えたか、というのが大事なんです。進行役、ファシリテイターがいて、「今出て来た看護師さん、どうでしたか?」と聴衆の医療者に尋ねると。ダメダメな看護師さんが劇には出てきたりするわけですが、「でも良いところもありましたよね、どんなところが良かったですか?どんなところどう変えていったら良かったと思いますか?」という質問を振って、皆で深く掘っていくわけです。そういうのってまさにワークショップだなと思ったんですね。そうした時にワークショップデザイナー育成プログラムというのがあるよというのを知りまして、東京は青山大学で、関西は大阪大学でやっていて、私は京都在住だったので阪大の方に行ったのですが、平田オリザさんという阪大教授で劇作家の人がやっていて、結構面白い講座だったんです。平田さんは演劇の人ですし。この講座で、ワークショップは中身と仕組みなんだということを誰かが言っていて、中身というのはどういうコンテンツを持って来るか。糖尿病劇場で言えば、薬を出す、服薬指導のシーンだとか、栄養指導のシーンだとか、そういうコンテンツですね。プラス、ワークショップをどうやっていくか、っていう仕組みも大事だということで、さっき言っていただいたTwitterを使った投稿というのはワークショップの仕組みのパートに関するところです。大体参加者は数十人くらいまでが糖尿病劇場やっていて面白いんですよね。色々な意見が出やすいから。できれば、ベテランのドクターとかが最初から意見を言っていただかない方がいいかなと。若い先生や、看護師さんが何も言えなくなってしまうので、ということもあって。正解は一つじゃないし、糖尿病劇場は、何を発言しても安心安全な場なんだよ、ということは徹底するようにしています。ただやっぱりそれでも100人の前で手を挙げて発言するのは勇気がいる。あるいは、たとえば400人の会場だったらやってもいいよというオファーがあった時に、こちらの答えはやります、か、できません、かの2つしかないので、「やります」って言うしかないんですよね、チャンスがあれば。400人の会場でどうするか、と考えた時に、知り合いの先生のつてで、Twitterを使ってこんなことやっているシステムエンジニアがいる、これは使えるんじゃないかと紹介してもらったんです。携帯でQRコードを読み込んで、年代と職種を入力してもらう。そうすると、自動的にツイートの画面にいけるようになっていて、投稿すると前のプロジェクターに全部投影されていく。予め質問を仕込んでおいて、「さっき出て来た看護師さん、あなたの周りにいますか?」というような設問に、「1.よくいる 2.時々いる 3.いない」とか、選択式だと答えやすいので、そういった仕組みを入れたら意外と好評でした。岡山の糖尿病学会の時に初めて使ったんですが、最初のツイートが「会場寒いです」でした(笑。手を挙げて「会場寒いです!」とはなかなか言えないですからね。

【加藤】そこでしっかりアイスブレイクができているわけですね。

【岡崎】そうですね。そんなこともあって、結構面白いですね。

【加藤】完璧な意見がないと、表に出せないとか、責任が伴うから言えない、というのがそういう場に起きがちだと思うんですけど、ブレストって、他人の意見を否定しないとか、意見に意見を乗せていくとか、そういうのって、おそらく医療の現場で行われている通常のディスカッションとも、ちょっと性質が違うのかなという感じもしました。

【岡崎】医療の現場で行われているディスカッションでは、やはり医者は大事にされてるんだなと思いますね。糖尿病劇場作ること一つに関しても、皆で作っていて、最後は僕が責任取るから、ここはこういう風にやらせてくれないかな、と言ったら、優しい医療者の人達はいいよ先生のやりたいようにやってと言ってくれますけど、ワークショップデザイナー育成プログラムに行くと、「岡崎さんはなんでそうしたいの?これじゃだめなの?その理由は?」って言われて、全部理由を説明して納得してもらうプロセスが必要でした。、そこではお互いがフラットな関係なので、医者だろうが、なんだろうが、上下ないですから。ビジネス関係の人がいて、アート関係の人がいて、行政の人がいて、教育関係の人がいて、全くフラットな関係性の中で、一生懸命説明して、ここは譲れるけど、そこは譲れないという話をする。本当にフラットな関係って、それはそれで大変なんだなと思いましたし、医療現場では医者は立ててもらっていて、仕事しやすいように周りの皆にしてもらってるんだな、って逆に感じる機会にもなりました。

【加藤】ちょっと違う畑に武者修行に行ってた感じですね。

【岡崎】そうですね。とても刺激的な体験でした。

【加藤】逆に今まで続けてきて、難しかったとか、問題点と感じていることってありますか。

【岡崎】当初から、正解は星の数ほどあるって言ってるんですが、正解パターンを示して欲しかったとか、ああいう患者さんが来た時に、どういう栄養指導をすればよかったのか見たかったとか、ディスカッションしただけでは腑に落ちない、という人が結構います。僕らの年代までは、学校で正解探しをずっとやる教育を受けて来て、正解はあるんだよという前提で、それを一生懸命、選択肢のパターンを絞り込んでいくという。多分、加藤さんくらいの世代になると、変わってきていると思いますけど、やはり医療関係者はそういう教育はあまり受けてきていないので、国家試験にしたって正解はひとつしかないですし、選んじゃいけない選択肢はそれを選ぶと、それだけで不合格になっちゃったりするわけですから。だから、正解はケースバイケースで複数あるんですよという話をしても、本当の意味で腑に落ちてもらえないので、どうしたらいいのかなという悩みはありました。やはり正解例を出したほうが良いのだろうか、1、2、3幕とあって、1幕でうまくいかないパターンを出して、次に他の登場人物が登場して、2幕3幕でなんとなくうまく行きました、ちゃんちゃん、という風にしてみたり。その辺については、きちんとこうだ、と言えるものが今のところないですね。

【加藤】気になったのが、ワークショップでディスカッションした内容って、何か記録に残すようなことってされてますか。

【岡崎】なるほど。それがあまりきちんとした記録に残っていることが少ないですね。だいたい全部、ビデオは撮影していて、テープもあるのですが、それを起こしていないというのが実情です。ある医学系出版社の商業雑誌に『糖尿病劇場、只今連載中』という連載を持たせてもらって、各地で開催されるごとに、そこで頑張った人達に原稿をお願いして、簡単な当日のシナリオや、会場からの意見をダイジェストでは書いてもらっているのですが、あるシナリオについてこの会場ではこういう意見が出た、というようなきちんとしたまとめが作られてることは、あまりないですね。記録に残す、それ良いかも知れないですね。そういうWebサイトを作って、ディスカッションの結果まで掲載して、そうしたらあとからでも皆見られますもんね。

【加藤】そうですね、参照できますよね。

【岡崎】僕らも囲い込むつもりは全くないし、シナリオもいくらでも公開しようと思っているので。

医療はサイエンスに基づくアートである

【加藤】なんかテンプレート化されなくても流通するというのは大事ですよね。他の場所でやる人とかにも。

【岡崎】糖尿病劇場の作り方みたいな、こんな感じにしたら作れるんじゃない?というワークブックみたいな本を作ったらいいよねという話もチラホラあります。それと並行して、興味を持ってくれている医療者、それから全然医療関係じゃない知り合いとかにも面白いよねと言われています。糖尿病劇場の何がそんなに色々な人を惹きつけて、2009年が最初ですから、5年目になるのに皆飽きもせず来てくれていて、そもそもの演劇の力なのか、ワークショップという場の面白さなのか、同じことやっても参加者によって変わってくる面白さなのか、なんなのかというところは自分でも正確に把握できてないところです。

【加藤】でも、定義できないから次も面白くやってやろうとなるわけですよね。

【岡崎】ただね、実践と研究があって、ある程度アウトカムを絞って、こうでしたって言えないと、使える研究費が回ってこないんですよね。論文化できなかったり、学会で発表できなかったりするので。その両輪のうち、実践はうまく回っていると思うので、後はアカデミックなところで。発表自体はできているんですが、それをきちんとしたアカデミアのお作法に則って報告するというところが少し不十分で、去年くらいから、量的な研究というよりも、フォーカスグループのような形で、劇場をやってみて、実際の自分の日常業務がどう変わったか話してもらって、それを質的研究の手法で分析したりしているので、今後はそちらも進めていけると思います。

【加藤】今日お話伺っていて、やっぱり学習のメカニズムって事自体に意義があって、何点上がったか、というよりはそのプロセスですよね。そういうのがアカデミックに評価されれば、両輪で回っていくということですよね。続けていける仕組みにならないと。

【岡崎】そこをもう一工夫する必要があると思ってますね。あまりにも要素が多くて、どこにフォーカスして、どこを押したらいいのかな。届け先を吟味するのは論文でも重要なので、ここのジャーナルに出すなら、こういうところをもう少し深めなければいけない、というようなアドバイスを外の人にもらいながら、ですね。

【加藤】糖尿病劇場がプレゼンスを発揮することによって、最初におっしゃってた、医療と教育、患者さんをエンパワーメントするという考え方自体が、医療の世界に広まっていくといいのかも知れないですね。

【岡崎】僕が一番個人的に思っているのは、糖尿病エンパワーメントというのを素晴らしい概念だ、その賛同者を増やしたいという時に、糖尿病エンパワーメントには3つの柱があって、最終的に患者さんが中心で決定権を持つんだよとか、医療者はそれをサポートして協力するんだよとか、そういう大きな枠組みを説明しても、忙しいし時間が限られていてそんな悠長なことできないよね、とか、僕の患者さんは僕の言うとおりにするので満足しているから、とか、色々な意見があって、その中で、コミュニケーションに特化して、糖尿病劇場をやってみたわけですよね。大事なのはネーミングで、エンパワーメントと言っても、難しそう、私には関係なさそう、と思うんですが、コミュニケーションというと、途端に皆寄って来る。糖尿病劇場、誰が名付けたか忘れたんですが、一応商標登録もしていて、「おまえ劇場観たか?」みたいな話になるので、ネーミングって大事なんだなと思います。医学の世界でも同じような先例があって、Sackettという人が臨床疫学、Clinical Epidemiology、ということを言ったんですが、Clinical Epidemiologyって日本でも世界でも広まらなかったんですね。ところが、Evidence Based Medicine、EBMというキャッチフレーズにしたら、ワーッと広まったんです。今やEBMを知らない医療者はもぐりですよね。Evidence Based Nursingとか、Evidence Base Nutritionとか派生語もできて。やはりネーミングって大事。同じ中身なんですが、名前が覚えやすくなるだけで広まることがあるんです。平田オリザさんも同じような経験があるらしくて、演劇を教育に、特に初等教育に演劇を使う時に、欧米にはドラマ・ティーチャーというのがいる。道徳や場合によっては算数なんかも劇で教える、ドラマ・ティーチャーを日本でもやりましょうと言っても、政治家が全然興味を示さなかったそうなんです。ところが、コミュニケーション・ティーチャーって言っても良いんですけど、って言ったら、皆ワーッと乗って来て、それは面白いということでかなり予算がついたんですね。何か目玉の文教政策が必要だった、ということもあったのでしょうが。そんなに皆、演劇って嫌なのか、ドラマって嫌なのか、と平田さんはぼやいてましたけど、やはりエンパワーメントと言ってもなかなかうまくいかなかったのものが、コミュニケーションなり、糖尿病劇場とすることによって、同じことを言ってるつもりなんですけど、切り口がちょっと違ったり、ネーミングが違ったりするだけで、こんなにも反響が違うのかというのは正直驚いているところです。言ってることは同じなんだけどなあ、という。

【加藤】掴みは大事なんだなあ、という。最後の質問なんですけど、中長期的にこうしていきたということありますか。

【岡崎】これは私の意見なんですけど、医療の中にもっとアートなことがあっていいんじゃないか。聖路加病院の102歳になられた日野原重明先生は、William Oslerというドクターのことを敬愛しておられて、Osler博士の言葉に「医療はサイエンスに基づくアートである(The practice of medicine is an art, based on science.)」という言葉があって、アートはしばしば技と訳されるんですけど、サイエンスとアートってどちらも大切なんだなと思います。EBMとかはサイエンスなんですよね。大規模試験をして、これが良いということになりましたという。ただ、「加藤さんのような方にはこの薬が良いんですよ、ガイドラインにあるとおり」という話をしても「薬は嫌だ」という方はいるわけですよね。そこを納得してもらうのはアートであって、エビデンスからこぼれ落ちてしまう、サイエンスでは拾えないような事柄が、糖尿病医療の世界には多くあるので、それを拾うにはやっぱりアートなんだろうと思います。ひとつの方法として、糖尿病劇場ではそこに演劇というアートを持って来ている。もっと色々アートの関わりがあってもいいんだろうと思いますし、ふと自分のことを思うと、父方は医者が多くて、母方は備前の焼き物でアート関係の人が多いので、まあそういう運命だったのかも知れないなと今になって思います。そういう感じで糖尿病におけるサイエンスとアート、広い意味での医療者教育におけるサイエンスとアート、というところでアートが使われたり利用されたり、そういうところで面白いことができないかな、と思ってます。

【加藤】そこに期待感があるということですね。今日すごい面白かったです。

【岡崎】そのためにも色々な分野の人と絡むのが面白いですね。越境というキーワードを使っている人もいたり。加藤さん、まさに色々なところ越境して、頑張っているなあと思って見ているんですが。

【加藤】そうですね、刺激を受けて、またネタが出て来るというか。

【岡崎】自分のベースがしっかりあってのことですけどね。そうじゃないと風来坊か根無し草かとかなっちゃいますから。

【加藤】そういう柔軟性は持っていたいですね。次のネタ思いついたら是非また教えてください。

【岡崎】こちらこそご協力をお願いすることもあるかも知れませんが。

【加藤】ありがとうございました。

【岡崎】ありがとうございました。

岡崎研太郎。1968年生。岡山県出身。1993年京都大学医学部医学科を卒業。内科医、糖尿病専門医。患者-医療者関係や、糖尿病を中心とした慢性疾患における健康教育、行動変容に興味があり、演劇を用いたワークショップ「糖尿病劇場」などの活動をおこなっている。
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鵜川 洋明
「水、流るるを、樂しむ」

僕も関わる児童養護施設を退所する若もののための奨学金支援プログラム、カナエールでトレーニングチームのリーダーをしているのが、うーさんこと鵜川洋明さんです。カナエルンジャー(奨学生)とエンパワチーム(社会人ボランティア)が…

2016.01.15
太田 サヤカ
「問うデザイン、問われるデザイン」

以前、ET Luv.Lab.で取材させていただいた、イトナブの古山さんから、僕や仲間内のデザイナーのところを1日ずつ、新入社員を武者修行して回らせたいというご相談をいただいたのが2年前の春のこと。トランク片手に仙台から東…

2015.08.07
井口 拓磨
「聴こえてくる音楽、その風景」

水族館の音楽のデザイン、そんな少し変わった仕事をしている人を、以前中華街で紹介してもらいました。僕はそこでサウンドスケープ、という言葉を初めて教えてもらいました。音のランドスケープ?、なかなか難しそう。 僕は楽器がからき…

2015.06.22
葛原 信太郎
「編集が生むのは、活力」

「あれ、Twitterが似顔絵のアイコンの人ですよね?」久し振りに言われたなと思いました。 仕事仲間の鎌倉オフィスのオープニングパーティで知り合った葛原信太郎君は、アースガーデンというメディアの編集長。ただ、日本の「揺れ…

2015.05.26
小高 朋子
「作り手の担い手」

「仕事の相談があるのですがー」、久し振りにご連絡いただいた小高朋子さん。Facebookで全国津々浦々飛び回っているのは拝見していて、いずれまたお話したい人の一人でした。じっくり腰を据えて話すのは、実は今回の取材がほぼ初…

2015.05.17
網谷 勇気
「カミングアウトが拓くもの」

実行委員として関わっている児童養護施設からの進学を応援する奨学金支援プログラム、カナエールで一緒に仕事することになったのが、網谷勇気さんでした。プロジェクト内では皆ニックネームなので、今回の取材でも「あーみー」と呼んでい…

2014.03.20
中村 優
「旅するレシピ」

中村優さんと出会ったのは、クライアントのレストランでのディナー・パーティの時でした。隣の席にたまたま座っていた優さんとは当然初対面で、ただ、なんか美味しそうに美味しそうなものの話する人だなあと思っていて、でもお互いあんま…

2014.01.01
山本 浩司
「歴史家が紐解くプロジェクト・デザインいまむかし」

浩司君がTEDに出る。そんな話を聞いたのは2年前のことですか。イギリスで歴史家として産業革命時代の経済や商業の歴史を研究する山本さんとは、頻繁には会わずとも、たまに飯を食いながら意見交換する仲です。歴史家という響きとは裏…

2013.12.24
岡崎 研太郎
「アートがもたらす医療現場へのエンパワーメント」

あれは今から数年前のこと。クライアントのご親族にお医者様がおられて、僕に仕事の相談があるとおっしゃる。お医者様からの仕事というので、病院か、学会か、と思いきや、ご相談されたのは「糖尿病劇場」という何ともユニークなプロジェ…

2013.11.03
村上 玲子
「人、そこに在る暮らし、そこを巡るは旅人」

村上玲子さんは、お世話になっている方が開いた懇親会でお話しする機会があって、ただ、ソーシャル・メディアでは繋がりつつも、以降お会いする機会はなく。なんですが、僕があっち行ってると、翌日くらいから玲子さんがそこにいるのをソ…

2013.10.10
茂木 隆宏
「横浜の創造力の舳先に」

横浜在住で自宅勤務であるにもかかわらず、これまで横浜で仕事したのは片手で数えられるほど。ちょうど、この1年くらい、少し横浜で何か行われているのか、ということに興味を持ってから、よく耳にしていた名前が「ノガン」という会社で…

2013.05.20
越水 大輔
「ローカルにコミットする躍動感」

越水大輔さんはフリーランスのWEBデザイナーで、福岡に1年。僕とはちょうど1年ほど前に、ETのWEB経由でお声がけいただき、一度だけ横浜の喫茶店でお話しをしました。彼はその後、福岡に移り住み、僕もちょうど色々な場所と仕事…

2013.04.01
古山 隆幸
「復興のカリキュラム」

古山隆幸さんとは年次がほぼ一緒で、学生時代からWEBの仕事をしていたことも共通で、昨夏、石巻2.0の小泉瑛一君に紹介してもらって以来、UX X Talkというハングアウトイベントを石巻工業高校の生徒さん向けに企画したり、…

2013.03.27
礒貝 日月
「出版ボン・ボヤージュ」

大学のラグビーの後輩に、「加藤さんに、そいつだけは紹介したい、という人間がいるんです」と言われていて、そういうことをその後輩が言うのも珍しいので、ドキドキしながら丸の内に出かけたのが昨年の秋。礒貝日月君とはそれ以来、同じ…

2013.03.20
東 宏樹
「揺れやすさ、というファクト」

昨年末出かけたTEDxKeioSFCで、ちょっと懐かしい顔と再会しました。東君は大学の後輩なんですが、例によって社会人になってからの知り合い。鎌倉でこんなことをやってみたい、みたいな話を酒飲みながら聞かせてもらったりして…

2013.01.29
舟越 奈都子
「アートへのホスピタリティ」

僕が9月に石巻に行ったのは一時画伯というプロジェクトのワークショップのサポートスタッフとしてでした。実は一時画伯に関しては僕はそもそもWEB制作を仕事として請けていて、そういう意味では外部からお手伝いする立場だったのです…

2013.01.11
植村 百合香
「踏み入って、踏み留まって、踏み進める」

「ちっちゃい怪獣連れて行くね」、そう言われてブリッジフォースマイルというNPOに勤めている友達に紹介されたのが、植村百合香さんでした。初対面の時は別に彼女のプロジェクトの詳細を聞くわけでもなく、ただなんとなくこの子、大物…

2012.11.27
坂田 一倫
「Non-Designer UXer」

高校と大学のラグビーの後輩にあたる坂田一倫君。学生の頃からデザインが好きだったようで、ただ、僕とはちょっと違う志向性だったようで。彼の口から、徐々にUXという言葉を聞くようになって、気がつけば、UXの専門家として仕事をす…

2012.11.18
小野 梨奈
「働き方の未来予想図」

ナンパされたシリーズ。今年に入って、Twitterで仕事のお声がけいただいたのが、フリーランス、Webプロデューサーの小野梨奈さん。とは言え、何となく僕も存じ上げていて、お話したところ、共通の友人の話にもなり、行けそうだ…

2012.10.04
北見 友和
「続けることを繋げる、繋げることを続ける」

10年前から上永谷にあったレゲエバー、CRISE。歩いて30分ほどの所に住んでいたのに、僕が知ったのはつい昨年のこと。そこのカウンター越しに知り合ったのが、北見友和さんでした。日本料理を銀座で修行し、数千人規模の屋外ライ…

2012.09.21
山本 泰広
「笑うPMには福来る」

先日、「僕のチームの後輩に酒飲みながら話してもらえませんか?」という、ちょっと風変わりなオファーをくださったのは、ネットサービス企業でプロジェクト・マネージャーをしている山本泰広さん。同じ横浜市民ということもあり、飲みの…

2012.09.15
marico
「モノを作る、場を作る、時間を作る」

男ですし、そんなにアクセサリーとかは持ってないのですが、maricoさんにオーダーしたグラスループは今も愛用しています。maricoさんとは友人に紹介された社会人サークルみたいなところで知り合って、だから5年ほど前でしょ…

2012.07.01
中村 こども
「楽しかったら重くないんだ」

「すいません、ピントが合ってませんでした。。。」そんなET Luv.Lab.始まって以来の大失態を犯してしまったのが、今回の中村こどもさんへの取材です。実は僕は中村さんにレンズを一本お借りしていて、だから、そのレンズを借…

2012.04.14
黒田 和宏
「企業と個人を結ぶもの」

まだ僕が学生時代にデザイン会社の仕事をパートタイムのスタッフとして手伝っていた頃のこと(別に出社とかなかったけど)。その僕を手伝ってくれていたのが同じSFCに在籍していた1年下の黒田和宏君でした。そこでの仕事が終わって、…

2012.03.29
景山 泰考
「ロジックを調律する男」

「やーまん」「やーまん」「やーまん」と本当に知り合ったその日からべったりお世話になっているのが景山君こと、「やーまん」です。お互い何かを説明する時に、いきなり結論を持ち出してもきちんとコミュニケーションが取れる、という意…

2012.03.26
浜本 階生
「ソーシャルグラフとアルゴリズムが導く行方」

Blogopolisを知っていますか。10人に見せると10人が「スゲー!」という、僕の経験の中でも類まれなサービスです。それを作っている個人と知り合える!と聞いて、お邪魔した用賀エンジニア焼肉会が浜本さんとの出会いでした…

2012.03.08
小泉 瑛一
「On the frontline」

小泉君と僕の関係性を説明するに、横浜の飲み仲間です、以上の説明がないのですが、彼が横浜国立大学の建築学生の時に、ひょんなことから知り合って、せっかく地元の若者なので、色々な会に連れて行って、なんか面白いことになればいいな…

2012.02.21
大嶋 英幹 / 水口 一
「デザインに人の温かみが降りてゆく」

僕が鎌倉でお世話になっている代理人の方が「面白い人達に会いましたよ」とある日おっしゃった。あの時「じゃあ、紹介してください」、その一言が言えなかったら、きっと僕が「はせのわ」に携わることはなかったでしょう。 鎌倉にあるツ…

2011.11.12
畠山 千春
「見えやすくする、触れやすくする、慈しみやすくする」

僕をして、エコ、という言葉を誰も想起し得ないと思いますが、随分前に、green drinks Tokyoというパーティにうかがった際にご紹介いただいたのが、当時グリーンズでインターン中の畠山さんでした。ちょうど就職活動の…

2011.10.21
松村 太郎
「その境界を超えてゆけ」

2007年3月、kosukekato.comの読者から一通のメールが届きました。「ブログでナンパした」「ブログでナンパされた」という話は、どこかしこでしている話ではあるのですが、実は中学と大学の後輩であった松村太郎君と知…

2011.06.14
徳本 昌大
「コミュニケーションの今」

僕がいつもと少し毛色の違うプロジェクトにアサインしていただいた時に、そのプロジェクトでお世話になったのが、「ソーシャルおじさん」こと徳本昌大さんでした。お仕事の合間にET Luv.Lab.のことをお話ししましたところ、快…

2011.04.12
すわ だいすけ
「Still Together」

3月11日、地震がありました。今も余震や原発事故など、予断は許さない状況ではあると思います。いつまでも休眠させずに、ET Luv.Lab.も動かしたい、でも地震の後に、その話を避けて通らず、でもET Luv.Lab.らし…

2011.03.04
迫田 大地
「人と情報のパッシング・ポイント」

WEBデザイナーの迫田大地さんと付き合いだしたのは遂最近。実はこういう仕事をしている癖にWEBデザイナーの知り合いってとても少ないんです。しかし話してみると、同じ80年生まれということもあり、WEBの入り口から、仕事に転…

2011.02.19
丸岡 和人
「次代の起業家精神を描く」

丸岡和人君とは、今は無き、「用賀エンジニア焼肉」で何回かご一緒して以来のご縁です。何となくお互いの仕事を知ってはいたし、出身校も一緒だったので、シンパシーは感じていましたけど、よくよく考えれば今回の取材が2人で仕事につい…

2010.12.09
小島 希世子
「火の国の女、肥の国の母」

小島希世子さんとは大学時代の親友で、ともすれば悪友で、お酒を飲みながら20歳前後に議論を交わした朋友です。農業の世界を生業にする数少ない友人で、僕もいつも勉強させてもらってます。 2年前の法人設立の際には、僕もCIやWE…

2010.11.11
原田 均
「社会にコミットするエンジニア」

グラウンドの仲間シリーズ、原田均君は28歳にして既に検索プラットフォームを手掛けるネット企業のCTOで、この夏、僕も会社のWEBサイトを手伝わせてもらいました。原田君の世界を放浪した話、などもかなり面白いのですが、今回は…

2010.10.07
津下本 耕太郎
「関係性の仕掛け人」

津下本耕太郎さんは数年前に共通の客先でお知り合いになって、なかなか興味分野がかぶっていることもあり、同年代ということもあり、気が付けば意気投合していたという、ビジネスとも言い切れない、プライベートとも言い切れない不思議な…

2010.09.25
三橋 ゆか里
「I am a TechDoll.」

後輩が独立したと聞き、会ってみたのが半年前。それからあれよあれよという間に活躍されているのがウェブディレクターでライターの三橋ゆか里さんです。先日もYahoo!ニュースに三橋さんが書いた記事が載っていたらしく、一緒に飲ん…

2010.07.01
須藤 優
「面白い人を拡張する」

形式は違えど、JunkStageというのは、ET Luv.Lab.の良い見本なのだと思うんです。56名のライターを抱え、コラムサイトを運営しつつ、フリーペーパーを出したり、イベントをしたり、新しいサービスも始まるようです…

2010.06.04
松下 弓月
「非日常性への回路」

「今日はお坊さんと食事に行きます」なんて友人に言うとびっくりされるのですが、松下弓月さんは平塚宝善院の副住職であり、超宗派仏教徒によるインターネット寺院、彼岸寺のメンバーでもあり、最近ではUstreamなどでも積極的にイ…

2010.05.15
福山 泰史
「アマプロ混在の時代に思うこと」

同世代で自分よりフリーランサー歴が長い人、と言うと、実はそんなに多くはなかったりするのですが、音楽プロデューサーの福山泰史君は僕より2つ年下。 20歳の時に独立し、それから9年もの間、フリーの音楽プロデューサーとして業界…

2010.03.09
児玉 哲彦
「アーキテクチャからデザインする」

児玉哲彦さんとは母校のOpen Research Forumというイベントでゲリラトークセッションに飛び入り参加させていただいた時に知り合いました。それから何度かゆっくりお話をする機会が持て、僕はビジネス寄り、児玉さんは…

2010.02.25
神谷 真人
「芝居と生きる、芝居を生きる」

3年B組16番加藤康祐、3年B組17番神谷真士。中学のクラスメイトで、出席番号が並びだった神谷君と再会したのは社会人になってからでした。話を聞いてビックリ。「脱サラして舞台俳優をしている」とおっしゃる。ある意味、僕とはフ…

2010.02.23
野口 尚子
「余白を埋める、余白を作る」

各所で話題の僕の似顔絵入り名刺ですが、実は印刷の余白Lab.の野口尚子さんにコーディネートをお願いしたもので、ブラックメタリックの箔押しにグレーのラメ入りの紙がお気に入りで愛用させてもらっています。独立前に知り合いました…

2010.02.09
小林 朋子
「Twitter文化はサロン文化」

サヴォアール・ヴィーヴルって言葉、初めて耳にする方も多いのではないかと思います。鎌倉でサヴォアール・ヴィーヴルサロン、ロザリウムを主宰されている小林朋子さんは、ETの古くからのお客様で、ご家族の皆様にもいつもお世話になっ…

2010.02.05
北山 朝也
「エンジニアリングと幸せの定義」

ET Luv.Lab.記念すべき第一回目ゲストはエンジニアの北山朝也君です。北山君とはグラウンドで一緒に汗を流した仲でもあり、社会人になってからも折々で酒を酌み交わしがてら話をしあう親友です。北山君とは付き合いが長いです…

2010.01.27
加藤 康祐
「人がメディアになる時代」

ブランディングの仕事をしていると、結局最終的にはブランドの価値がいかにして、「人」に反映されるか、ということに勘所があるように思います。何か同じようなことが、スゴイ勢いで情報の世界にも起こっているな、ということを下記の文…