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以前、ET Luv.Lab.で取材させていただいた、イトナブの古山さんから、僕や仲間内のデザイナーのところを1日ずつ、新入社員を武者修行して回らせたいというご相談をいただいたのが2年前の春のこと。トランク片手に仙台から東戸塚までやって来たのが、ナナ、こと太田サヤカさんでした。ET Luv.Lab.に既に登場している、児玉さん景山さん坂田さん迫田さんそして僕。たまに揃ってお酒を飲んだり、時には自分たちのプロジェクトにデザイナーとして加わってもらったりしながら、交流は続いています。

武者修行初日、僕が担当の日に書いてもらったのは彼女のこれからの企画書でした。あれから2年、その彼女の当時の設計がどういうことになったのか、そろそろ総括してみたい気持ちあり、これからの展望を聞いてみたい気持ちあり、ET Luv.Lab.でのインタビューとなりました。

イトナブでの2年間

【加藤】じゃあ行きますか。話を聞くのが初めてという人もいると思うので、最初にイトナブをどういう風に説明しているか、まず教えてほしいんだけれども。

【太田】イトナブは子どもたちにITを学んでもらう機会を作る場所です。その取り組み自体はボランティアのようなものです。

【加藤】子どもに教える方はね。

【太田】はい。ですけど、それ以外にもアプリの制作のお仕事を請けたりもしていて、石巻で私たちが稼いでいる姿を子どもたちに見せながら活動しています。

【加藤】なるほどね、それ大事だよね、ロールモデルというやつ。

【太田】はい、なおかつ事務所を開放して、そういうITに触れる機会を与えたり、ワークショップを開いたり、色々な場を作っています。

【加藤】前回、僕が石巻に伺った時は子供向けのワークショップをやっていたけれど、あれはイトナブが「やりましょう!」って言って始まるものなの?それともイトナブに「やってください!」というオーダーが来て始まるものなの?

【太田】どっちもあるんですけど、あの時は何かやって欲しいというお願いをライツという子どもセンターからいただいて、やる内容は私たちで考えました。

【加藤】それはどの程度の注文が来るの?なんでもいいからやってくださいなのか、子どもたちをこういう風にしたいのでやってください、なのか。

【太田】その時は、なんでもいいので、でしたね。何か一緒にやりたいですね、というのがまずあって。

【加藤】そういうのは結構困らない?なんでもやっていいですよ、という時は。

【太田】そうですね。

【加藤】あのワークショップの形はどうやって考えたの?デジタル絵本をやろうと思ったきっかけ。

【太田】あれは元々イトナブの代表の古山さんがアイデアを考えて、絵本を作るワークショップをやろうということになったのですけど、そこから色々改良というか、こういう風にしていった方がいいんじゃないかというのを私から提案していったら、いつの間にか、企画・運営が私になっていました。

【加藤】そうなんだ。普段のデザインの仕事でさ、あんまりデザイナーとして企画の方、関わらないじゃない。

【太田】そうですね。

【加藤】デザインだけの発注が来ると。

【太田】企画はあの時初めてでした。

【加藤】あ、初めてだったんだ。あの後、子どもの反応とか聞けたの?

【太田】あの後は聞けなかったです。

【加藤】そうなんだ。あそこに来てくれた子たちというのは割と顔見知りだったりするの?それとも初対面だったの?

【太田】全員初対面だったんです。

【加藤】そうだったんだ。

【太田】ライツに普段よく来てる子たちが来てた感じですね。

【加藤】あの時はデジタル絵本だから、エンジニアとデザイナーと両方ちゃんと機能しないといけなかったじゃない?ああいう形でのワークショップというのはずっとやっていることなの?

【太田】あれは初めてでした。

【加藤】初めてなんだ。その次とかもやれそうな感じ、感触はあった?

【太田】ありましたね。あの時初めてやって、いくつか問題点とかも見つかって、ミーティングして、改善点洗い出して、どうした方が良いか話し合ったので、次のやることは見えていますね。

【加藤】なんかさ、イトナブとしては仕事なんだけど、イトナブの事業としてはボランティア、みたいな感じじゃない?そういうことやる時のゴールというか、目標みたいなのって置いてやっている?

【太田】子どもたちに対してですか?目標はあります。とにかくITに触れて、楽しんでもらう。というのが、目的というか、まず第一のゴール。その次のフェイズでITに興味を持ってもらう。楽しんでもらうというのと、興味を持ってもらう。楽しんでもらうという方がきっかけになると思うんですよね。

【加藤】掴みの方だよね。

【太田】こんなことやってる団体が石巻にいるんだとか、こういうITでの遊び方があるんだということを知ってもらって楽しんでもらうというのと、そこからはまちまちなんですけど、興味を持ってイトナブに行きたいという子も出てくればなと。あまり多くはないのですけど、古山さんのマインドとしても、誰か一人にでも刺さればいいという考えなので。

【加藤】引っ張って来た子もいるんだろうけど、「頼もう!」って来る子もいるんでしょう?ここ何やってるんだろうみたいな。

【太田】そうですね。あの後、ライツでITおもちゃ体験会というのを開催したんですよ。

【加藤】おもちゃってどんなの?

【太田】ガジェットで、Little Bitsって機械剥き出しのシンセサイザーの原型みたいなものを回路のように組み合わせて音を作るものや、モフバンドというバンドを振ると携帯と連動していて、降った振動でアプリから「シャキーン」って音が出るようなものとか。

【加藤】へえ。面白そうだね。そういうリアクションある物良さそうだね。

【太田】そうですね、イトナブはすごいそういうガジェットが揃っているので展示会のようにやったら、最近、それがきっかけで小学生の男の子がイトナブに来てくれました。マインクラフトをいつもやっているんですけど。

【加藤】そうなんだ。でもそういう入り口が大事だよね。僕らだって最初にデジタルっぽいもの触ったのとかファミコンが流行ってゲームからとかでさ、今の子たちにだけ真面目な導入を求めても申し訳ないというかさ。最近だと、色の勉強会とかもしてなかった?

【太田】はい、しています。

【加藤】あれデザイン寄りだよね。

【太田】そうです。色の勉強は去年の春頃から、毎週通ってくれてる小学6年生の子がいるんですよ。その子、最初は開発の方を講習のように勉強していて、シーズンごとに分けていて、開発シーズンが終わったので、次はデザインシーズンを半年くらいやろう、次は開発に戻るか、音楽とかにも行くか、と考えています。

【加藤】ああ面白そうだね。イトナブ、DJいるもんね。

【太田】そうですね。講習を毎週やっているのは今のところその子だけなんですけど。

【加藤】色々な経験が一回できると良いよね、みたいな感じなのかね。ジョブローテーションみたいな。

【太田】そうですね。その子は学校の勉強についていくのが難しいそうで、楽しく学ぶことに興味を持てたり、将来の仕事に結びつくようなことができないかな、というような相談をお母さんから受けたんです。

【加藤】なるほど。さっき話が出ていた、古山さんが言っている大人数面倒を見れなくても良いから、一人に刺されば良いという話というのは、ある種そこだと機能しているのかも知れないね。

【太田】その子、結構デザインが上手というか、絵を描くのすごい上手なんです。開発やってたんですけど数学がちょっと苦手で、とっつきずらかったみたいなんですけど、デザインの方は好きみたいで、センスも感じられて、将来有望だなと。

【加藤】やっぱり人にモノを教えてる時って、興味持って聞いてくれるとかもそうなんだけど、この人将来有望だなって思えるところに幸せがあってさ。自分が歳をとるのも楽しみになるというかさ。ナナちゃんみたいな若い子に歳取るとか言ってもしょうがないんだけど。そういう感覚とか多分大事だよね。

【太田】その子が来てから私考え方結構変わって来て、逆に学ぶことが多いというか、子どもの目線から見たものって大人じゃ気づけないことが多いんだという。

【加藤】わかんないけど、もしかしたら、デザインで気づかないといけないことって、大人が普通に考えていると気づかないところ、ということかも知れなくて、そういうのが勉強になってるのかも知れないね。

【太田】勉強になってます。ここがなんでこうなの?とか、どうして?とか、聞いてくる子なんですよ。その時に「うっ」ってなる時があったりとか。

【加藤】意外とシンプル過ぎて突きつけられると困る質問ってあるよね。

【太田】でもそれによって考えるんですよ。子どもにもわかりやすいように噛み砕いて、どう言ったら伝わるんだろうとか考えるようになって、子どもに対する説明とかデザインって、究極的に優れたUX/UIなんじゃないかと思うんですよ。

【加藤】そうなんだよね。年齢に関係なく伝わるとか、年齢に関係なく働きかけれるとか、例が良いかわからないけど、学習塾のポスターで「シカクいアタマをマルくする」ってキャッチコピー書いてあるのわかる?中学校を受験する子用ののポスターに試験問題が出ていて、小学生が読んでも「シカクいアタマをマルくする」ための問題なんだな、というのがわかる。多分そういう、人生経験による「慣れ」がなくても、子どもがパッと見てわかるものとか、パッと見て考えられるものとかって、すごい大事なんだろうなって感じするね。

【太田】それで最近、アイコンとかサインデザインとかにすごい興味があって。勉強中です。

【加藤】そうかそうかユニバーサルデザイン的なことだ。

【太田】そうです。

デザインとチーム

【加藤】ナナちゃんは元々デザインは何で興味持ったって言ってたっけ?

【太田】デザインはポスターとか印刷系とかで元々興味を持って、学校でもグラフィックをずっと勉強してました。

【加藤】Pinterest見てもそんな感じだよね。

【太田】ははは、そうなんですよ。専門学校を卒業するまで、ケータイのデザインとか全然興味なかったというか、そういうデザインが存在することに気づかなかったんですけど、就職する時に知って調べたらすごい面白そうだなあと思ったんです。より人の生活に近づいたデザインだなと思って。

【加藤】そうかそうか。普段使うものだもんね。

【太田】そうです、そこに興味を持って。

【加藤】今さ、イトナブで請けてるアプリの開発とか、あとWebもあるのか、そういうのではいわゆるUIデザインをやっている感じ?

【太田】そうですね。UIデザインです。開発はちょっと勉強中です。

【加藤】そういう時ってエンジニア側とどういうやり取りしている感じなの?誰かもう一人ディレクションする人がいて、デザイナーとエンジニアがいるのか、それともデザイナーとエンジニアがフラットでガチャガチャやっているのか。

【太田】アプリに関してはデザイナー、エンジニア、フラットですね。近くにいるので、話し合って。企画は主に古山さんなんですけど、投げていくので。

【加藤】任せてくれるってことだよね。

【太田】はい。WebはうちWebコーダーがいないので、外注なので、私がデザインしたのを指示書を作ってお渡しして、わからないところをやり取りしながら進めてます。

【加藤】前にうちに来た時にペライチ作ったじゃん。あの時にコミュニケーションのところをうまくやりたいという話があったので、あの後そういうのうまくできてるかなと思って聞いたんだけど。

【太田】そうですね。前よりは。

【加藤】なんかさ、前の会社がどうだったかわからないんだけど、結構、デザイナーとエンジニアがともすれば距離あるじゃん。でっかい組織の中だと。今、隣の席だもんね。

【太田】そうですね。そこはすごい近いです。

【加藤】じゃあエンジニアの使ってる言葉とかを聞いてても、割と違和感なく入って来る感じ?それとも向こうが合わせてくれてる感じ?

【太田】どっちもですね。私も一回開発のことを知りたくて、Javaとか勉強したことあるので、簡単な言葉くらいはわかるんですけど、あっちも合わせてくれていて、噛み砕いて話してくれています。

【加藤】共通言語を持ってるみたいなのがすごい大事でさ。プツッ、プツッ、って切れちゃうと、機能とデザインがちぐはぐなものができあがっちゃうと思うんだけど、イトナブくらいタイトにやっていると、スクラムって言葉があるくらいで、割と齟齬が出ないという意味では良いよね。

【太田】そうですね。

【加藤】うまくいかないと両方悪いってことになるけど。

【太田】はい。前の会社ほんとに分かれてたんですよね。社内でもその壁なくそうということで勉強会開いたりということはあったんですけど。

【加藤】島が違うもんね。

【太田】ただ、絵を作って送ってるだけって感じがあったので。

【加藤】ベルトコンベアーで流れている感じになっちゃう。

【太田】そうでした。今は本当に一つのチームで一つのものを作ってるんだって感じがあります。近いからこそ。

【加藤】そういう意味で言うと聞いてみたかったのが、社会人になる前にモノを作ることをチームでやったことってあった?ないし、チームスポーツとかやったことってあった?

【太田】チームスポーツは学校の授業くらいですね。

【加藤】じゃあ割と専門学校いた時もモノを作る時は一人で作っていた?

【太田】そうですね、卒業制作で、合同制作みたいな形でチームで作ったりとか、あと授業で一回やったことはありました。

【加藤】グループワークみたいなやつだ。当時はどう思っていた?グループワークみたいなの。俺とか学生の時、面倒くさくて嫌だったんだけど。

【太田】本当ですか。私はすごい楽しかったです。一緒に仕事している気分になれて。

【加藤】そうかそうか。その辺はある種デザイナー向きというか、チームで動くのは向いてたのかも知れないね。

【太田】そうかも知れないですね。結構グラフィックデザイン科の人って、一人で黙々と描いたりするのが好き、って人も多かったですからね。

【加藤】もうなんかイトナブのFBページの投稿眺めているだけで、すごい楽しそうだもん。和気藹々としてるなこいつらと眺めている。

【太田】ほんとですか。それは良かった。でも真面目に働いている時は真面目に働いてるんですよ。

【加藤】それ言っとかないとね。

石巻で働くということ

【加藤】あと聞いてみたかったのが、ナナちゃんって石巻出身ではないじゃん。で、石巻って場所を今どう思っているかというのを聞いてみたかったんだよね。でも、イトナブには石巻出身じゃないけど東北出身の人とか、石巻出身でも東北出身でもないけどイトナブに来てる子とか、色々な人が関わってるよね。

【太田】そうですね。私はあまり石巻という場所に執着はしていなくて。石巻という場所が好きで来たという人も勿論いるんですけど、私はそうではなくて、古山さんがやってることとか、イトナブがどういうことやってるかとか話を聞いて、イトナブが面白そうだな、と思ったのがきっかけで、今、石巻に住んで1年ちょっと経ちますけど、街自体がすごい好きなのかと聞かれると。

【加藤】いやあ、住んでる町が好きで好きでしょうがないっていうのも結構変なテンションだと思っていて、住んでいる、って普段の普通のことじゃん。だから郷土愛とか町を元気にしたいみたいなこともあるであろう一方、住んでる場所って本来的にそんな特別なことになり得ないんじゃないかなという気もしていて、それも普通のことかなあと思うんだよね。一方で、最近石巻どうなんですか?とか、最近東北どうなんですか?ということを、周囲から聞かれたりもするのだけど、そういう時にどういう説明をしようか、ということで、たまに君たちの話とかを使ってるわけ。

【太田】そうなんですね。

【加藤】ITやってる人たちが、若い子育てて、ということが続いているという話とか、ISHINOMAKI 2.0の話とか、巻組の話とか、簡単にだけどすることはあるのだけれど、ちょうど今5年が経ってさ、これからの5年間というのは今までと違ったものになりそうなのか、ずっと今が続いていく感じなのか、現場で周りを見ていてどうなのかなと思って。

【太田】周りを見ていて思うのは、もう震災ってワードで活動できない、みたいなことですかね。

【加藤】良くも悪くもってことだよね。

【太田】そうですね。石巻は震災があったからということにかかわらず、必ずしも若者にとってクリエイティブな街ではなかったけれど、今色々な人が外からも集まって来てる状況の中で、その人達を活かしてもっと頑張っていかなきゃいけないんだ、震災というワードに頼らずに、もっとクリエイティブなことをして、石巻盛り上げていきたい、という感じと、加えてちょっと焦りもあります。

【加藤】何というか、石巻でやること自体が大義名分になるのってもしかするとあまりよくないことかも知れなくて、住めば都って言葉あるでしょう。すごい面白いことをやってる人たちが、そこにある環境も好きで、続けていけるというのが自然だと思っていて、ある種、震災のことを汲んで動くというのはイレギュラーな取り組み方ではあるから、それを10年、20年、30年続けてください、って言われても、やっぱりなかなか難しいんじゃないかと思ってて、そこは自然なことだと思うよね。でも石巻に友達多いでしょ。今までの流れだとそう思われなそうだ。

【太田】ははは、多いです。

UXデザイン、という言葉に対する違和感

【加藤】それは良いことだよね。僕も良くしてもらっているし。あと聞きたかったのは、UXデザインという言葉があって、最近、僕の名刺にもUXデザイナーって書いてあったりするのだけど、さっき話した子供向けのワークショップなんかは、完全にユーザの経験をデザインしないといけない仕事なわけじゃん。一方でさ、スマホの画面見てると、まだまだ想像しづらいっていうか、むしろ手触りのあるところの方が、経験ということはわかりやすいのかなという気はしていて、ナナちゃんの感覚として、2年前くらいからUXの話をちょいちょい聞いてると思うのだけど、今どう思っているのかなと思って。

【太田】最近、UXデザインという言葉に少し違和感を感じていて。

【加藤】おうおう、それはどんな?

【太田】なんかまだ自分の中でうまくまとまってないんですけど。

【加藤】まとまってない状態ではいて良いよ。

【太田】はい。UXにデザインという言葉をつけることによって、その人にどういうことを体験してもらうかまでの流れの仕組みを考えたりするわけじゃないですか。そこをUXデザインという名前をつけてしまったことによって、「切れている」感じがしていて。

【加藤】ああなるほどね。

【太田】グラフィックデザイナーって、今のUXの部分も含めてデザイナーだと思ってるんです。それを分割しちゃうと、残りはなんだんだろうって。UIデザインとUXデザインって、どうして分けてあるのかな?って。

【加藤】うんうん、それは授業をする気はないんだけれど、UXデザインって言葉に付随して色々な考え方やフレームワーク、考える仕組みみたいなものが言葉とともに出て来た時に、それを適用するためにUXデザインって括りが必要だったわけだけれど。今まで適用されてなかったものだから。いくつかのツールが便利なものがあったり。なんだけど、おっしゃる通り、チラシをデザインすれば、それがどういう風に配られるかということを含めて本来デザイナーは考えなければいけないし、アプリのデザインをやったら、アプリがどういう風に使われて、もっと言うと、その人がどういう風にどんな顔して楽しむか、というところまでUIデザイナーがするはずだよね、グラフィックデザイナーがするはずだよね、というのは結構自然な考え方だと思うんだよね。ただ問題は、ほうっておくとそれしなくても良いってことになりかねないよね、ってことにあって、とは言え作るものがアイコンだったりアプリだったりすると、作る方にすごい引っ張られていっちゃうことあるでしょう、日々の仕事の中で。それを作ることから引き離してあげて、デザイナーが作ることから自由に考えられる状態を作ってあげて、また作るところに戻って来るというようなことをやらないといけなくて、わかりやすく言うと、パソコンの前にずっと座っていないといけないデザイナーは可哀想という。デザイナーがモニターから離れる時間を作るための、一つの良いキーワードだと思っていれば、割とUXデザインみたいな話も機能するかな、という風には思うよね。なんかでも抱えている違和感というのはすごいわかる、本来デザイナーであれば皆やるべきことでしょ、ってことだよね。

【太田】はい。

【加藤】後はUXデザインって言う概念は、新しいエッセンスを含んでいるから、それが最新のこととして走っている限り、勉強するべきことは現場にいる人にもあるだろうし、バランスだと思うけど、イトナブみたいな現場にいる人は、グラフィックデザイナーがいて、UIデザイナーがいて、UXデザイナーがいて、じゃなくて全部やれないと駄目じゃん。そういう時にどうやって新しいものを取り入れるかみたいなことは、違和感があっても勉強せざるを得ない、時代が前に進んでいくから、というのはあるんじゃないかな、というのは話を聞きながら思ったかな。

【太田】前に同僚に「ナナってUIデザイナーになりたいの?UXデザイナーになりたいの?」って聞かれたことがあって、その時に、「ん?」って思ったんですよね。

【加藤】なるほどね。そこは完全に僕の職業観の話になっちゃうんだけど、俺何屋かよくわかんないじゃん。プログラム書く人になりたいのか、企画する人になりたいのか、デザインする人になりたいのか、よくわからないけれども、現場にいると、僕のお客さんはどれか一つをやってくれってオーダーじゃなくて、なんとなくその全部をフォローできる人を、お客さんの商売の側に一人置いときたいというのがあったりしてさ。世の中の学問のピラミッドみたいなことで言うと、なになに分類のなになに分類のなになに分類のどれを取りますか?みたいな話になるんだけど、それこそUXであってさ、ユーザ目線で考えると、自分が何が専門かとかあまり関係ないじゃん。自分にとってどうか?ということを考えると、UIデザイナーになるべきなのか、UXデザイナーになるべきなのかみたいなことはあるかも知れないけど、今抱えているプロジェクトのためにとか、接しているユーザのために、自分がどう「在らなきゃいけないか」どうなりたいかじゃないくて、どう在るべきか、っていうのは違いがあると思うんだよね。多分、ナナちゃんが本当に話したいのは、どうなりたいかじゃなくて、どう在りたいか、ということだという気がするんだよね。人間存在としてどう存在しているべきかという。それは結構正しいと思う。

【太田】ありがとうございます。

これからの在り方

【加藤】それはね、デザインの話だけじゃなくて、コーチングとかしている人たちも最近良く言っていて、「在り方」って言うかさ。だから、職業観にもそういうものを持ち込んでも良いのかも知れないよね。どうなりたいかより、どう在るべきか、というか。そこで2年前の話に戻るんだけど、太田サヤカはどう在りたいですか。こういうことをちゃんとしたいと思っていることとかある?新年の抱負を聞かせてくれても良いけど。

【太田】そうですね。2年前は思いやりのあるデザイナーになりたいって言ってました。それに関しては、今の会社ではあの時学んだことを活かせてるかなと思います。エンジニアとのやり取り、同じチームでの思いやりであるとか、クライアントとのやり取りをもっと密にしようとしたりとか、お客さんのことを考えるのは勿論ですけど。前の会社では事務的に働いている感じだったんですけど、コミュニケーションに注意するようになりました。やっぱりあれから色々お仕事やらせていただいて、ちゃんとコミュニケーション取れなかった仕事とかもあって、そこで作られたものってやっぱり良くなかった、という反省もあり、この仕事って作るだけじゃなくて人とのコミュニケーションが最終的に作るものにも大きく反映されるなって実感しました。

【加藤】なるほどね。なんかさ、コミュニケーションって意外とマジックワードって言うかさ、うまく人と話せることもコミュニケーションだし、相互理解みたいな意味もあるかも知れないし、デザインの文脈で言うと問題をどういう風に解釈するのかもコミュニケーションだし、言いたいこと言うというのもコミュニケーションだけど、伝えるべきことを伝えるというのもコミュニケーションだよね、とかさ。なんか色々あると思うんだけど、太田サヤカなりのコミュニケーションとは、みたいなのある?

【太田】コミュニケーションとは。私は相手が何を考えているのかをちゃんと聞く、わかろうとするのがコミュニケーションだと思います。ただ、聞くだけじゃなくて、相手が頭の中で何を考えているのかというのをちゃんと聞いて、汲み取る、それがコミュニケーションなんじゃないかと思います。

【加藤】じゃあもしかすると前にうまくいかなかったかも知れないと言っていた仕事は、相手のことが良く聞けなかった、ということかも知れない。

【太田】そうです。相手の言うことを、了解しました、って返してて。

【加藤】実は了解できてなかったぞと。よくある。でしたっけ、みたいなやつでしょ。

【太田】そうですね。やっぱり聞かないと出てこないこともあって。

【加藤】質問する力とかもすごい大事だよね、デザイナーはね。仕事仲間のデザイナーと打ち合わせ行くと面白いよ。僕なんか割と雰囲気で話しているんだけど、聞かなきゃいけない質問をお客さんにちゃんとするから、脇でホー、と思ってるんだけど。

【太田】ははは。あ、抱負。これからのUXについて?

【加藤】ううん、UXの話は良くて、今年どういう仕事していきたいか、で良いよ。

【太田】今年はですね、さっき言った、子どもに聞かれた時にどう答えるかという話からなんですけど、去年子どもとたくさん接することが多くて、色々なことを気付いたりとか学んだりとかしたので、気付いたこととか学んだことを今年は仕事にアウトプットしたいです。やっぱりわかりやすさとか、デザインの説得力とか、そこをしっかりやっていきたいなと。究極、今教えている小学生とかに、「これってどういうこと?」って聞かれた時に、誰にでもわかる言葉で説明できるようにしたいです。先日、迫田さんがFacebookに挙げていた今年の抱負にちょっと近いかも知れないです。

【加藤】ああ、文章書く、って言うね。

【太田】そうですそうです。最近は少し子どもに「デザインってなに?」って聞かれたら、どう答えようか、考えるようにしています。

【加藤】でもそうだよね。当たり前になり過ぎて、大人には聞いてもらえないこととかありそうだよね。多分、子どもはそれを聞いてくると思うので。そういうことを考えるのはすごい大事なことのような気がするよね。

【太田】そうですね。

【加藤】やっぱりデザインって与件がないと仕事しづらいんだよ。何も条件がないと難しくて、だから最初のワークショップの時に好きにやってと言われて困らない?という話をしたのもそういうことで、隈研吾さんがデザインは制約を受け入れることから始まるみたいなことを言っていて、こういう条件があるから、こういう建物を作りましょう、という話に繋がっていく。だから最初の聞く力とか、質問することとか、その辺のことってずーっと大事なことのような気がするんだよね。ある種、インタビューの仕事の、インタビューする側は、デザイナーっぽい。リアクション芸だからさ。もしかしたら、そういう仕事なのかなという気がするよね。無から有を生み出す仕事じゃ無いじゃん。有から有を、みたいな感じだから、その辺がコミュニケーションに対して思っていることと、プロダクトに反映されるアウトプットの部分と、うまくリンクしていけば良いね。

【太田】そうですね。

【加藤】後は、良い質問をしてくれる周囲の人を大事にするってことが大事で、どんなに良いものを持っていても、良い問いかけをしてくれないと答えられない、と思うのだよね。子どももそうだし、古山さんもそうだし、職場の仲間もそうだし、これから飲みに行くデザイナーの面々もそうだし。なんかそういう良い質問をしてくれる人を大事にすると、デザイナーは立つ瀬があるかな、という感じがするね。

【太田】そうですね。もっと欲しいです。

【加藤】そうかそうか。それはどんどん広げていきましょう。じゃあ、今日はこの辺で。ありがとうございました。

【太田】ありがとうございました。

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