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中村 優

中村優さんと出会ったのは、クライアントのレストランでのディナー・パーティの時でした。隣の席にたまたま座っていた優さんとは当然初対面で、ただ、なんか美味しそうに美味しそうなものの話する人だなあと思っていて、でもお互いあんまり何やってるかその時よくわかってなかったんじゃないかなあ。僕の印象としては、美味しいものを、きちんと、美味しい話にできる人、ということだったんですね。

それからしばらく、彼女に「YOU BOX」というのを薦めてもらいます。旅先で彼女が見つける食べものを「おすそわけ」してくれるサービス。小豆島、台湾、ヨーロッパ、世界のキッチンを渡り歩く彼女から届く品々は、僕の好奇心を埋め尽くすのに十分なものでした。ちゃんと一度話を聞きたい、それならなによりET Luv.Lab.があるでしょう。彼女が修行した場所の一つ、恵比寿のキッチンわたりがらすにて、彼女が渡る世界を少し、垣間見させてもらってきました。

世界のキッチンを旅する

【加藤】最初に聞きたかったのが、俺、「バックパッカー」みたいなこととか「カウチ・サーフィン」みたいなこととか、全然したことがなくて、優ちゃんはいつくらいから始めたんだろうと思って。

【中村】始めたのは大学からだね。

【加藤】それってBADO!が始まる前?

【中村】うん、大学2年生の時に休学して、アメリカとスペインに行ってたの。アメリカにいた時くらいから色々な場所を回るようになって、その後、スペインに行った頃はかなりバックパッカー気質だったんだよね。アメリカにいた時にニューヨークでフラフラしていたら色々な人達に会って、こういう生き方もあるのかと衝撃を受けた。

【加藤】変な人いっぱいいるもんね。

【中村】あの辺から私崩れて来たんだよね。それまではもうちょっとレールに乗っていた気がするんだけど、気がするだけかも知れないけど。

【加藤】そうかそうか。大学生の間にBADO!があったの?

【中村】そうそう。でもBADO!は私は0期生。立ち上げをどちらかと言うと一緒にやっていて。「こういうことやりたい」、という構想だけを聞かされていて、「海外行くって言ってたよね?BADO!やってくれない?」ということになったの。

【加藤】0期生ってことで。

【中村】そうそう。自分で世界のキッチンを回りますという計画を立てて。私は私でファンド・レイズ、企業からお金などをもらって、行ったんだよ。

【加藤】その「世界のキッチン」のアポはどうやっていたの?

【中村】最初はカウチ・サーフィンかな。カウチ・サーフィンで、とにかく料理が好きそうな人にメッセージを送ってたの。世界のキッチンを回りたいんだ、ということを伝えたら、大体OKしてくれて。行った先々で、次はここが良いよって皆教えてくれるようになったの。当時、映像を配信していたのだけど、そしたら段々、「うちにも来てよ」みたいなオファーも来るようになって、行くとすごい食材が並んでいて、作ってもらって、食べさせてもらって、至れり尽くせりな企画になってた。

【加藤】次行く人は、前の人のところ見て、「もっと、やらなきゃ」みたいになってそうだよね。

【中村】結構、皆テンション高くて、すごい良くしてくれた。

【加藤】それどれくらいかけて回ったの?時間は。

【中村】3ヶ月でヨーロッパを回った。

【加藤】何カ国くらい?

【中村】うーん、5カ国くらいかな。

【加藤】言語は全部一緒なの?

【中村】ううん。違う。

【加藤】どうしてたの?

【中村】大体の人が、英語が喋れて、喋れない人とも何とか通じてたかな。私は英語とスペイン語が喋れるから、スペイン語圏は大丈夫でしょう。で、スペイン語をめっちゃ抑揚つけて話すと、イタリア語っぽくなるからw。英語とスペイン語を駆使すると、結構いけるんだよね。だからあんまり問題ではなかった。

【加藤】そうか。なんか、一番言語が問題になりそうなイメージはあったので。

【中村】でも言語を超えるって意味でも料理ってツールを使ってたんだよね。

【加藤】ああ、そうかそうか。

【中村】キッチンで一緒に立って、言語で完全にコミュニケーション取れなくても、信頼感が生まれることがあって、すごい良いツールだった。

【加藤】面白いね。だって、初対面なわけだからね。

【中村】もし、音楽が好きだなあと思ったら音楽でやってたんだろうけど、できそうなのが料理だった。

【加藤】なるほどね。その3ヶ月の旅に出かける前には、結構普段から料理をするような人だったの?ここで働いてたのはもっと後か。

【中村】そう。だけど、お菓子を作るのは好きだった。小学生の時とかから作ってたね。

【加藤】へー。

【中村】自分でこちょこちょ手を動かして何かを生み出すのが好きで。色々混ぜたお菓子とか。

【加藤】レシピそのままやるんじゃなくて。

【中村】結構発明してた。

【加藤】俺もそういうの好きだからな。

【中村】お母さんには「一番スタンダードなシンプルなものが食べたい」って言われたけどねw。変なの入れなくていいからって。

【加藤】アドリブ効かせる感じだ。

【中村】そうそう。

【加藤】でも、その後、日本に帰って来て、ちょっと社会人をやるわけだよね、いわゆる。

【中村】そうだね。その旅が終わった後に、大学を卒業して、新卒で就職したのだけど、2ヶ月で辞めて。

【加藤】言ってたね。喧嘩別れみたいなことじゃ全然なかったって話だったよね。

【中村】今でも仲良くて、外注で仕事もらったりもしていて、懐の深い会社なんだ。今でもその会社の人と飲みに行ったりするし。

【加藤】じゃあ、2ヶ月働いて、でも自分のやりたいこと見つかっちゃいました、みたいな感じだったの?

【中村】ううん、そういう感じでもなくて、どちらかというと、独りでやってみたいという思いがすごいあったから、そもそも会社に入っちゃ駄目だったんだよね。色々考えて、こんなに悶々としてるようじゃ、何をやるにも「これって本当に私がやりたいことだっけ?」って考えちゃうわけよ。なんでこれやらなきゃいけないんだろうとか。

【加藤】噛み合わなさ、みたいなのがあったんだ。

【中村】配属された先が自分で選んだものでないというのも大きかったな。結局、団体行動が苦手なんだけど。

【加藤】ははは、俺もそうだけどね。

【中村】こんなことごちゃごちゃ言ってちゃ駄目だと思って。

【加藤】それで何始めたの?

【中村】その次の日に何も決めずに辞めちゃったからさ、どうしようかなあ、暇だなあと思って。それで公園でボーッとしてたんだけど、名古屋の友だちがたまたま来て、秋葉原にある3331に行きたいというから、一緒に行ったの。そうしたら、そこで柿原優紀さんという私の編集の師匠が当時広報を担当していて、優紀さんとお話ししたら、超素敵な人だなあと思って。しかも、こういう風に一人で生きていけるんだ、そういう生き方働き方って面白いなあと思って、「私、今暇です、お金もいらないし、なんでもやるから、教えてください」、という感じで弟子入りしたの。

【加藤】ある意味、丁稚奉公みたいなことだね。俺もそういう感じで仕事を始めたところがあって、中学の時のバスケ部の先輩が、大学で再会したらデザイン会社をやっていて、高校終わってアメリカから帰ってきた時に、「マーケティングやりたいやつ知らない?」みたいなこと言われて。「ああ、探します」みたいなこと答えて、家帰って考えたら、「ああ、俺やりたいんじゃないかな」と思って、それからこっちの道に入って来ちゃった感じなんだよね。

【中村】元々は?

【加藤】それが18歳。最初はさっき言ったみたいな丁稚奉公に近くて、4年くらいやって、ちょっと休んで、そこからがフリーランス。

【中村】そうなんだ。すごいね。

【加藤】いえいえ。だからなんか、何となくフリーランスがはまるんじゃないか、とある日突然思っちゃった、みたいな感覚はわかる気がする。

【中村】わかるわかる。

【加藤】そこからちょっと大変だよね。

【中村】まあ、会社の方が楽だなと思うことはいっぱいあるよね。

【加藤】それからしばらくは編集の仕事という感じでやってたんだ。

【中村】編集の仕事って言えるほど何もできてなかったんだけど、とりあえずできそうなことは全てやってた。隣にいて。そうしたら2ヶ月後くらいに今度はここ、キッチンわたりがらすの村上秀貴さんに会ったの。千葉いすみにFarm Campusっていうところがあって、そこでケータリングを食べる機会があって、すごい自分の好きな味だったのね。塩の使い方とか、素材の味が惹き出てる感じとか、その時はあまり思わなかったけど、今思うと女性的な味付けというか。優しい感じ。それがとっても気に入って、隣行って話したら、無茶苦茶面白くて、気が合うわけ。次の日くらいにお店あるというからお店行って食べたら美味しくて。そこでもまた、「弟子入りさせてください、なんでもします、お金いらないので教えてください!」という話をしたんだ。私は旅をしていた話をしたら、彼も旅人で。

【加藤】お店の「わたりがらす」という名前もそんな感じだものね。

【中村】そうそう。20代は本当に似たような感じで、色々な生産者回って雑誌作ってたんだって。その雑誌もアンダーグラウンド系で超面白くて、色々な話してたら「いつでもおいで」と言うから、次の日から行くようになって、昼は編集、夜は料理みたいな暮らしをずっと続けてたの。

【加藤】そこはパラレルでやってたんだ。

【中村】うんうん。だからその2人に会ったのは2ヶ月くらいしかブランクないんだけど、それから2〜3年一緒にいさせてもらったかな。途中から自分でも仕事を請け負ったりしてたけど、今考えると、2つとも最初は無給で始めてたから、「どうやって生きてたんだっけなあ?」と思うけど。でも食べれるは、食べれるじゃん。一応、無給とは言え交通費とご飯は確保してくれてたから、マイナスはないし、なにより知らないことばかりで面白かった。途中からちゃんとやるならお小遣い程度は払うから、という話になって、段々仕事させてもらった感じ。

【加藤】なんか話聞いてると、ヨーロッパの話も編集の話も料理の話も、とりあえず、「弟子入りさせてください」という世界だよね。

【中村】人が多分重要で。「この人と働きたい」と思ったんだよ。編集の優紀さんにしろ、料理の村上さんにしろ。だから2人が何をしてても本当は良かったんだと思う。この人と働きたい、この人がどういう働き方するのか見たい、そういう感じで入っているので、編集も料理も手段でしかないというか。

【加藤】なるほどね。今聞いててすごい思ったのは、昔から仕事のモチベーションはなんですかって聞かれた時に、「人間に対する興味」っていう言い方をしてるんだけど、色々なお客さんとそれぞれ全然別の仕事をする、というのも、結局そこにいる人それぞれが他の分野にいる人と全然違うことをやっている、というのが面白い気がしていて、今の話を聞くとそこがしっくりくるというか、僕はだから弟子になったことは学生時代のボス1人しかいないんだけど、結構、客商売している時に長いお付き合いになるから、お客さんに弟子入りしてお金をもらってる、感覚はあるかも知れない。

【中村】うんうん、いいよね。当時2人に弟子入りしてたから、弟子入リストって言ってた。

生産の現場へ

【加藤】いいね、それ。ところで、優ちゃんのFacebookとかの投稿を見てて、一番興味を感じているのが、モノ作ってる人の現場に行くじゃん。さっきの弟子の話じゃないんだけど、料理教えてもらうのと、もう一つ、生産の現場に行くということがすごいある気がしていて、客観的に見ててもすごい楽しそうで。

【中村】嬉しい。

【加藤】ああいう料理を作るという時に、生産者を回る、ということをいつくらいから始めたのかなと思って。編集の仕事の時とかにやってたの?

【中村】ううん。そこはあんまり関係ないんだけど、Farmer’s Marketの人達と仕事を通じて付き合いが増えたり、自分の周辺もオーガニックとかに関心がある人が増えて来て。あと料理をやっていくと、素材にあたるんだよね、どうしても。これって、どう考えても、素材が良いからこの味が出てるよねという。美味しいものって、焼いて、塩かけるだけで、超美味しいわけで、それって紛れもない事実なんだよね。だから、ソースをどう、という話の前に、良い素材を知らないと、美味しいものって作れないと思って。しかもそれって、完全にクリティカルな問題じゃん。それをどういう人が作ってるんだろう?というのを見たかったの。美味しい野菜は結構あるんだけど、その上で何で選ぶかというと、その人の思い、みたいなものではないかと思い始めて。

【加藤】こっち側から言うと、思い入れをどういう風に持つか、ということだよね。

【中村】そうそうそう。なんかそれを思った時に、見に行き始めたんだよね。そうしたら、本当に変な人が多くてw、はまっちゃって。職人なんだよね。野菜にしても、ずっとそれをやり続けてる人って、職人というか、研究者で、すごい萌える。自分は一個の道をずっと行けないから。私は蜂みたいなもので、色々な生産者のところに行って、たまに花粉を落としたりするの。そうやって、こういうところにこういう人がいてね、という話が思わぬ繋がりを生んだりとか、副産物がたまに生まれたりする。

【加藤】そういう人達ってあまり動かないからね。

【中村】そうそう。時間もないじゃん。シェフとかも朝から晩まで料理やっていると、どこかに行く時間がないから、こういう人がいたよと情報を持って行くと、「そういうやり方もあるんだ」とか「そこなら行ってみたいな」とかなることが多くて。見て来たものを教える係、「外界ではこんなことが起こってたぜ」みたいな話をしてるの。

【加藤】それは重宝がられるよね。

【中村】でもこっちはこっちで根付いてない焦りみないなのが自分の中にあるから、何年も同じ場所でやって来たからこそ生まれたものには、とっても惹かれる。自分は何を蓄積したんだろうって思う時もあって、最初は結構それで悩んだりもしたのだけど。

【加藤】ある意味での根無し草感というか。

【中村】そうそう。だけど途中から、そういう人にはそういう人にしかできないことがあるかも知れないと思って探り始めて、じゃあ現場に行けるだけ行こう、というふうに振り切ったんだよね。

【加藤】なんか俺もそういうのすごい好きで、特にうちの場合は食べものよりは陶芸家のお客さんがいたりするので、趣味半分勉強半分で焼き物の産地とか行くと、ずけずけと乗り込んでおじちゃんに話し聞いたりしてるわけだが、向こうは売りたい気持ち半分、Webとか言ってる変な奴来たぞ半分で、少しは興味を持ってくれる。作る現場を見せてもらうと、安易な話をすると、それがそういう値段なのかということがわかったりとか、それを作るのになんでそういう期間がかかるのかわかったりとか、そういうのもわかって始めて話できるのかなあと思って。

【中村】そうなんだよね。本当にそうだよ。こんなことをやってるんだ、みたいなことがわかると、一気に香りとかもリアルになってくるんだよね。この前会った農家さんが言ってた話がすごい面白くて、まだ若い人だったんだけど。その人の人参がすごいちっちゃかったのね。「ちっちゃいねー」って言ったら、そうなんだよね、今年はこれくらいしか育たなくてって言ってて。売るの大変でしょう?って聞いたら、「絶対流通には乗らないよ、高くて売れない」って。だけど、小さくても例年とかける手間って一緒だし、売れないと今季の人参の売上は0になるわけじゃん。それって死活問題でしょ。でもその人には買ってくれる人がいて、なぜかって言うと、その人は、『自分の野菜』を買ってくれる相手がいるから。信頼関係を作ってるから、「今回これだけしか育たなかったんだよね、でも味は美味しいんだよ」って言ったら、そういう時もあるよねって理解してくれる人がいる。これだけしか育たなかったら買わないって言われたら、続かないよねって、買っている人も知ってる。その農家さんがその土地で作物を作り始めたのは最近だけど、きっと数年の間にもっと多くのおいしい野菜を作れる人になる。そうしたら、今買っている人の元には格別な野菜が必ず届くようになる。すごい自然な関係だなあと思ったし、その人に無理がなかったんだよね。だからそういうスタンスでやれる農家さんがもっと増えると、若い人でも農家やりたくなるだろうし、もっと気負いが少なくなるんじゃないかと思ってて。悪い意味じゃないんだけど、すごい力が抜けている、自然と一緒にやってる感じが良くて、なるほどなあ、と思うところがたくさんあった。

【加藤】本当に農家さんの一家が食べていくという意味では、お客さん100人くらいその農家さんから買うって決めてる人が入れば、それで回っていくんじゃないかという話は昔からしていて、まあでもJAの仕組みがあってという部分もあるし、一方で直接流通させようと思うと、100人に持って行くまでどうするの?ということも当然あるわけで、だから多分そこには間を繋いであげる仕事が多分あって、優ちゃんの仕事もそういうことかも知れないよね。

【中村】問答無用で、超良いんだよって言いたくなる食べものって結構あって、だから押し付けのようにYOU BOXを送ったりしてるわけよ。

【加藤】あれは楽しくてさ。俺、多分、一番嬉しそうだったでしょw。

【中村】ははは。すごい嬉しかったそれも。実はどんどん忘れていく私のための備忘録のような機能も担ってくれていて、嬉しいなと。

【加藤】これこうやって使いました、という。

【中村】あれだけきちんと使えてる人がそんないないから、よく一人暮らしの男性はそうだと知りつつ無視して送ってるから、人によっては冷蔵庫の底で眠ってたりするんだよね。私がそれをたまに料理しに行ったりとかしてて。

【加藤】個人的には一番早く売り切れたのが沙茶醤。あれが美味くて。

【中村】マジ?あれが一番使えないって人が多かったの。

【加藤】マジで。

【中村】台湾の回って、全部ニッチだったじゃん。1回目の小豆島編は誰でも使い方がわかって、食べられるものだったけど、2回目の台湾編はちょっとやり過ぎちゃったかなという気もしたんだけど、料理そのものに関心がある人とか、シェフとかはすごい喜んでくれて。やっぱり人によるなと。回によってターゲットが違うぞと。

【加藤】最後の方とか人によって渡し方変えてますというのもあったよね。

【中村】食べるビネガーね。絶対これ使えないだろうなって人もいたからねw。

【加藤】でも友達とも話してたんだけど、お金預けて、年に3回送って来てくれるんだよという話をした時に、「加藤さんがいくら動きまわっても行けないところに行ってくれてるみたいだから、いいですよね」という話をしてて。貴重だよね。

【中村】でも、YOU BOXは自分の好きな人とか、伝わるだろうなという人にしか送ってないから、35人限定で最初始めたの。私がメール当初送ったの38人で。3人はあまり家に帰らないからとかの理由でやらなかった人だけなんだけど、買ってくれる人もこっちが選んでるみたいなすごいワガママなボックスで。でも、この人達には利益なしでもおすそ分けしたい、みたいに思ってやってた。それをビジネスにしましょう、っていう話も何社かからあったんだけど、どう考えてもクレーム来るじゃん。ちょっとなあと思って。信頼関係がないとさ、楽しめないところもあるし。

【加藤】それさ、さっきの農家さんに100人のお客さんがついたらそこの農家さんの仕事は回るんじゃないかという話と一緒で、大きなシステムの中で、プロダクトとして売るとなると、齟齬がきたすものでも、小さいパッケージのまま回してると機能するって類のもののような気もするね。

【中村】そうなんだよね、本当に。最近気づいたのは、今も2週間くらいでいる場所が変わるみたいな生活で、外国も色々行くしグローバルな感じに見えるんだけど、やってること無茶苦茶泥臭いっていうかさ。結局、出会った人が信頼できるとかできないとかや、自分の行く道も全部匂いで判断してるの。だから匂いをかげるくらいの範囲の人とどう接するかとか、どう関係性を築いていくかみたいなことしか興味がなくて。これから少し企業と一緒にまた違った形でビジネスにはしていく予定なんだけど。

【加藤】多分、フリーランスの、自分で全部やるって考え方も大事だけど、流通に乗せるとか、アテンション取るとか、全部自分でやろうとしても無理があるということと、無駄があるということがあると思うので、うまくパートナーシップ結べるところと付き合っていけるのは良いことだよね。

【中村】YOU BOXもゆるゆると再開する予定だから。

【加藤】それは楽しみだよね。

【中村】そう言ってくれるのは嬉しい。

【加藤】あと商売という意味で言うと、ちゃんと続けていける仕組みにするということが大事だと思うのだけど。

【中村】全然サステイナブルじゃなくてね、YOU BOX。フランスの食べるビネガーも全然届かなかったし、来たら我が家が工場になるわけじゃん。これ一人で全部やるのは無理で35個が限界だなあとは思ってたし、日本国内ならできるんだけど、輸入するとなると、送料含め大変だから。

【加藤】IKEA然り、物流で費用圧縮して皆グローバルに展開しているものね。モノを世界の各地から自分で届けるっていうのは結構難しいよね。

【中村】あと行けるかなあと思ったのは、企業とかと組んで、コンテナの空きに入れてもらうとか、そういうチャンスはありそうだなあとか思ってたんだよね。でもそれをどれくらい続けるかなあと思うと。

【加藤】まあ、本人が楽しいかって話もあるしね。

【中村】楽しいんだけど、物流までやりだすと、多分、楽しめなくなるよね。それがメインになっちゃうし。

【加藤】そこにフォーカス当てると合理化みたいな話になるから。

【中村】そうなんだよ。あそこの人のあれとあれとあれを持って来て、みたいなのができなくなっちゃう。でもやってて思ったのは、皆喜んでくれるんだけど、やっぱり生産者としてはもう少しコンスタントにオーダーを入れてくれるとやっぱりいいよねというのはあるじゃん。だから今度始まるプロジェクトは、コンスタントにやれそうというのと、地域全体を応援できそう、というのがすごいコンセプトだなあと思っていて。

【加藤】やっぱり消費の、今こういう催事をやってますから、棚がここからここまで埋まってますということだけで終わっちゃうと、一過性のものになってしまう気がして。

【中村】一回は買っても、それがなくなると買わないじゃん。そういうのって残念て言うかね。

ばあちゃんのレシピへ

【加藤】そうだよね。でも今日話聞いてて思ったんだけど、生産者の人に対するコミットメントを一般の人というかお客さんに、どれくらい深く持ってもらうかみたいな。多分、YOU BOXとか入り口じゃない?

【中村】私がどんだけ好きかってのを勝手に語ってるだけだからね。

【加藤】多分それで面白いと思った人が、そこと交流を持ちたいみたいな話とかをうまく渡せていけるといいよね。

【中村】そうだよね。私がもう少しネットでやるのもいいかなと最近は思ってるんだけど。

【加藤】顔が見えると言われて久しいですけど、実際はどういう気持ちでやっているのかとか、どういう日々を送っているのかとかみたいなレベルで生産者のことがわかる機会はないし、少なくともスーパーで言ってるトレーサビリティみたいな話ではないので、そういうのが伝わっていかないといけないと思うんだけどね。

【中村】そうなんだよね。私が匂いって言ってるのも、人によっては温度感って言うだろうし、空気感という言葉になるのかも知れないけど、やっぱりその人にとってのリアルをどれだけ体感できるかだと思うんだよね。それを知っちゃうと、そういうものがないのって、「これ、なんだっけ?」と思うようになっちゃうんだよね。

【加藤】虚しいというか。

【中村】それを作る方も多分すごく虚しくて、伝わらないってわかって。私の友達の有機農家でもJAに行くものと自分が直接売るものと分けてるんだよ。JAに行くのは、誰に渡るのかわからなくなる。だけど、自分の顧客には一番いいものを出したいと思うわけじゃん。この間行った放牧の酪農家さんのところも、放牧でとったミルクと、普通の牛舎で搾るミルクと、全部ブレンドされて出されてるんだよね。これだけやっても、報われない、というか。ちょっとエッセンスは入ってるよね、みたいになっちゃうのは、消費する人も一緒に考えていかないと、流通も変わらないだろうし。

【加藤】ああそうだよね、本当にそうだと思う。

【中村】買う方が変わらないと流通が変わらなくて、流通が変われば、面白い生産者も増えるんじゃないかと思ってて。考えて食べる人が増えればいいなと思うし。

【加藤】ざっくり言うと仲介業じゃん。作ってる人と食べる人の。うちもクライアントと顧客の間でWebを使う仕事だし。そこを交通整理というか、わからなさをわかるようにしていかないといけない、翻訳作業をしていかないといけない気がするよね。まっとうに。

【中村】そうそう。

【加藤】その上で多分、お客さんはこういうことを考えてますよということを、作ってる人に教育しなきゃいけないし、作ってる人はこういうことを考えてますよということを、食べる人に教えなきゃいけなし、多分その両方なのかなと。

【中村】そうだね。本当にさ、いる立場によって、言語が違い過ぎて。YOU BOXでやった小豆島や台湾やフランスとかも、私全然知らないところだったのね。最初からそこに友達がいるからそこにするとか決めたわけではなくて。全然知らない場所で、自分の好きなものにたどり着くために、一体どのくらいの期間があれば辿りつけるのかということを知りたかったの。それを実験してたら、どうやら2週間あれば辿りつける。1週目に色々なに会ってまず種を撒く。2週目になると本当に会いたい人に会えて来る。2週間あれば自分の会いたい人に会えるんだと思ったわけよ。会いたいものとかね。大体、2週間用意すればどこにでも行けると。

【加藤】2回転すれば辿り着ける。

【中村】そうそう。そういう話を考えると、それくらいのレイヤーの人とどこに行っても出会っていて、農家さんにしても同じような志を持ってる人達に会えるし、会いやすい世の中になってるなというのも実感してるのね。

【加藤】会ったよ、という話を別の場所でもできるしね。

【中村】そうそう。だから、すごいやりやすい世の中になったと思うんだけど、でも逆に、言語が違う人って日本の中にもいっぱいいて、日本の中なのにカルチャーショックがあったりするわけよ。海外に行ってもあんまりもうカルチャーショックがなくて、大体同じというか、私がやっていることとか会いたい人というのは大体同じだからね。たまに全然言語が違うなあと思うのは、それこそフリーランスの人と企業人ではぜんぜん違うじゃん。最近、企業の人と仕事することが増えてきたから、なんでこうなるんだろうみたいな、なんでそれはすっ飛ばせないのみたいな、企業だけのルールみたいなのがあるじゃん。

【加藤】それ大変だよね。

【中村】うん。意味が分からないって感じなの。こっちからしたらどうでもいいし、本質的じゃない。そういうカルチャーの違いとか言語の違いって、誰かが翻訳しないといけないんだろうなあと思って。それこそ農家の翻訳とかもそうなんだろうし。

【加藤】なんか、なになにしなきゃいけないみたいな話って、組織の中にいると形骸化されててなになにしなきゃいけないでしかない、っていう状態だと思うんだけど、ちょっと外からプライオリティの振り方を変えて見せてあげて、一番大事なものはこれですよねとか、もっと早く終わらせないといけないことありますよねとか、これどうでもいいですよねみたいな、さっきも言ったような交通整理みたいなことがやれないと、やっぱり本質的に楽しいことができるかどうかということに関わってくるし、本質的に正しいことをやっていかないと食べ物のことは特に誰も良い思いができない。

【中村】誰も良い思いができないことをね、やりたくないんだよね。

【加藤】そうだよね。

【中村】難しいけどね。私が旅をする時に料理と思ったのも、問答無用で皆がハッピーになることって何かって考えたの。その前は社会起業家とか社会課題を何とかするみたいなことに向いてたのだけど、そっちは私にとってリアル感が薄かった。私にとって何が重要かって言うと、皆が笑顔であることとか、誰にとっても楽しいことってなんだろうなって考えて、それってどの国でも重要でしょと思って。

【加藤】そうだね。

【中村】笑顔になって、嫌だな、って思う人なんていないじゃん。それって自分にできそうなのは料理っていうところに行き着いたんだよね。料理とか、食べるっていう行為とか、一緒に何かを作る、しかも自分の口に入れるものだから、一緒に作ったら、その時点でかなりの信頼感がでるわけよ。同じ釜の飯を食うじゃないけど。

【加藤】それすごいわかる。

【中村】だから、すごいな料理、と思っていて。どの国行っても言語を超えるし。

【加藤】そこなんだろうね。今日の話ずっと聞いてて思ったのが、社会は複雑化してて多様ですからみたいなことで、この国の問題解決って手のつけようがない状態になっている気がするんだけど、それに対する解答ってある種すごいシンプルじゃないといけないと思っていて、そういう意味では料理作って食べて美味くて、というすごくシンプルなところから、色々なものにアプローチしていくというのは、前に見てた社会起業とかの世界とかとは違うだろうし、これまでの食にまつわる話とも違うだろうし、すごく可能性があるというか、それをどういう風に自分の生業として活かしていくかというのがすごい楽しみな話ではあるよね。

【中村】そうだね。結構、食って可能性がある気がしててね。クリティカルなものなんだけど、いかようにもというか、幅がすごいあって。

【加藤】そうだね、あと当たり前すぎるという部分も。

【中村】そうそう。最近は「おばあちゃんのレシピ」を世界中で集めているんだけど、80歳以上のレシピ、ぜんぜん違うんだよ。70代前半とか、60代後半のレシピと、80歳以上のレシピって。なんかすごい断絶があって、それって多分添加物の流れとかはあると思うんだよね。60代とかになると、むしろそれ古臭いからって言って、全然受け継げてない。でもめっちゃ面白くて、知恵も詰まってるし、なんでこの土地でこれ使うのという理由まで知ってるし、戦争を経験しているからゼロから作り上げてきたものなの。だからばあちゃんたちが超ロックなわけ。私、ばあちゃんイコールほっこりってイメージは全然なくて、超ロックだなこの人達といつも思っていて、刺激されるのね。私なんかがやってることってまだまだちっちゃいなっていつも思うわけよ。ばあちゃんたちのぶっ飛び具合はすごい。おばあちゃんのレシピを集めてるって言うと、皆、いいねって言ってくれるんだけれど、皆が思ってるイメージとは全然違って、こっちは心してかからないと、ばあちゃんたちに食われるよねw。だから、質問とか間違えると、適当なものとか出してくれなくて、例えばレシピを集めてるというと、ハレの日のレシピをだしてくれたりする。都会から来た人だから、ちらし寿司!みたいな。徳島のちらし寿司は金時豆を乗せるのよ、って言われても微々たる差じゃん。そういうのが知りたいわけじゃなくて、日々どういうものを食べてて、どういう知識がその中にあってということを知りたくて。女の人が作る料理って、ほとんどが誰かのため。だから私女の人の料理が好きで、ずっと食べてても飽きないし、ばあちゃんのレシピなんて、関係性をどうやって築いたかの最たるものでしょう。じいちゃんがこれ好きだったんだろうなあとか、じいちゃんがこういう人だったからこういう味付けになってたんだろうなあとか、そういうのを聞いてるのが面白くて。レシピそのものは、誰もが作りたいものではないかもしれない。日本は特に茶色し、大したものじゃないように見える。だけど、それでも良くて、レシピってスゴイ属人的なもので、ばあちゃんのレシピと、私がそのばあちゃんのレシピで作ったものは多分ちょっと違うし、でもそれくらいの方がいいなあと。そこにあるストーリーがすごい素敵でね。今、はまっててさ。

【加藤】こういうことを言うのは超失礼だけど、優ちゃん、ばあちゃんになったら面白そうだよね。

【中村】ははは。褒め言葉、だね。

【加藤】ですよ。

【中村】人間てさ、年取れば取るほど顔に性格が出てくると思うんだよね。皺見るだけで、この人はこういう笑い方してきたんあろうなあとかさ、やっぱりわかるじゃん。匂いよりも伝わってくるものがあって、このばあちゃんのこの笑い方は只者じゃねえなみたいな。

【加藤】良いおばあちゃんは美味しそうだからね。

【中村】そうそうそうそう。やばいよね。いいんだよそういうのが。

【加藤】なんかでも思ってたより色々な話が聞けて、面白かったです。

【中村】ふふふ。

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