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石巻に出かけるようになって、何人もの若ものと知り合って来ました。そのうちの一人が渡邊享子さん。震災直後からゼミ生として石巻に入って、この5年間、石巻に住み、石巻に根ざして、街のことに取り組んで来た一人です。

これまでにユレッジに寄稿をお願いしたり、プロジェクトの取材をさせてもらったりして来ましたが、案外じっくり話をするのは今回が初めてのこと。震災後5年って節目だとも思うのですが、彼女の言葉を通じて、復興という少し掴みどころのないものが、ちょっと離れた場所に住む人にも手触りのあるものになるんじゃないかなと思います。

変わりゆく街、変わらない街

【加藤】最初、なんの話から始めようかと思ったんだけど、久し振りに石巻を歩いた感想から始めたいなと思って。ずっとこの5年間で変わり続けてるんだろうと思うのだけど、最近、石巻に関わっている人達のSNS投稿も含めて見ていると、風景が変わって来たんじゃないかという気がしていて、新しいものがいっぱい建って、という印象がざっくりとしたものとしてあるんだけど、享子ちゃんどういう風に見てるのかな、というのを最初に聞いてみようかなと思って。

【渡邊】なるほど。風景ですよね。どうなんだろう、確かに大きい建物は増えたし、ここ橋通りCOMMONとか、建て替わった建物もありますし、COMICHI石巻も建ちました。私は震災後からしか見てないですけど、例えば熱気だったりとか、若い人たちが集まって外で飲んだり、夢中になって何かに取り組んでいるっていうマインドは、変わらないものとして街の中に溢れ出して形になって来ているのかな、という気がしています。

【加藤】じゃあ、とてもポジティブな。

【渡邊】そうですね。ここの橋通りもそうですけど、震災当時はこういう場所で焚き火しながらビール飲んでたりしたんですよね。松竹前もそうかも知れないし。そういう場所って確立されてなかったですけど、サブカルチャー的にはあって、それが段々市民権を得て来たのかなというか。やっぱり外で飲むのって気持ち良いじゃんとか、カルチャー的な人が集まってたり、かっこいいもの集めて発信したり、オープンな場所があって、若い人が集まると何か生まれるよね、という感覚がありました。あの時はアンダーグラウンド的だったけれど、段々それって良いことだよね、っていう風に市民権を得て来たのかなと思っていて、そこが進歩というか。変わらないマインドと変わっていく風景っていうのがあるなあ、という印象ですね。

【加藤】今、話を聞いていて思ったのが、多分原点にはDIYみたいな話があるとして、それがある種アウトプットとして建物のような形を持つまでには時間かかるのだろうなと思うのと、ユレッジでCOMICHI石巻のローンチの取材させてもらった時にも思ったんだけど、合意形成というか、関わる色々な人達の意見を吸収しながら進めないといけないということと、2つあるのかなあと。

【渡邊】あると思いますね。ただ、自分がやって来たことって、基本ゲリラだと思っていて、私は都市計画が専門なんですけど、計画して合意形成するというのが全てではないと思うんですよね。

【加藤】それは合意形成って言葉の使い方がよくなかったかも知れないね。

【渡邊】街の人、皆で同じビジョンを持って、それに向かって何かを作っていくというのは、感ずるところはあまりずれないにしても、一致させるのは難しいと思うのですよね。壮大な構想があって、それに向かう計画があってというのと私のやってることは少し違うだろうと思っていて、5年間同じものを信じ続けるというのは難しいことだから。COMICHI石巻もずっと計画して来ましたし、合意を諮りながら来ましたけど、戻って来て入居したいとか、ここで店ができたら良いとか、ボランティアの若い人たちに恩返しできることができたら良いみたいなことって、計画じゃなくてほぼゲリラだと思うんですよね。お茶屋さんの2階にシェアハウス作っちゃったのもゲリラだったし。まちづくり会社がやってますけど、こういう橋通りCOMMONのような仮設の空間が市民権を得るのも民間発意と言うか、誰もが望んでたものじゃないものかも知れないけど、できてみたらやっぱり良いよねという後追い的に認められるものになって来ていて。そういうのって都市計画上では賞賛されることではないけど、意外と自然なあり方なんじゃないかなと思うんですよね。やりたいって思う個人がいて、その目標に向かってそれぞれの個人個人が走り続けて、そういうものってきちんと形になって来ています。個人の強い思いがないものってなかなか形を得れないですし、周りの人の理解も得られないですけど、理解されづらくても、それを信じてる個人、やりたいと思ってる個人がいるからこそ段々形になって来ていて、そういう個人の思いみたいなものに寄り添いながら一緒に形にして来た、というのがある意味自分の仕事なんだろうと思います。

【加藤】自負というか。

【渡邊】そうそう。形にして来た、って言うと偉そうかも知れないですけど、形にする現場の中に身を置けたというのが5年間だったのかな、という気がしてますけどね。

【加藤】多分、形にするまでの時間というのと、形にしてからの時間というのがあると思うんだよね。僕の仕事でもWebサイトを作り上げるまでの時間と、公開して走りだしてからの時間というのがあって、それって性質の違うものだと思っていて、ただやっぱり一本筋が通っていないと、前のことを受けて次に進めないとか、次のことでトラブルがあっても前に戻れないとかあったりすると思うのだけど、そこは想いとかモチベーションとか、あと楽しい、とかか。そういう貫くものがあるんじゃないかなと思うんだよね。

【渡邊】そうですね、でもなんか、それはすごいよくわかります。案外、建物とかハードとか建築の仕事って、作る人と使う人が全然違ったりするんですよ。

【加藤】ミスマッチ?

【渡邊】いや、単純に主体が違うというか。COMICHI石巻の話で言えば、最初は地権者の思いとか、住んでた人の思いとか、そういう人達の思いに寄り添い続けて来て、でも使う人って違うわけじゃないですか。作る人の思いも素晴らしいし、使う人の思いも素晴らしいですけど、必ずしも一致しなかったりとか、同じ方向は向いてるのかも知れないですけど、微妙に思いだったりニーズだったりというのが違ったりもします。私って職業が何かと聞かれるとすごい難しいんですけど、設計士でもないし、大工でもない、管理運営ってところが私の仕事だと思っています。作るところからずっと寄り添い続けて来た強みというか、作るところから使う人までずっと寄り添い続ける立場の重要性ってあると思うんです。だからこそストーリーが一本化していくというか。

【加藤】それって面白い話で、前段と後段という言い方をすると、どこかでスイッチのポイントがあるはずじゃん、作り手から使い手への。それって割と切り替えるものなの?それとも時間をかけて摺り合わせていくものなの?

【渡邊】擦り合わせる必要はないと思うんですけど、ずっとそこに一貫して関わり続けていくことによって一本になっていくのかなと思っていて、「作る人の思いがこうだったんで」ってことを使う人に強制していくのは、辛いかな、と。使う人が最大限楽しいということに、どうストーリーを繋げていけるかか大事だと思うんですよね。

【加藤】わかる。ツナギ目のところに巻組みたいなものがあって。

【渡邊】私は皆と擦りあわせ続けるんですけど、使う主体だったり作る主体だったり、自分のクライアントに関するところはずっとその人達の自由というか、個体が変われば思いも違うし、思いも全く一致するものじゃないじゃないですか。自分はスイッチしていくし、擦りあわせ続けるんですけど、寄り添い続けることがプロジェクトを作り手も使い手も含めて一本にしていく、そういうことを信じたいなあと。

【加藤】信じたい、っていうのが結構面白いと思っていて、自分の仕事があって、自分の役割があって、でも一方で、地権者の人達と入居する人達と、ある程度信じながらやらないと、摺り合わせというか、寄り添うことって多分できないのだろうなと思うのだけど、そこに手応えがあると、自分の仕事を信じられる、ということにもなって来るのかなと。

【渡邊】そうですね。

【加藤】そういう感じなのかも知れないねえ。僕も今、BtoBtoCのWebサービスの開発の仕事に関わっていて、企業のクライアントがいて、一般のユーザがいて、そこの摺り合わせのところにサービスの設計があるから、その感覚ってすごいわかるし、どちらにも要件はあるので、例えば今この一点で解決できなくても、1ヶ月後に皆で努力していくともう1回擦りあわせたところで擦りあうとか、その間に何をするかとか、考えることがあって、ただどちらをも信じられないとやっぱり成立しなくて、ユーザを愛せとか、クライアントを愛せ、みたいなことになって来ると思うんだけど。

【渡邊】そうなんですよね。難しんですけどね。

巻組という会社

【加藤】ちょっと話変えてみようと思うのだけど、独立しようと思って独立した?

【渡邊】あ、というと。

【加藤】いや、僕みたいなのとも、普通のフリーランスとも、享子ちゃんってもしかしたらちょっと違うのかもなあという気がしていて、震災復興支援でゼミから最初入ったわけじゃん。その後の活動の経過の中で、今の巻組のスタイルというか、やり方を選んだわけでしょ。それってじゃあ会社に勤めていて、明日から力を試したいからフリーランスとして独立、みたいな話とは大分違うんじゃないかなって気がしてて。もしその辺の話聞けるなら聞かせてもらいたいんだけど。

【渡邊】なるほどね。会社建てたのには色々な理由があるんですけど、元々、ISHINOMAKI 2.0には給料もらって職員としていたわけじゃなくて、社内フリーランスという感じだったので会社をつくったのは、この先、石巻で継続的に活動していくための生業をつくる上で自然なながれでした。また、予算もらって、それを使いながらプロジェクトを興していくというやり方よりは、もう少し持続的にこの街で仕事をしていったり、何かを興していったりするには、やっぱり給料も発生しないし、稼ぐビジネスをしないといけない。そこで巻組が必要になったんですよね。ISHINOMAKI 2.0の中での2.0不動産っていう立ち位置は、予算を取って来て回していくというやり方だったんですけど、やはりビジネスとして成立するやり方をしていかないと、自分が生き残れないし、人がこの街に入って来るという流れを継続させたい、サービスをより本格化しようと考えた時に、会社を作る、営利企業を作るというのが、選択肢として大事だと思いましたし、それが、まちづくり的にも重要なのなのかと思って。

【加藤】そういう会社に巻組がなってないと、石巻の街で役割を果たせない、ってことだよね。

【渡邊】巻組的な働き方をする会社が、これからこそ必要なのだろうな、という風に思ったんで、独立した事業として見せたかったというのもありますね。だから2通りですね。自分がここで食べて行きたかったという個人の話と、実際ビジネス自体も何かの1プロジェクトというよりは、不動産の管理だったり運用だったりというのが、ビジネスとして回っているというのをこの場所で可視化させてみたかった、チャレンジしてみたかった、という2通りありましたね。

【加藤】それをやるための組織を作ったってことだ。

【渡邊】使命感はありましたね。

【加藤】使命感に組織をついてこさせたって感じだ。

【渡邊】ははは、どうなんですかね。それに興味ある個人をまとめていった、みたいな感じではありますけど。

【加藤】今、何人でやってるんだっけ。

【渡邊】今、3人ですね。それに最近パートで来てくれる女の子が増えたので4人スタッフでやってますけど。個人のフリーランスみたいな動きもあるじゃないですか。クリエイター系の写真家とかデザイナーとか、そういう専門的な職能をサービスにして食べていこうというよりは、やっぱり街の課題を解決するというか、街の課題に対応するというか、空いている部分を埋めていくのをビジネスにしたいという。

【加藤】問題解決型というか。

【渡邊】そうですね。さらに言っちゃえば、、私自身に「これがやりたい」という確固たるものはそんなにないんですけど、自分がやるべきことを考えて周りをみたときに、地域でほかにやる人がいない役割があって、その「隙間」に対して、自分を対応させていくみたいなことがあって。

【加藤】仕事を作るってそういうことかも知れないね。

【渡邊】そうです。

【加藤】隙間に役割を見つけるというか。

【渡邊】そうなんですよ。空いてる部分、誰も担ってない部分を自分が担えるんじゃないかとか、役に立てるんじゃないか、そういう思いはありますね。

【加藤】そういう意味で言うと、学生の頃に言われてたのが、「コースケは客先に出ると全然駄目だな、早く営業できるようになれ」ということで、実際そうで。

【渡邊】そうですか?

【加藤】今でも緊張しいだから、人前で喋るのとか苦手なんだけど、今は実は僕は営業すごい得意だという言い方をしているのね。何が変わったかのかというと、学生の時っていうのはボスのデザイン会社のアシスタントだったので、ボスのお客さんの対応を僕がしていた。その時って、本当にうまく機能してなかったなって振り返って思うんだけど、独立して腹が決まったのは、1つ1つが自分のお客さんってなった時に大分変わって。1つは預けられるものの重さが変わったというのと、もう1つはこっちが踏み込んでいく深さが変わったという感じがしていて、独立するとその辺の感覚って、さっき言ってた組織の中の1プロジェクトと違う何か、みたいなことかも知れないよね。

【渡邊】それで行くと、多分私は営業的な側面が大きいと思うんですよね。不動産の営業していることもそうですし、会社の個々人の職能を売って歩くみたいな。それでチームを組んで、一つのプロジェクトにしているというのが、私の役割であって。

【加藤】悪く言うと胴元みたいな。

【渡邊】そうそうそう。イトナブの古山隆幸さんとかもそうだと思うのですよね。チーム・ビルディングっていうか。最初、会社建てた時はデザイナーと建築家とそれを営業している自分、それをチームとしてプロジェクトにしているのが私の役割です。よく人見てて思うのが、こんなにやりたいことがあるのって羨ましいなと。デザイナーだったり写真家だったり建築家だったり、好きなことにすごく打ち込んで集中力があってやってる人を見ていて、面白いと思うし、素晴らしいと思うし、私自身はそんなにやりたいことないなと思った時に、じゃあこういう人達が仕事をしていくために関係性を円滑にしていくのが自分の仕事だと思っていて、だからこそ20代にしては予算規模が大きい仕事とかにも関わらせていただける機会に恵まれているというのもありますし、大きいプロジェクトを組む時にパートナーとして声かけていただけたりするんだと思うんですよね。社会的インパクトのあるプロジェクトにチームを組んで自分が営業するから関わることができて来ていて。

【加藤】触媒、みたいな。

【渡邊】そうですね。触媒大事かなと思っています。

【加藤】でもやりたいことないって言ってたけど、根本的にすごい強いなあと思ったのは、石巻にいたいってことなんじゃないの。

【渡邊】ああどうなんですかね。石巻にいたいというか、どうなんだろう。

【加藤】永住、イエス・オア・ノー、みたいな話ではないよね。

【渡邊】永住しても良いのですけど、石巻をこうしたいとかはあんまりないんですよ。でもここには強烈に求められてる気がする、みたいな。役割がある気がする、みたいな。そういう隙間を与えてくれる街で。だから石巻をこうしたいみたいな気持ちはあんまりないんですけど、この人達1人じゃ難しくてもチームを組めば食べていけるのにと思わせる人がいたりとか、この人うちが作った場所を楽しそうに使ってくれて嬉しいとか、そういう自分が仕事をしたことに対して、喜びを与えてくれる人達がすごいいっぱい集まってる街で、それを思うと、まだ私ができることがあるのかな、求めてくれる人もいるし、すごい街に私の居場所がある気がする、やらせてくれる可能性がある気がする、それ勘違いなのかも知れないんですけど、勘違いさせてくれる街なんですよね。

【加藤】ああ良いね。酒みたいなもんだね。

【渡邊】そうそう、そうなんですよ。そこが多分、魅力なんでしょうね。学生時代に尾道とか大阪とか行ったんですけど、すごい素晴らしいし魅力的なんですけど、じゃあここで自分がやれることがあるかって言うと、あんまりそんな気がしなかったんですよね。あなたにやって欲しいという場所が持つメッセージみたいなのに、私の居場所もないし求められる感じもしなかったんですよね。震災後の石巻って、本当に学生時代何もできなかったんですけど、何もできない私がすごく何かできる隙間があるように感じて、未だにその時の衝動でここにいるんだと思うんですよね。

【加藤】なるほどね。

【渡邊】だから5年が節目で。もう私の役割は終わりかなと思った時もあったんですけど、それでもまだ頑張った方が良いんじゃないかと思わせてくれる人たちがいて、諦めようと思った時もあったんですけど、5年が節目で、でもまだやれることがあったというか。巻組で働きたいと言ってくる人もいます。そういうのもモチベーションだし、働きたいって言ってくれる人がいるというのも、自分が求められている気がするんですよね。だから居場所を求めて来てくれる人とか、やっぱりいたりして。

【加藤】居場所を感じてる、みたいなことだよね。

【渡邊】そうそう。私に対して、巻組に対して、居場所を感じてくれるということが、逆に私に居場所を与えてくれる。

【加藤】そういうものかも知れないね。確かにそうだなあ。

【渡邊】求められることとか、隙間が空いてることというのが、いわゆる社会課題だと思うのですけど、そこに対してひたすら働きかけるというが、社会課題に対するリサーチ、ということだと思うんですよね。

幸せそうな人を生む循環

【加藤】最後って言うと変なんだけど、今までずっと石巻が抱えている課題というものがあります、そこに巻組がアプローチします、という思想の話をしてくれたと思うのだけど、何か1つ今後に対する具体的な問題解決の話をしたくて、今日話を聞いていた限りだと、移住って話なのかなという気がしていて。僕が石巻に住んでない人ということも含めて。その辺の話を聞かせてくれないかなと思って。

【渡邊】最近、ようやく自分のやりたいことというか、巻組の向かっていく方向性というのが、一個の円になっていく感じがしているんですけど、私は人が好きだし、人に寄り添うこととか。ただ、役割的には不動産で。田舎の不動産を動かす意味って言うのを、最近ようやくわかって来たんですけど、田舎の不動産って持ち家だし世襲というのが特に古い市街地だと一般的なんですよね。

【加藤】縛りが多い。

【渡邊】そうですし、親世代の職業を次ぐ人が多いですし、それほど多様なキャリアイメージがない。次の担い手がいないと終わりというのは、本当は不動産と人との深い絡みというのがあります。やはり過疎地って賃貸物件殆どないんですね。世襲で土地も家も受け継がれて来て、その職業を家族経営でずっとこなしていくというのは、社会が変わっていく中で、そのシステム自体が限界を迎えてると思うんですよね。そこを改変できないと、街って消滅せざるを得ないと思うんです。不動産市場自体が土着で癒着で風通しが悪い。不動産市場自体がない地域も石巻に結構あったり、不動産屋さんがいたとしても初期コストが高いので、若い人たちがなかなかチャレンジできない。それが一般的で、そこのシステム自体を変えていって、持ち家を賃貸化したりシェア化して、流動性の高い街にしていくのが大事で、それと同時に、不動産が使われるためには、付加価値を生み出せる人が入らないと不動産って回っていかないんですよね。良い人が入って、購買力が上がって、魅力的に見えると、街も動いていくし、不動産も動いていくし、需要も増えていくと思うんです。まず動いてなかった不動産を動かし、そこに魅力的な人を呼び、その人を育成し育て、付加価値の高いビジネスを生み出すと、また人が来て、人を呼び、不動産が回ってという良い循環ができると思うんです。そのサイクルをいかに回していけるかだと思っていて、そういう時に、そんな稼げなくてもすごい幸せそうな人達石巻には一杯いるんです。自分のポリシーにそったことを生業としてビジネスをやっていて、何とか食えてて、でもすごい幸せ、みたいな。そういう幸せそうで楽しそうな人を見ているとどんどんどんどん人が集まってくると思うんですよね。そういう人達の幸せさを貨幣価値にうまく換算していってあげて、幸せそうで付加価値性が高い人が増えていくと街が楽しそうになる。そうすると不動産需要が増えて、そこでスターが生まれると、そのスターに惹きつけられて、幸せそうな人が増えてみたいな。どんどんどんどん目標に向かっている幸せそうな個人が増えていくことによって不動産が循環していく。それで人口増じゃなくても、凍結していた社会システムが動き出す、不動産自体が回って行って、地方が良くなるというか、流動性が高い社会になると良いなと。

【加藤】新陳代謝だ。

【渡邊】そうそう。シェア型の社会っていうのをもっと地方で実現できないかなと思ってて、そういうサイクルが中央では回り始めていると思うんですけど、もっと北上とか漁村の方とかでも回していけるように、色々な人と組んで人材育成しながらやっていきたいなというのがすごく目標で、だからその一連のサイクルにある仕事は何でもやるというのが巻組なのかなと。

【加藤】ああ、そうなんだね。

【渡邊】だからその中にクリエイティブもあるし、広報発信もあるし、人材育成もある、それは一見バラバラに見えるんですけど、魅力的な人が増えて、不動産が使われて、また魅力的な人が増える、そのサイクルに乗ってることなんだなあ、という風に思って、そのサイクルを回すことが私のやりたいことで、そこに付随することはなんでもやりたいなと今は思ってますね。

【加藤】そうか、わかった。移住って言葉に対する勘違いが一つあったなと思うのは、多分、僕とかが移住って聞いた時に最初に思うのは、蛇口の元栓どうやって開けるのかみたいな話だと思うんだよね。どうやって人を動かすかという。だけど、多分それだけじゃ当然駄目で、誰かが多分蛇口の元栓開けるところはやるんだろうけど、そこからどういう風に循環を作って、ある種丁寧にフォローしていって、人が不動産の価値で幸せを高めていく循環に持っていけるか、みたいなことが巻組の役割なのかもね。

【渡邊】きっと蛇口の元栓をひねる人がいない地域だったら蛇口の元栓ひねらないといけないんですけど、色々役割を見ていくと、石巻、蛇口の元栓ひねれる人は結構いるんじゃないかと思うんですよね。ISHINOMAKI 2.0もそうだし、イトナブもそうだし、FISHERMAN JAPANとかもそうだし、人を惹きつけるメッセージ性のある人達っていっぱいいると思うんですけど、私はその下でいかに水が濁らないように回していくか、かき混ぜる湯あみ的な仕事なんですかね。

【加藤】そうすると役割分担として面白いなと思うのは、さっき言ってた隙間というか、パワープレイできる人はいるけれど、そこから人の暮らしレベルまで落としていくところの繋ぎを誰かがやらなきゃいけない。

【渡邊】そうですね。だから受け皿づくりだと思うんですよね。まあ、地味なんですけど、案外そこを粛々とやれる人っていなかったりして、一番人と接しないといけないし、深く関わらないといけないし、勿論嫌われることもあるんですけど、でもそこの循環を信じて、循環を生み出すのが私の役割だと思えば、好かれる時もあれば嫌われる時もあるけど、そこを丁寧に関わり続けられるなって思います。

【加藤】なるほど。すごい現場主義だし、現場見てるし、現場の人とやるんだけど、割とその後ろに大きな循環をイメージしながらやれてるから、やれるんだろうね。

【渡邊】逆になんか役割がない方が圧倒的に辛いというか。

【加藤】そうだよね。仕事がない、って言う。

【渡邊】でも循環が大事だって皆気づき始めてるからこそ、組んでくれたりとか、一緒にやろうと言ってくれる人がいて。ドMって言われるんですけど。

【加藤】ああ、わかるわかる。まあでもそうやって、5年間である意味石巻に鍛えられて来た人だから、今度は組織を作る時にそこで鍛えられる人もいるんだろうし。

【渡邊】でもやっと楽しいな思えるようになって来ました。フリーランスでやってるよりは、会社の方が好きなのかも知れないです。

【加藤】それ色々な人に言われて、俺が大体いつも悔しいw。

【渡邊】ははは。最初は矢面に立って、皆が好きなコトしてる中で私が頭下げて、みたいに思ってたんですけど、自分無能って言うか特技とかないんで、色々そういう特技を持ってる人達が集中できる環境を作ることによって、プロジェクトが回っていくっていうのが好きなんでしょうね。

【加藤】器だ。

【渡邊】器です。

【加藤】でも僕が手伝ってるいくつかのプロジェクトにも必ず「器」って役の人がいて、そういう人が大体リーダーをやっていて、色々な専門家が関わっても、それを許容するものっていうのは、ある種、バカになれないといけないとか、常に隙間を残しておかないといけないとか、そういう役割がある気がするから。

【渡邊】そうなんですよね。

【加藤】多分今までは、石巻にある仕事の隙間の話が多かったと思うのだけれど、今度は一緒に動く人たちがある種、渡邊享子目掛けて仕事しようともするわけじゃん。そこに渡邊享子が隙間を作って、自分についてくる人が、そこに自分の役割とか居場所を見つけられるようにしていかないと、というのがもしかしたら組織を作っていくってことかも知れないね。

【渡邊】隙間を見つけるって言うのが社会起業家の役割だと思っていて、最近社会的ってなんだとか、ソーシャルってなんだとか考えるんですけど、、競合して打ち勝っていくというのが普通の営利なんですけど、足りないところを補ってうまく回していくみたいなのがソーシャルだと思えて、やってることはものすごい営利企業なんですけど、それでもソーシャルな人が目を向けてくれるのは、私がひたすら隙間のことをやっていると思ってくれてるからじゃないかと思うんですよね。

【加藤】役割を果たしているということだよね。

【渡邊】競合しない部分を埋めていくという。

【加藤】でも誰とも戦わないで好きなことやれるんなら最高だよね。あとは自分との戦いだけだね。

【渡邊】そうですね。

【加藤】まあでもドMだから大丈夫か。

【渡邊】あはは、そうですね。

【加藤】よくできてる。

【渡邊】よくできてますよ、ほんと。

【加藤】今日の話を聞いていたら、5年経ったからどうか、というより、5年経ったからスタートを切った、という感じがしたので、これからますます楽しみです、くらいで今日のところはインタビュー終わりで。ありがとうございました。

【渡邊】ありがとうございました。これからも宜しくお願いします。

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